純子と初キス ❤️
その日、ぼくは純子と一緒に帰った。勇気がいったけど、そっと彼女の手をつないだ。彼女は嫌がらずに手をつなぎかえしてきた。LINEの交換をしてしまった。家に帰ると、純子からも紗栄子からもLINEが来ていて複雑な気持ちになった。なったのだけど、二人に交互にレスしてしまう。たわいもない話をする。
翌日、朝からの授業が落ち着かない。ぼくは朝はかなり早く来るのだ。純子は普通始業ベルの十分前くらいにならないと来ないのだ。まだ、朝、一緒に登校する勇気は出ない。仕方なく教科書を見ていた。
「オハヨ。元気ぃ~?」と急に純子が後ろからあらわれて肩を叩いた。あれ?こんなに早く?どうしたんだ?教室には純子とぼくしかいない。
「ええ?早いじゃないか?・・・純子、おはよう。昨日はLINEありがとう」
「・・・アキラの来る時間に合わせただけよ。たまたま、朝早く起きたんで、朝の早いアキラに会いたくて・・・なんて・・・彼氏とLINEができるっていいよねえ。夜の楽しみが増えたわ」
「でもさあ、LINEでも際どい話、多いよね?」
「私は散文的な女の子だもん。ロマンチックな話って苦手だから・・・」
「うん、まあ、ぼくは純子に慣れるようにするよ」
「がんばってね。それはそうと、お昼ごはん、もう屋上に行く必要はないでしょ?ここで食べて、食べた後、屋上に行けばいいじゃん?」
「え~、恥ずかしいなあ」
「付き合ってるんだもん。堂々としましょ」
登校する生徒が増えてきた。教室のそこここで、女子生徒と男子生徒のグループがぼくらを見てヒソヒソ話している。うぁ~、恥ずかしい。
昼休みになった。純子がゴトゴト言わせて机をくっつけてくる。
「純子、大胆だね」
「気後れすることはない!堂々と付き合うのよ!」とぼくの弁当箱を覗き込む。「今日、おかず、多くない?」
「だって、純子が食べちゃうから、多めに作ってきたんだよ」
「お!優しいのね?私の良い夫になれるぞ!だし巻き卵、ちょうだいね!」
「純子、声が大きい!」
前の方の席の良子や春海がエルフの耳のようにぼくらの会話を聞いているのがわかる。
食べ終わって、屋上に行った。ベンチに座る。純子がピタッとぼくに寄り添ってくる。太ももがくっついてる!昨日の紗栄子といい、ぼくの人生がガラッと変わったみたいだ。
「純子の家って神社って誰かに聞いたことがあるけど・・・」
「うん、氷川神社。千寿青葉中学校の近くの神社だよ」
「氷川神社って、北千住にたくさんあるから、どれかな?と思ったんだ」
「だいたい、親戚なんだよね。神職って、宮司さんね、なり手がいないんで、どうしても親戚同士で跡継ぎ決めたりしてるんだ」
「純子は妹いるんでしょ?」
「そう、この高校じゃないけど、高一の妹がいる」
「兄弟がいないんじゃあ、純子の神社は誰が継ぐの?」
「え?アキラ、私の入婿になってくれて、家の神社を継いでくれるの?」
「えええ?」
「冗談よ。パパは・・・」
「パパって、宮司さんのこと?パパって呼ぶの?」
「え?パパでいいじゃない?お父さんとかお父様じゃなくて、私と妹はパパって呼んでいるけど?」
「ふ~ん、面白いね」
「意外かな。それでね、パパは、ここは誰か神職資格を持った人に譲るから、気にしなくていい、って言ってくれているの」
「神職資格?」
「そう、神職になるには、國學院大學とか皇學館大学の神職資格課程がある大学を卒業するか、神職養成所や神職養成通信教育の課程を修了する必要があるのよ。それで、神社本庁から認定してもらう。職階があって、宮司、禰宜(ねぎ)、権(ごん)禰宜という順番」
「へぇ~、資格がいるんだ」
「そうなの。女性の神職もいるにはいる。全国で、神職はニ万ニ千人くらいいるの。その内、女性は約三千人ぐらい。まだまだ神職って、男性の職場なのね」
「男性だけじゃないんだ?」
「だんだん女性も増えてきたのよ。私もちょびっとは考えたけど、國學院大學とか皇學館大学なんてダサそうじゃない?女の子に飢えた男子学生ばっかりいそうでさ。それに、私や妹が神職なんて、氏子さんたちが反対するでしょうね」
「ふ~ん、でも、巫女さんはするんでしょ?」
「するわよ。大晦日とか新年とか、七五三、例祭、お祭りね、こういう時は忙しいのよ。家のお手伝い。今度、巫女さんの格好したげようか?コスプレよ」
「なんか、カッコイイような・・・」
「装束は、緋袴の赤。それ以外は、襦袢、白衣、足袋、腰紐は白。アキラの見たがる下着も白よ。ブラ、キャミ、タンクトップ、みんな白なの。清浄な色というわけ」
「アキラの見たがるって・・・まあ、見たいけど・・・で、巫女さんってさ、処女じゃないとダメなの?」
「そんなことはないのよ。忙しい時は、近所の奥さんにお願いしたり、女子大生や高校生のアルバイトを雇ったりするけど、奥さんはもちろん、アルバイトの面接の時に『あなた、処女ですか?』なんて聞かないわよ。あ!私が処女あげる、あげる、って言うので、私の処女、気にしてくれたの?大丈夫よ。処女をアキラにあげちゃっても、巫女の仕事はできるもん」と言うと、純子は急に顔を近づけてきた。
目を閉じて顎をちょっと上げて、心持ち唇を尖らす。これって、キスして欲しいってこと?まさか、紗栄子が教えてくれたみたいなディープなキスじゃないよね?チョンチョンかな?とぼくはなけなしの勇気を振り絞って、彼女の唇に唇を合わせた。チュッと。
純子はパチっと目を開けると赤くなって「エヘヘェ、生まれてはじめてのキス、あげちゃった。また、一歩前進かな?どう?」と下を向いてスカートをイジってモジモジした。
「いや、あの・・・純子の初キスをもらっちゃいました。恥ずかしい」
「いやぁ、だんだん、付き合ってるって実感が湧いてきた。うれしい!」
「純子、え~っと、好きです」
「私も」と言って抱きつかれた。
純子の小ぶりな胸があたってドキドキした。彼女の背中に腕を回す。女の子って熱くてなんて柔らかいんだろうか?誰かに見られてないかな?と回りを見回した。誰もいない。
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