第46話 バイオリンの完成

できた。

とうとう私のバイオリンができた。私はまるで翼を得たような気分よ。

嬉しくて嬉しくて、昨晩はバイオリンを抱いて寝たわ。


試しに弾いてみたけど、いい音だったわ。年季の入った味のある音ではなく、まだまだ若々しい音かもしれないけど、これは誰が何と言おうと、私が求めていたバイオリンよ。ああ、愛しのバイオリンがとうとう私の手に!


嬉しくて嬉しくて私は弾いたわ。何度も弾きまくったわ。家でも部屋でも村でも馬車の中でも街角でも。

この日を夢見てこの6年もの間、体幹トレーニングや、ストレッチ、バイオリン演奏に使う腕だけでなく背筋やその他の筋肉も欠かさず鍛えてきたわ。もう腱鞘炎になんて、なってやらないんだから!

もちろん、演奏後のケアは怠らないけどね。


ヴァルデックの街角で弾いてたら、聴衆がすごい集まってきちゃって、パパとスチュワートに叱られたわ。その時から、街角で弾くのは禁止になったわ。だから普段はもっぱら屋敷内でメイドや家族相手に弾いたり、ヴァルデックの街中でちょっと高級なレストランで弾いたりしたわ。

夜の酒場でも弾こうとしたんだけど、執事長にゆっくりと首を左右に振られて、「それはダメですよ」と、止められたのが少し残念だったわね。


あとは最近は村で弾くことも多いかしら。村では子供たちがよく聞いてくれるし、大人たちも聞いてくれる。旅の商人もよく訪れてくれるので、そこでも弾いているわ。


でも村長に、「みんなの手が止まるから、農繁期はほどほどにしてくれ」ってこの前注意されちゃったわ。てへ。


「でも私はバイオリンを弾きたいの。一人でも多くの人に聞いてもらいたい。」


「お嬢様。それは十分に分かりましたけど、加減ってものを知らないんですか?」


「カティ、あなたも伴奏で加わって良いのよ?」


「はぁ?」(このお嬢様、私の話をちっとも聞いていない)


なんだろう。カティに大きなため息をつかれちゃったわ。



このリーザの想い(とやらかし)は、未知の楽器と未知のメロディーという驚きによって大きなうねりとなり、大陸全土を揺るがすことになる。


それはバイオリンが完成して一カ月もしないうちに、


――ヴァルデックに聞いたことのない優雅な音色を、見たこともない楽器で奏でる音楽家がいる


という噂が流れ始めると、その噂は瞬く間に膨れ上がり、大陸を駆け抜けた。

そしてそれは王都パリスも例外ではなかった。


パリスの王宮にまで届いたその噂を聞いた、珍しもの好きな国王夫妻は、早速それを耳にしたいと思い、その音楽家を召喚しようと勅命を下そうとしたのだった。

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