PCU-01-08 達希の選択

 帰宅後、成瀬の言葉を繰り返しながら部屋の中を歩き回った。


 頭の中では、成瀬の「時には人は、欲張ってもいいんじゃないのかな」という言葉がぐるぐると回り続けていた。


 ――欲張ってもいい? もし俺が玲と晴翔、二人を選んでもいいなら……システムに問題ないのか?


 達希はスマホを手に取り、深呼吸をしてからアプリを開いた。


 スクリーンには、システムのロゴと共に、最初に表示される「マッチング状況」と「期限までの日数」が並んでいる。


 画面をスクロールし、「サポートセンター」にアクセスした。個別の問い合わせページが表示され、何を聞けばいいのか迷ったが、すぐに考えがまとまった。


「一度に複数の相手を選ぶことは可能ですか? システムはそれを認めますか?」


 迷いながらも質問を打ち込んだ。達希の目は真剣そのもので、これからの未来を決めるかもしれない一歩だった。


「送信」と書かれたボタンをタップし、確認画面で「はい」を押す。送信した瞬間、少しだけ安堵の息を吐いた。


 数分後、通知が届いた。確認すると、システムからの返信だった。


『お客様、こんにちは。ご質問ありがとうございます。現在のシステムでは、一度に複数の候補者とマッチングすることは認められておりません。ご自身の選択肢を一人に絞っていただく必要があります。ただし、緊急の場合、特例を考慮することも可能です。詳しくはサポートチームにお問合せください』


 達希は画面を見つめていた。システムの返答に、少しの違和感が残った。


「……緊急の場合、特例?」達希はつぶやいた。


 その時、再び通知が届いた。今度は、別のサポートメッセージだった。


『ご連絡ありがとうございます。特殊な状況の場合、追加のサポートが可能です。もしご希望の場合、詳細をお聞かせください』


 達希の心は急にざわついた。特例――それは、システムの規定を覆す可能性がある。自分が求めている「二人を選ぶ」という選択肢が、もしかしたら現実になるかもしれない。


 彼は、思い切って返信を打ち込んだ。


「自分の選択を尊重してもらいたい。私は、三沢玲と結城晴翔の2名を選びたいと思っています。この選択がシステムで認められるか、特例を適用できるか、確認したいです」


 達希は送信ボタンを押した後、深く息を吸い込み、手を膝に置いてしばらく考えた。


 自分がこのまま、運命に身を任せるのではなく、うとしている。システムに挑戦するような感覚が、少しだけ背中を押していた。


 数分後、再度通知が届く。それには、あまりにも簡潔な返答があった。


『確認いたしました。選択肢を一人に絞ることが基本ですが、貴方の状況を特別に扱い、個別に対応させていただきます。具体的な手続きについては、後日お知らせいたします』


 達希は通知を見て、心臓がドキリとするのを感じた。特例――それが現実になった。これで、玲と晴翔、二人を選ぶ道が開かれた。


「……やった」


 達希は小さくガッツポーズをして、微笑んだ。


 でも、この先、どうなるのかはまだ分からない。システムがどこまで自分を許容するのか。それを知るためには、もっと進んで行くしかない。


 それに――玲と晴翔にも伝えなければならない。自分の決断を。


 だからこの選択が間違っていないと、信じて歩んでいくと達希は改めて心に決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る