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青井は休学した。
あれから青井が借りている部屋にも行ってみたが、チャイムを鳴らしても誰かが出てきた試しはない。
あのしつこい女がいなくなってから、時折、青井の指先よりも冷たい風が首筋を撫でていくような、言いようのない感覚を覚えることがあった。
いなくなってみると不思議なもので、ただ僕の前には出てこないだけでどこかに居るのではないかと、目で探す時も増えた。
昔、胸の中に抱えていた空虚に似た感情を覚えていた。
けれど、時は流れる。
秋が過ぎ、冬を越え、春が終わり、そして夏を迎える。
季節が巡る内に、覚えた感情は忘れ、鈍る。
その後は気になっていたが、積極的に調べることもなく。
僕はすっかり入学当初に思い描いていた孤高のキャンパスライフを確立していた。
青井というイレギュラーがなければ、最初から送っていたであろう、可能な限り他者の介在を排除し独立した生活。
他者に振り回されない、心揺れることの少ない静謐な世界を生きる。
ずっと望んでいたそれは――。
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