第44話:突然の襲撃者
奉納武術大会は、地方大会とはいえ、それなりの盛り上がりを見せていた。カイは持ち前の奔放な剣技で勝ち進み、ゴルドーもパワーで相手を圧倒(やや危なっかしい場面もあったが)し、順当に駒を進めている。
「カイの奴、少しはマシになったな」
俺は、カイの試合運びを見ながら、小さく呟いた。以前のような無駄な動きが減り、相手の動きを読む冷静さが出てきている。
「ええ。アステラルダ様との稽古の成果でしょう。……少し、生意気ですが」
エリアが、少し不満そうに付け加える。
「ふん、まだまだね。アステラルダの足元にも及ばないわ」
シルフィも、なぜか対抗するように言う。
俺たちがそんな会話(?)をしていると、ゴルドーが試合を終えて戻ってきた。
「ぜぇ……ぜぇ……勝ったぜ、姐さん!」
息を切らしながらも、得意げな表情だ。
「はいはい、お疲れ様」
ルルナが、すかさずゴルドーの汗を拭き(データ収集のため?)、脈拍を測り始める。
「うむ、よくやったな、ゴルドー殿」
ゼノンが労いの言葉をかける。
その時だった。
観客の喧騒に紛れて、鋭い殺気が俺たちに向けられたのを、俺は感じ取った。ジン爺さんも同時に気づいたようだ、彼の表情が険しくなる。
「! 皆、伏せろ!」
俺が叫ぶのとほぼ同時に、ヒュオッ! という音と共に、何かが高速で飛来してきた!
それは、長い鎖の先に、棘の付いた鉄球が繋がれたような、禍々しい武器だった。鉄球は、俺たちがいた場所の地面を抉り、周囲の観客から悲鳴が上がる。
「な、なんだ!?」
「敵襲か!?」
大会会場は、一瞬にしてパニックに陥った。
襲撃者は、観客席の屋根の上に立っていた。
日に焼けた肌に、無精髭を生やし、使い古された革鎧を身に着けた、見るからに荒くれ者といった風体の男。その目つきは鋭く、獲物を狙う獣のようだ。手には、先程の鎖付き鉄球――モーニングスターのような武器を、巧みに操っている。
「見つけたぜ……『銀髪の戦鬼』アステラルダ……!」
男は、俺を指差し、獰猛な笑みを浮かべた。
「俺はジャッカル!
(賞金稼ぎ……? 俺の首に?)
聞き捨てならない言葉だ。拳聖祭で目立ったせいで、厄介な連中に目をつけられたということか。誰が依頼した? 影の教団か、それとも……。
「姐さんに指図するとは、いい度胸じゃねえか!」
ゴルドーが斧を構える。
「アステラルダ様には、指一本触れさせませんわ!」
エリアとシルフィが、左右からジャッカルを牽制するように動き出す。
「アステラルダ様! 我が盾の後ろへ!」
ゼノンが俺の前に立つ。
「アステラルダ、援護するぜ!」
カイも、試合の疲れも見せず、刀を抜く。
「精霊たち、あの人を捕まえて!」
ルルナも戦闘態勢に入る。
「ほぅ? なかなか良い仲間を持っているようだが……」
ジャッカルは、俺の仲間たちの動きを見て、面白そうに口笛を吹いた。
「しかし、俺の『
彼は、鎖付き鉄球を高速で回転させ、再び襲いかかってきた!
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