第31話
俺は白き叡智なる手で弾かれるように2階に飛んだ。
そして2階にいる邪神教の息の根を止めていく。
「ぐあああああ!」
「ぎゃああああああ!」
「やめ、うあああああ!」
作戦とまでも言えない案だった。
3倍の兵力差と魔獣2体。
普通に戦えば上から矢と魔法を撃たれその隙に横と前から剣を持った敵に切り刻まれる。
兵士が死ぬのは確実だった。
そこで俺とマインで上にいる敵を早く倒す。
俺は攻撃力が足りない、でも雑魚ならすぐに倒せる。
マインのファイアボールマシンガン、これなら上にいる敵を各個撃破出来る。
もちろんその間パーティーだけで魔獣2体を抑えて貰う必要があった。
完璧な案ではない。
それでも今は全力で上にいる敵を倒す!
マインが逆サイドの2階に杖を向けた。
「ファイアボールマシンガン」
炎の玉を連続で撃ちだして邪神教を倒していく。
兵士は2階から魔法と矢を受けつつ1階にいる邪神教と戦う。
味方の兵士が悲鳴を上げた。
早く、早く倒す!
味方が死ぬ前に!
部屋中に剣戟が鳴り響き悲鳴と叫び声がぶつかり合う。
2階にいた邪神教が倒れて1階に落ちていった。
ラムザが牛の魔獣と打ち合う。
牛の魔獣が拳を突き出した。
「ふん!」
「はあああああ!」
拳と剣がぶつかり合いラムザが弾かれた。
だが弾かれながらもラムザが魔法弾を放つ。
「ぐうう! うおおおおおおおお!」
牛の魔獣が魔法弾を避けるのを諦めラムザに向かって走る。
突き出された拳を左手のガントレットでいなしつつ剣で斬りつける。
「更に強くなったか、ラムザああああああ!」
「まだまだ、僕はもっと強くなる!」
ラムザと牛の魔獣が激しく、お互いを削り合うように戦う。
馬の魔獣がノワールに蹴りを打ち込む。
それに合わせて蹴りを入れると押し負けてノワールが吹き飛ばされた。
「ノワール!」
「だ、大丈夫ですわ!」
「はあああ!」
プリムラが馬の魔獣の横からナイフを振りかぶった。
それに裏拳を食らわせようとするとプリムラが後ろにステップを踏んで裏拳を回避した。
「お嬢様、今です!」
エリスが牛の魔獣に重力の魔法弾を撃ちこむ。
その隙にプリムラとノワールが牛の魔獣の横に位置取りをする。
「その程度か、負ける気がしない! 勝って3人とも女にしてやる!」
まだパーティーのみんなは大丈夫だ。
でも急がなければ兵士がやられる。
俺は2階にいる邪神教に白き叡智なる手を何度も打ち据えた。
2階にいる敵はすべて倒した。
1階に飛び降りて邪神教を倒していく。
1階にいる邪神教を大方倒したその時、ラムザが壁に叩きつけられた。
「がはああ!」
「そのまま殴り潰す! うおおおおおおお!」
牛の魔獣がラムザに迫って拳を振り上げた。
「きゅきゅう! (させるか! おらあああああああ!)」
白き叡智なる手で牛の魔獣を拘束する。
その白き叡智なる手がゴムのように伸びる。
「きゅきゅう! (伸縮しろおお!)」
牛の魔獣の拳がラムザに届く瞬間にゴムのように伸縮して後ろに下がっていく。
「きゅきゅう! (どりゃああああ!)」
牛の魔獣を馬の魔獣に投げつけた。
「ぐぬおおおおおお!」
「ごっふぉおおおおおお!」
今回は倒せる限り俺が倒す。
牛の魔獣がラムザとの戦いで弱っている!
俺は牛の魔獣を睨みつけた。
「きゅきゅう! (おらおらおらおらおらおらああああああ!)」
白き叡智なる手を何度も何度も牛の魔獣に突き食らわせた。
「ぐああああああああああ!」
牛の魔獣が倒れて邪悪な思念を放つ。
みんながその思念を受けて悲鳴を上げる。
俺は思念を読み取った。
白き叡智なる手が太く、たくましくパワーアップした。
「よくやった牛! 皆が戦えない今の内に俺がすべてを倒してやる」
「きゅきゅう! (させるかごらああああああ! パワーアップした俺が倒してやんよお!)」
【ルナ視点】
あれは、少し前の事だった。
邪神様が私に言った。
「もう一回だけ黒き月の逆時計を使って欲しい」
「で、ですがもう、魔力が残っていません」
「大丈夫、お口を開けて、少しだけピリピリするけどちょっとだけ我慢してね。これが終われば救われるから」
「は、はひ、おっごおおおおおおおおぼおお」
口を開けると邪神様の触手が口に入って来る。
そして闇の魔力を流し込まれた。
「おっぐちゅ、こぼお、おええええええ!」
触手が抜けると私は地面に座って嘔吐した。
でも、魔力は回復していく。
「少しだけ苦しいと思うけど我慢してね。これで終わりだから」
「うう! はあ、はあ、はい、邪神様、私をお救い、ください」
「うん、約束するよ」
今こそ使う時。
椅子から立ち上がった。
「皆さん、邪神様の力によって生き返るのです。『黒き月の逆時計』」
戦闘をしている空間がドーム状に覆われた。
そして空が暗く染まり、銀色の満月が現れる。
満月に時計の針と数字が表れて秒針が高速で何度も逆回転していく。
時間が巻き戻り牛の魔獣が復活し、戦う前の状態に戻った。
私はダラダラと汗を掻いた。
もう、黒き月の逆時計は使えない。
この後有利に戦いを進める。
その後に邪神様が来てくださる。
「牛! 兵士を先に殺す!」
「おう!」
2体の魔獣が走りだそうとした瞬間、
その瞬間、
嫌な予感が、しました。
私の目は聖獣に釘付けになった。
何かを仕掛けてくるのが分かった!
聖獣の魔力が膨れ上がった。
「きゅきゅう! (邪神! 逃げるな! 分身!)」
私は淫紋を頂いた事で聖獣の声が分かる。
そ、そんな!
邪神様が私を救ってくれる!
逃げるはずが無い!
3体の聖獣はさっき分身を使わなかった。
私が黒き月の逆時計を使う、その事を予想していた!
読まれていた!
奇襲するはずの邪神様が、そのお心がバレて聖獣に飲み込まれようとしている!
あの小さな聖獣が今はあんなにも大きく見える。
馬の魔人が叫んだ。
「皆で邪神様を守るのだ! 身代わりになって死ねば魂は永遠の快楽に導かれる!」
牛の魔人が叫んだ。
「先にはいかせん!」
「きゅきゅう! (どけよ! もうお前の魔法はラーニングしてんだよ!)」
「ぐっふぉおおお!」
牛の魔獣が白い触手に拘束されてぐるんぐるんと振り回される。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
白い触手が前より太く、たくましくなっている!
聖獣の白い触手、その力が増している!
「させん!」
「きゅきゅう! (馬の魔獣もお呼びじゃないんだよお!)」
馬の魔獣が素早く残る2体の分身に立ちはだかった。
1体の聖獣が白い触手が素早い突きを繰り出す。
「ぬおおおおおおおお!!」
その攻撃を馬の魔獣がギリギリで躱す。
残った1体の聖獣が馬の魔獣を死角から拘束した。
そして牛の魔獣と同じように触手で振り回す。
「ぐひいいいいいいいいいいいん! 聖獣を、行かせるな!」
「邪神様だけは何と、してでも守るのだあ!」
「はあ、はあ、そ、そんな、邪神様は私を、私を救って、お、お救いに、なられます」
「きゅきゅう! (邪神は逃げている!)」
立ち尽くしたまま汗が止まらない。
2階にいた仲間たちが一斉に聖獣を狙う。
魔法と矢が聖獣めがけて雨のように降り注ぐ。
「きゅきゅう! (邪魔すんな!)」
2体の聖獣は振り回していた牛の魔獣と馬の魔獣を2階に投げつけた。
「ぐぶもおおおおおおおお!」
「ひひいいいいいいいいん!」
2体の魔獣が壁に叩きつけられて2階部分が崩れる。
2階にいた仲間が4人ほど落下ししていく。
そして聖獣は雨のように降り注ぐすべてを避け、触手で叩き落とした。
1つも、当たっていない!
あのすべてを全部!
「ひいいいい!」
私は思わず悲鳴を上げていた。
「きゅきゅう! (おい! 馬の魔獣! ルナだけ持って逃げようとするなよ! おりゃああ!)」
「ぐはあああああ! くそ! 引くぞ!」
馬の魔獣が私を置いて逃げようとする。
牛の魔獣も逃げていく。
「きゅきゅう! (牛の魔獣! 馬の魔獣! 何一緒に逃げてんだごらあああああああ!)」
「ひいいいいいいい!」
私は聖獣の声でガタガタと震えた。
「我ら邪神様から力を頂いた10幹部が何としてでも足止めする!」
「きゅきゅう! (邪魔だ死ね!)」
「「ぎゃあああああああああああああああああああ!」」
3体の触手が一斉に触手を振るう。
強い幹部たちを何度も攻撃し、まるでなぶり殺しにするように倒していった。
「きゅきゅう! (邪神教を皆殺しにしろ!)」
味方が、やられていく。
王都の兵士が2階に上がり上にいるみんなが倒されていく。
私は脚が震えて後ずさりしようとした。
脚が後ろの椅子にぶつかり座り込んだ。
邪神教のみんなが倒されていく。
もう、黒き月の逆時計は使えない。
どうすれば、何も、何も出来る事が無い!
みんなが死んでいくのをただ、見ているだけ?
無意識にナイフを手に持っていた。
そしてナイフに残った魔力を込める。
次は私が殺される。
鈍感になっていた私の意識が恐怖に染められていく。
もう、皆倒されて、私だけ。
牛の魔獣と打ち合っていた男が血を流したまま剣を持って近づいてくる。
「じゃ、邪神様が、お、お助け、助けに来てくれます」
「もう、来ないよ。逃げたんだ。君は利用されたんだ」
「あ、ああああああああ、邪神様! 邪神様! 邪神様ああ!」
私は椅子から倒れてナイフを落とし、四つん這いになりながら後ろに下がった。
「来ないで、来ないでえ、邪神様、何故私を助けに来て下さらないのですかああああ!」
目から涙が流れる。
私は恐怖で失禁していた。
剣を持った男が哀れんだ表情を浮かべて剣を両手に構えた。
「たすけ、たすけて、邪神様、助けに、来てよおおお!」
3体の聖獣が間に立った。
「きゅきゅう! (ラムザ、剣をしまえ。また1人で全部背負い込むな)」
その声は別人のように穏やかだった。
「ラムザ! 剣をしまってくださいと言っています」
「きゅきゅう (まだ、今ならルナを救える)」
「まだ今ならルナを救えると言っています」
信じられない言葉が聞こえた。
「う、嘘です、邪神教は捕まれば、犯されて、拷問を受けて、火あぶりに、されます」
「きゅきゅう(夢を見たんだ)」
「ゆ、夢? な、なにを、」
「きゅきゅう(少女が皆の為に尽くす夢、優しいその少女はたくさんの人を救った。でも、その少女の事は誰も救ってくれなかった。ルナ、君の事だ)」
「……」
「きゅきゅう(その後少女は罪を押し付けられて邪神に騙された)」
「……」
「きゅきゅう(今までの言葉は演技だ。君を守るための。俺はルナ、君を救いに来たんだ)」
私は涙を流して聖獣を見つめた。
私は、
誰でもいい、
誰でも良かった。
誰か、誰かに、
救って欲しかった。
気を失うその瞬間、聖獣が光り輝く満月のように見えた。
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