第104話 役割

 エリアさんは、私の銀髪と対比するようにキラキラと輝く金髪と、少し気の強そうな青い瞳を持つ美少女。


 背筋がピンと伸びていて、高貴さと凛とした雰囲気を兼ね備えている。


「グレオス……ということはもしかして……」

「はい。私はグレオス商会を営むグレオス家の次女ですわ」


 エリアさんは軽くカーテシーをした。


 まるで貴族の令嬢のような振る舞い。


 彼女の傍にはメイドさんが一人いる。グレオス商会は貴族ではないと思うけど、相当大きな商会だから、小さい頃から淑女教育を受けてるのかも。


 貴族生まれだったのに、そういう教育を受けてない私とは正反対だね。


「そうでしたか。色々良くしていただいてありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ。我が商会の依頼に何度も応えていただいたとか。今回の旅の護衛もよろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「それでは、護衛の皆様にご紹介いたしますので、ついてきていただけますか?」

「分かりました」


 握手を交わした後、エリアさんの後をついていく。その先には、いくつかの冒険者グループが集まっていた。


「エリアお嬢様、どうされましたか?」


 護衛の冒険者たちが談話しているところに近づくと、白銀の胸当てや各種プロテクターのような防具を身に着けた人がこちらを振り向く。


 すっごいイケメンだ。まるで物語の貴公子のようにキラキラと輝いている。圧倒的な主人公オーラを放っていた。


 眩しい。ほぼ病室で暮らしていた私には眩しすぎる。


「ヒイロ様、最後の一人をお連れしましたわ」

「もしかしてあなたがアイリスさんかな?」


 エリアさんの言葉を聞いたイケメンが話しかけてきた。


「はい、そうです」

「おおっ、やっぱりそうかい!! 色々と話は聞いているよ。とても腕が立つそうだね。シルドさんたちを救ったり、子どもたちを支援したりしてたとか。それに――」

「えっと……」


 怒涛の勢いで詰め寄られてタジタジになってしまう。


「あっ、ごめんごめん、自己紹介が遅れたね。俺はBランクパーティ『光輝の剣』のリーダーのヒイロっていうんだ。よろしくね」

「よろしくお願いします」


 ヒイロさんがバツが悪そうに頭をかいてから、自己紹介をして手を差し出した。


 手を取って握手を交わす。


 ヒイロさんに続き、光輝の剣のメンバーと他の冒険者たちも挨拶をしてくれた。今回は光輝の剣と三つのCランクパーティが護衛に参加するらしい。


 皆、私を好意的に受け入れてくれて驚く。


 子どもにも舐められる弱そうな見た目の私と、然程強くないブラックウルフに見える従魔、そして鳥のモンスターの雛。


 こんな弱そうな冒険者が護衛に入ると聞けば、誰か一人くらいは絡んでくる人がいるかと思ったけど、そんなことなかった。


「意外かい?」


 心を読むようにヒイロさんが私に尋ねる。


「えっと、そうですね」


 この街ではシルドさんと子どもたちを助けた以外、何もしていない。


 ダンジョンを攻略したわけでも、大きな事件を解決したわけでもない。それなのにこういう反応になるのは意外。


「普段ダンジョンに潜っている奴らから君たちのことを耳にたこができるほど聞かされたからね。ギルドでもCランクの依頼を一日にいくつも消化しているのを見たり、君たちだけで中層以降にいるのを目撃されたりしてるんだ。そんな相手に喧嘩を売るような冒険者はいないよ」

「そ、そうなんですね……」


 あんまり気にしていなかったけど、思ったよりもやらかしていたみたい。でも、そのおかげで名前が売れたのならよかったのかも。


「よし、全員揃ったところで今回の護衛について打ち合わせをしよう。護衛のリーダーは俺たち光輝の剣が務める。俺たちの指示に従うように。Cランクパーティはそれぞれ左右と後ろを守ってくれ。アイリスさんたちはお嬢様を専属で守るように。それから――」


 ヒイロさんが慣れたように話を進める。


 全員特に何も言わないところを見ると、Cランクの冒険者さんたちも何度もこの依頼を受けてるんだろうな。


 私という新しい護衛が入ったから改めて説明してるのかもね。


 私の護衛の役割は、エリアさんの護衛という名の話し相手。


 冒険者たちにも女性がいることはいるけど、パーティはまとまっていてこそ力を発揮するもの。だから離したくはない。でも、誰も置かないのは心許ない。


 そこでソロ――従魔もいるけど――の私にお鉢が回ってきた、ということだよね。


 打ち合わせを終えると、商会の人たちが慌ただしく出発の準備を進めていく。


「それでは、アイリスさんはこちらへ」

「分かりました」


 私はエリアさんと一緒に立派な馬車の傍へ。


 シルドさんたちが見送りには来ないと言っていたのも、邪魔にならないようにするためなんだろうね。


 イトゥーさんがやって来てエリアさんに話しかける。


「お嬢様、準備が整いました」

「分かりましたわ。それでは、出発いたしましょう」

「かしこまりました。アイリスさん、お嬢様をよろしくお願いします」

「お任せください」


 頭を下げるイトゥーさんに、私はポンと自分の胸を叩いてみせる。


 私たちは馬車に乗り込み、マナビアに向けて出発した。

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