第47話 ハラハラドキドキワクワク

 関所に着いたのは日が傾いた頃。


 ワクワクした気持ちのまま、関所を超える人の列に並ぶ。


 前に並んでいる人たちは、武装している人たちが多い。


「早くダンジョン潜りたいよな」

「あぁ、楽しみだな」


 会話を聞く限り、私と同じようにダンジョン目的の冒険者みたい。


 しばらく並んでいると、ついに私の番がやってくる。


「次の方」

「はい」


 順番を呼ばれてドキドキしながら前に進んだ。


「身分証の提示と越境する目的をお願いします」

「ダンジョンに潜ろうと思っています」


 ギルドカードを提示しながら、回答する。


「確認しました。お通り下さい」

「ありがとうございます」


 特に何も言われることなく、関所を越えられそうだ。


 ふぅ、これで一安心。


「ん? ちょっと待ってくれないか」


 そう思ったのも束の間、門を潜ろうとしたところで、後ろから声が掛けられた。


 ドクンとひと際大きく心臓が鼓動する。


「なんでしょうか?」


 できるだけ動揺を見せないように、気持ちを落ち着かせながら振り向いた。


「どうした?」

「その子の顔、どっかで見たような気がするんだよな」


 私を呼び兵士がやってきて私の顔をジロジロと見てくる。


「あっ、もしかしてこないだ処刑されたグランドリア家の悪徳令嬢じゃないか?」

「あぁ~、それだ。名前も同じだし」


 兵士たちの会話を聞いて、ただでさえドキドキしていた心臓が張り裂けそうなくらい鼓動を激しくなっていく。


 彼らはどうやら私の顔を見たことがあるらしい。


「つかぬことをお聞きしますが、グランドリアという家名に覚えはありませんか?」


 私はできるだけ平静を装って返事をした。


「いえ、ないですね」

「当たり前だよな。処刑されて死んだ人間がこんなところにいる訳ない」

「それもそうか。奈落に落とされて生きてるはずない」


 二人は他人の空似だよなぁと笑いながら話す。


「変なことを言いまして、申し訳ありませんでした。お通り下さい」

「ありがとうございます。宿舎の部屋は借りられますか?」

「はい。まだ空きがあるので大丈夫ですよ」


 どうにかバレずに済んだみたい。


 今度こそ、ホッと一安心。


『バレたら暴れてやったものを』

『ダメだからね?』

『ふんっ』


 アークの出番が来なくて助かった。


 宿舎は雑魚寝の部屋が無料で、個室が有料。まだ空いていたので、安全面を考慮して、個室を選ぶ。


 トイレはあるけど、お風呂や体を拭く水なんかはない。食事は出ないので、野外にある炊事場近くの共有スペースで、各々食べる必要がある。


 火にかけている鍋を囲んで談笑している商人風のグループや、一人で黙々と食べている冒険者風の人、旅人に囲まれて歌うように語る吟遊詩人。


「……」


 共有スペースには、そんな人たちが集まっていて、まさに異世界での旅らしい光景を目の当たりにして感動してしまう。


 私は設置されているテーブルにつき、ドライフルーツとチーズ、それに硬いパンなどを食べ始めた。


『なんとも味気ない』

『我慢してよね』

『ふんっ、仕方あるまい』


 アークも、道中にある程度食べてきたので、同じように保存食をかじる。


「おや、女性一人で旅ですか?」


 無心で食べていると、二十代前半くらいの男性が話しかけてきた。


 彼の傍には女性が二人。全員が武装してる。剣士風の男性と斥候役っぽい身軽な衣服の女性に、魔法使いっぽい女の人。多分冒険者のパーティだ。


「はい。とはいっても、この子もいますが」


 私は返事をするとともに、傍に寝そべってもごもごしているアークを紹介した。


「立派な従魔ですね。それなら声掛けは不要でしたかね」

「いえ、お気遣いありがとうございます」


 女一人だと思って心配してくれたみたい。


 村の依頼に向かう途中もあんなことがあったばかり。女性だけでの旅は危ない。それが、この世界では常識なんだろうな。


「ご一緒してもいいですか?」

「どうぞ」

「ありがとうございます」


 四人掛けのテーブルの空いてるところに彼らは腰を下ろした。


「皆さんはどちらに行かれるんですか?」


 私から彼らに尋ねる。


「ラブリス共和国のダンジョン都市アルパに行こうと思っています」


 彼らは三人で冒険者していて、ダンジョン都市に拠点を移す予定なんだとか。


 その中でもアルパというダンジョン都市は、ダンジョンに状態異常系の攻撃をしてくるモンスターがいなくて稼ぎやすいらしい。


 アークが何も言ってこないところを見ると、三人は大丈夫そうだ。


「あなたはどちらに?」

「私もダンジョンに潜ってみるつもりです。どの街の、とは決めていませんが」

「なるほど。それなら断然アルパをお勧めします。逆にモスマンはお勧めしません。毒に侵されたり、麻痺になって動けなくする攻撃をしてくるモンスターが多く、とても危険です。そのせいで、耐性装備を準備できるパーティ以外にはあまり人気がありません」

「へぇ~、そうなんですね」


 私には多分状態異常の攻撃は効かない。人気がないのなら誰もいなくて潜りやすいはず。それに薬品に高い需要があるという。そういう場所は私にとって一石二鳥。


 良い情報を聞いた。


 それからしばらく彼らと談笑し、夜が更けてきた所で解散。


 アークは宿舎の外で、私は個室で夢へと旅立った。

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