カルナバルの道化師は暁に唄う
あかつきりおま
カルナバルの道化師は暁に唄う
抜けるような青天
乱痴気騒ぎを引き起こすための太陽の光
ダンスのリズムを秘めている石畳の道
この街一番の祭りは、まだあと一日残っているのに
体はもうヘトヘトに疲れている
理由は知っている
俺自身が連日バカみたいに騒いだからだ
浮かれる民衆
派手に通り過ぎていく踊り子達
あちらこちらで聞こえてくる、太鼓やギター、そして朗々と響く歌声
そこら中に散らばっている装飾の欠片
何もかもが解放的で退廃的
そんな祭りの日をもっと燃え上がらせていく役割の俺
滑稽な動き
素顔がわからないぐらいに白く塗って、スカラムーシュを施した顔
ド派手な服装
絶対にタネのわからない手品
少々下品で、ユーモアのある語り
小馬鹿にされる存在
道化師の俺
客を盛り上げていくうちに、俺自身も有頂天になって
眠ることを忘れた酒場でドンチャン騒ぎ
その日気にいった、東方の衣装を着た踊り子を傍らにおいて
浮かれた奴らと飲み明かした
何本のボトルを開けただろうか?
ヴィーノは悪酔いさせるって知っていたけど
むしろ悪酔いしたいと割り切って、盛り上がっちゃって
ガチャガチャとグラスを鳴らして、何度も乾杯した
サイコーだったな、最初の一杯は
あとは覚えていない
ただただわけもわからず笑って飲んで笑って飲んで飲んで飲んで
そのまま気に入った踊り子と、2人で朝まで楽しんで
傍らにヴィーノのボトルがあるのは言うまでもなく
飲みすぎよ、と彼女は笑いながら言っていたけど
祭りだから構いやしない
そう言ってやった
彼女だって、酒に溺れて俺に溺れた
享楽の裏の虚無
規律や道徳なんてクソクラエ!
まとめて夜空の星に投げつけてやる
浮かれていたのはそこまでで
やってきたのは、やりすぎた翌日に来るあの頭痛
冷静になって思い出す、俺の仕事
人の心に火をつけて、心から燃え上がらせて笑わせる、俺の仕事
でも俺は職人だから
頭痛だろうが胸やけだろうが関係ない
俺が道化になった瞬間、それらは消えてしまうのさ
酒場を出て空気を思いっきり吸い込む
どことなく街中も酒臭い
俺のように、吐く息の酒臭い奴がたくさん呼吸している証拠
まだまだ誰も彼もが浮かれている
祭りはまだ終わっていないのだから
今日も激しく楽しむとしよう!
明日のことなど知ったこっちゃない!
道化師様の登場さ!!
Inspirated by Alborada del gracioso (from "Miroirs") Maurice Ravel.
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