モキュンギン

織風 羊

第1話 序章

モキュンギン


序章 


 晴子の彼氏は財閥の息子である。

名を賢治という。


 また、晴子の親友の名を麻美子と言い、彼女にも彼氏がいる。

名を正道という。


 そしてまた、女性同士の付き合いで、賢治と正道まさみちも会うことが多くなり、この二人は互いに気が合うことに気付く。


 簡単に言えば、四人が共に親友のような関係を築けられている。


 賢治は財閥の息子というだけあって、容姿端麗で白のスーツなどが似合いそうな姿である。

身長は高く、どちらかというと痩せすぎのような体格でもある。

親が金に任せて有名大学受験専門の家庭教師をつけてくれたおかげで医学部で学生生活を送っている。

勿論、そんな賢治の横に立っていても見劣りしないだけの容姿を晴子は持っている。


 それに比べると麻美子は決して美人と言えるタイプではない。

但し、可愛い。

見た目だけではなく、すること、言うこと、全て可愛いと言う言葉で形容できる。

彼氏の正道は、全くの正反対で、ジャージ姿が似合いそうな強面。

髪の毛は常に短く、体格も良い。

当然である、大学生にして空手4段の猛者。

まるで麻美子を守るために生まれて来たような男だ。


 大学が夏休みに入る前に晴子から麻美子に連絡が入る。

スマートホンの画面を開くと、

「近くで会わない?」

とだけ書かれてあった。


 その後、互いに連絡を取り合って、麻美子の通っている大学の近所の喫茶店で待ち合わせることになった。


「お待たせ」


 と言って晴子が麻美子の居るテーブルに向かってくる。

晴子はアイスコーヒーを頼むと、


「ねぇ、夏休みなんだけどさぁ、何か計画してる?」


「うん、正道と海へ行ったりとか、遊園地へ行ったりとか、その程度かな」


「ねぇねぇ、そんなんじゃなくてさ。泊まりの旅行でとか?」


「ええー。そんなの無いよ。だって二人とも、そんなお金ないし」


「だよね、でも、そんなにお金が掛からないとしたら?」


「ダメよ、そんなにって、それでもお金は要るもの」


「あのね、賢治の別荘で泊まらない?」


「?」


 麻美子の双眸が驚いたように開く。


「別荘だから宿泊費はタダ、食事代は要るけどね。交通費もタダ、彼のお父さんの所有してるセスナで行って、現地の個人所有の小さな飛行場から車で行けるの」


「えええー、賢治って飛行機操縦できたっけ?」


「あははは、賢治は操縦できない。でも、お抱えのパイロットが現地まで運んでくれるって訳。そこからは賢治の運転で車に乗って行って、正確に言うと賢治のお父さんの別荘でお泊まりしようかって話し」


「それじゃ私達、食事代だけで良いってこと?」


「それとお酒代ね」


「了解。正道に言ってみる」


「大丈夫。今頃、彼から正道に連絡が入ってると思うわ」

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