村の小さな男の子の冒険の話

小阪ノリタカ

第1話


とある村に「りく」という名前の小さな男の子が住んでいました。りくは、ちょっぴり恥ずかしがり屋だけど、誰よりもやさしい心を持っていました。


ある日、家の裏にある小さな森に、りくは一人で入ってみることにしました。ポケットには、お気に入りのクマのぬいぐるみ「くまたろう」が入っています。


森のなかは、しん…と静かで、鳥のさえずりや木の葉が風に揺れる音だけが聞こえてきます。ちょっとこわい。でも、くまたろうが一緒にいるから大丈夫。


森の奥で、りくは泣いている小さなリスを見つけました。


「どうしたの?」と、りくが声をかけると、リスは言いました。


「どんぐりを落としちゃって、どこかにいっちゃったの…」


りくはリスといっしょに、森じゅうを探しはじめました。くまたろうも、ポケットから顔を出して一緒に手伝います。


そしてついに、ふかふかのこけの下に、リスのどんぐりが隠れているのを見つけました。


「ありがとう…!」とリスはニコニコ笑って、お礼にきれいなどんぐりをくれました。


りくは、森から帰るころには、ちょっとだけ自分に自信が持てるようになっていました。くまたろうをぎゅっと抱きしめながら、りくは思いました。


「またあしたも、森にいこう!」



次の日、りくは朝ごはんを食べるとすぐに、くまたろうをポケットに入れて、また森へと向かいました。


昨日のリスさんいるかな?また会えるかな?


森に入ると、今日も静か。木漏れ日が差し込んでキラキラ光っていて、まるで森が笑っているみたいでした。


しばらく、森の中を歩いていると、「カサッ、カサッ」という音が聞こえてきました。音のする方に向かうと、今度は小さなふくろうの子どもが、地面にちょこんと座っていました。


「キミ…どうしたの?」とりくが聞くと、梟の子はうるうるした目で言いました。


「木から下りたら、上に登れなくなっちゃったの…!」


見上げると、たしかにとても高い木がありました。ですが、りくも高い木で登れそうにありません。


「うーん…どうしよう…」と困り果てていると、昨日のリスがぴょんっと現れました。


「あっ!昨日のリスさん!」とりくが言うと、リスはうなずきました。


「わたし、これくらいの木なら登れるよ!」


リスはスルスルッと木を登っていき、梟のママに知らせに行ってくれました。少しして、大きな梟が羽ばたいてやってきて、子どもをやさしく連れて帰っていきました。


「ウチの子を助けてくれて、ありがとう。」


ママ梟のフワフワした羽で、そっとりくの頬を撫でました。


その日、りくは森の入口でちょっぴり立ち止まって、空を見上げました。


空はとっても青くて、りくの胸の中もぽかぽかしていました。


「また明日も来ようかな。きっと、まだまだ知らない友だちがこの森にいる気がする。」


くまたろうも、ポケットの中でふんわり笑っているようでした。





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