第6話 私情警察2 ~前編~

カラン……


「やぁやぁ、マリさん。今日もお美しいっス!」


ドアの方を見ると、一人の男が入ってきた。


オレの後輩だ。イケメンで高身長。あと英語もペラペラ。


……なんかムカつく。


「まぁ、どうも…圭介さん」

「これ、いつものっス!」

「あらあら、今回は赤いバラの封筒?これって…」

「マリさんの好きな花っスよね?」

「まぁ、覚えててくれたの? うれしいわ」

「おいおいおい。だから!人の奥さんを口説くな!ってか、マリも断れ!!」

「あら?あたしは嬉しいわよ? あなたぜんぜんしてくれないし…」

「ぐぬぬ…!」


今回もA4サイズが入る封筒で持ってきている。厚みはそれほどでもないが…。


「マリさんへの想いを文章にしたら…こんなになったっス!」

「まぁ、ありがとう…」

「困ったヤツが来たら電話してくださいね。すぐに駆けつけますんで!!」

「困ったヤツか…今オレの目のまえにいるんだが、電話していいか…?」


圭介はオレの言葉も関係なく一方的にしゃべる。


「世の中おかしいっス!なんでこんな美人の旦那が…!? はっ!ま、まさかマリさん。…弱みを握られてるんじゃ!?」

「アホか!!」

「ラブレターは、お店を閉めたら読ませていただくわ」

「じゃ、僕は勤務中なんで…失礼するっス!」

「早くでてけぇ!ってか、仕事しろぉ!!!」


オレは玄関に清めの塩をまいた。


そして滞りなく一日が過ぎた。 時刻は夕方。オレは店じまいの準備をする…。




そしてその晩のこと…



「ふふ、圭介さんのラブレター…とても興味深いわ」

「どれ…」


オレはアイツが持ってきた資料に目をとおす。

う~む、資料も実に読みやすい。

今回のターゲットの情報がこと細かに記載されている。

アイツは顔がよくて、英語もできるから…情報収集なんてお手のものだ。


(……演技だよな? マリを口説くのは演技だよな…?)



オレは資料に目をとおした。被害者と加害者のそれぞれの生い立ちや人間関係。

犯人の動機や犯行現場と時間など…。


(今回の被害者は20代の男性。幼いころ両親が離婚し、現在は母親と二人暮らし。夜道に男二人にからまれ…暴行の末、死亡が確認された…か)


お経のようにぶつぶつ言いながら、オレは資料をぜんぶ読んだ。


(外道が……!)


それが俺の感想だった。

怒りで、資料の端を少々しわくちゃにしてしまった。

そしてその日の夜、10時ごろ…。


コン…コン…コン…


店の裏口から一人の中年女性が入ってきた。

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