私情警察

レッドハーブ

第1話 私情警察 ~プロローグ~

目のまえに…一台のクルマがある。


(これは…?)


「これは…マツダRX―7、FD3Sじゃねえか!」


懐かしい同僚の声だ。でも…声だけだ。


あたりにはだれもいない。真っ白な空間にオレと一台のクルマだけ…。


(夢の…中…なのか…?)


「徹底的な軽量化が施された車体は、戦闘機のゼロ戦からヒントを得たっていう…」

「よく知ってんなぁ~」

「へへへ…」

「ゼロ戦の魂を宿した名車…か」

「この話をするときは相手を選ぶんだ。戦争をイメージするからな」

「選ばれて光栄だよ」


オレはかるく肩をすくめる。だれもいないというのに…。


(そういえば…アイツとそんな話をしたな…。なつかしい…)


「でもオレはこの車が好きなんだよ」

「なぜ?」

「ゼロ戦だって、祖国日本を守るために飛んだんだろ?」

「そうだな」

「オレたち警察官だってよ、日本を守るために日々戦いだぜ?その精神を受け継いでなにが悪いんだよ?って思うんだ」

「………………」

「いや、戦争を美化しているわけじゃないんだぜ?」

「わかっているよ」

「オレは…この車にずっと乗っていたいんだ」


目のまえのクルマは、ふっと消えていった。


今度は目のまえに、拳銃が置いてある…。


(この拳銃は…………!)


「よう、鳥嶋ぁ~」


(ゲッ…。この声は……鬼教官の声だ)


アイツは苦手だった。一秒でも遅刻は許さないし…。

組手ではいっさい手を抜かない。ケガ人相手でも、お構いなしだ。



(犯人がおまえの体調を考えてくれるのか…?)


そんな言葉を思い出した。

そんでもって、訓練で少しでもポカをすると、すぐ腕立て伏せを追加してくる…。

でも…何事にもストイックな姿勢は充分に尊敬できた。


「おまえらが手にする拳銃は『サクラ』…日本警察正式採用5連発リボルバーだ」


鬼教官がオレの肩に手を回してくる…。


「期待しているぞ…!鳥嶋…!」


大きく吸い込んで………答えた。


「はい!」

「おう!いいねぇ!若いもんは! 活気があってよ!」


ガハハ! と鬼教官は笑う。


そこで、一瞬あたりが暗くなって…


「んぁ? ここは……?」


見慣れた天井だ。オレの部屋だ。


(ずいぶん懐かしい夢を見たな…)


あの頃は若かった…。希望に満ち溢れていた…。

オレが…オレ達が…日本を守るんだって…

警察官は…正義の味方だって…!

そう思っていた時期がオレにもあった。

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