第47話 神髄の結晶
生い茂る森林地帯『神狼の森』の中心部。
依頼発生の該当区画では、一つの異変が起きていた。
それは、木々の完全消滅。
森を見下ろす位置から見える中心部に、大きな円形の何もない空間が出来上がり、常に絶え間なく轟音が鳴り響いていた。
「『爆砕・魔星群』!」
着弾時爆発という『紋』によって猛威を振るう数百数千の『魔星』の嵐。
リュウコを中心としたその暴風は常に眼前の敵『エンペラーウルフ』に襲い掛かる。
ここまでの『ファイアウルフ』や『フレイムウルフ』や『クリムゾンウルフ』などと戦っている間は、魔力だけで戦う余裕があり、簡単に言えば舐めプ状態。より体裁を整えた状態で言うなら『縛りプレイ』の状態だった。
別に、実力を隠して~とか、能ある鷹は~とかではない。
目立つのが~とか、陰から世界を~とか、そんなでもない。
魔力の修練がまだまだ未熟だったから。
宝力や魂力や界力や死力や殺力は、それ単体でも極めれば世界を取れる力。
しかし、この世界ではそれらは存在すら認知されていないモノであり、世界から見れば異端。
どんな混乱が起こるのか、想像すらできない異常に他ならない。
まして、魔力という力の本場であるこの世界では、他の力よりも魔力の技術は遥かに進歩していて、リュウコはソレの道半ば、の半ばまである。
「『魔力腕』『魔力弾』」
魔力単体だと最上級までしか相手できない程度の実力。リュウコは他の力を使って初見殺しすることで、どうにか超常級までと戦えるようになっている。
その状況に危機感を覚えている。
「『魂魔拳』」
魔力で作った『
それを拳として扱うことで、肉弾戦の強度を高めるという基本戦法。
『BUGYUUUOOOOOOO!!!』
「やかましい!『死殺魂・縛網』!」
『魔力網』を殺力と死力と魂力で完全拘束型にカスタムした物。
それによってエンペラーウルフの動きを阻害する。
『魔力網』だけでは絶対に留めきれない馬力の化物相手でも、有効な一手。
しかし、
『リュウコ、魔力だけを使ってあいつを倒セ。』
「はぁ!?何言って――」
『BUGYAAAAAA!!!!』
ガイドがまた訳の分からないことを言ったかと思うと、リュウコの扱う魔力以外の力が、無理矢理せき止められる。
なんの妨害なのか、その出所も分からないまま、空想の虚脱感で膝の力が少しゆるむ。
対して、がっちりと固められていた拘束が何故か解けたエンペラーウルフは、そのことに歓喜しているのか、激怒しているのか、再びやかましい雄叫びを上げる。
「は、ま、『魔力砲』!」
テンパりつつも、咄嗟に放出する魔力の砲撃で、エンペラーウルフの頭部を狙う。
バシンと、妙な手ごたえがあった後、エンペラーウルフの無傷の顔が現れ、リュウコの全身に戦慄が走った。
「あいつ、あれ、『宝力』じゃ……」
『ああ、宝力だろウ。超常級以上の魔物は基本的に知能も高イ。受けた未知の攻撃を解析理解しテ、自分のものにするのも容易いだろうナ。おそらく、他の力も習得していル』
「ばッ!?じゃあお前、なんで魔力だけなんて!?」
超常級上位(S級対応)対、魔力だけでは超級にも苦戦する子供。
そんな状態を無理やり作られて、リュウコは冷や汗と動悸が止まらない。
『コロポの里ではなかったチャンス。お前はここで、魔力の神髄を手に入れロ。』
「し、神髄ってお前……」
ここで初めて、リュウコの顔に緊張感と危機感が浮かぶ。
ガイドのスパルタも、ここまでのは初めてだった。
『BUGYAGYAGYAGYA!!!』
「ぐぅうう!!おおおお!!」
『GYAAAIIIIIIII!!!』
宝力で身体強化を施し、魂力でブーストをかけ、死力と殺力で精神に直接デバフをかけてくる。
界力によって固定化した空間を足場に、三次元的な戦い方まで繰り出してくるのだから、もうたまったものではない。
『がんばレ、がんばレ』
「お・ぼ・え・て・ろぉおお!!!!」
『GIHYYYYY!!』
血管がはちきれんばかりに怒り狂うリュウコに対して、新しく得た力で大興奮のウルフが猛攻を仕掛ける。
宝力での防御力も失ったリュウコが、それに圧し負けるのは必然的で
「『魔力ぶぉおおおお!!?」
盾に張っていた『魔力壁』を貫通して殴られてから、ここ数日で何度目かもわからない長距離滞空を味わうハメになる。
『イヒヒヒヒヒッ!ゲヒャヒャヒャ!!』
「————ぁ」
ガイドの鬱陶しい笑い声が木霊する中で、リュウコの脳みそに新しいスイッチが入る。
それは、いわゆる魔力の神髄。
とはいえ、片鱗も片鱗の一部分で。
しかし、ガイドがリュウコに求めたものそのものだった。
「『魔力弾・乱舞』」
集合体恐怖症が見れば卒倒するような、そんな勢いで放出される魔力弾の嵐。
それは、あっという間に大空を埋め尽くし、開けた森の上空を覆い尽くしてしまった。
「『圧密繭』」
上空に広がった魔力弾は、一つ残らずウルフに対して集まり、一つの繭のように塊になる。
魔力弾は貫通力に特化させ、ウルフがどう逃げようととにかく追尾して逃がさない。
『GUGYUOOOOOOO!!?』
宝力で防御をしていても、無数の魔力弾によって研磨機のように削られてしまえば、毛皮から皮膚から、全てこそぎ落とされる。
魔力弾はその大きさと同じだけしか貫通しない。つまり、小指の先程度の大きさしか穴は作れない。しかし、無数の魔力弾はソレを無理やりこじ開けるだけの量があり、何よりリュウコから無限に生成されつづける。
数十秒も放置してしまえば、丸ハゲの狼の出来上がり。
そこでやっと、自分が削られていると気づいたウルフは大きく跳躍。
上空に殴り飛ばしていつまでも落ちてこないリュウコに向かって、再び拳を向けてくる。
「『螺旋魔力砲・貫突』」
再び貫通力に特化させた魔力砲によって、ウルフを狙うが、その狙いは頭部や胴体などの急所ではなく、手足などの致命傷になりえない、防御の魔力も意識も薄い場所。
『BUGYOOOOO!?』
毛皮の散った醜い姿だからか、驚愕の表情が良く似合う。
三閃の魔力砲はウルフの右拳以外の四肢をほとんど切断してしまい、バランスを崩したウルフの拳はリュウコに届くことが無く墜落していった。
大量の魔力弾の中に墜落していくエンペラーウルフ。
その姿を見下ろしながら、リュウコはゆっくりと地上に降りて行った。
『神髄の一つを体得したナ?』
「あぁ、『魔力効率』だろ?」
『そウ。お前は今まで大技で一撃で殺すような戦いが多ク、魂力などを習得してからその傾向が強くなっていタ。それを矯正するのは力だけの技術でなク……』
「あー、もういい、うるさい。『魔力砲』」
ガイドの長ったらしい講釈に耐えかねて、トドメの『魔力砲』をウルフに向けて放つ。
もう全ての体細胞を削り取られ、虫の息を通り越していたエンペラーウルフは、その一撃で完全死。
着地したリュウコは、上空から見た森の全体図からおおよその方角を推測してから地面に東西南北のマークを書き記す。
「あー、しんど」
『核、出たゾ』
エンペラーウルフの魔核は、血のような赤色の七角形の結晶。両手で抱えるほどの大きさもあり、『異界』に仕舞い込む。
その後、とにかく疲れたのでその場に寝っ転がって眠ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます