第34話 狂気の数秘学者

 幾度戦闘を繰り返しただろうか、恐らく10回程度か。正直俺はかなり疲労していた。

痛む全身、手足は重く補助魔術がなければ正直動かすことも出来ないだろう。


 元々はただの高校生、あのような異形と戦うだけでも異常なのだ。それを10回。


 やや思考もぼやけている感じがする。


 だが、だがそれでも俺は前に進む、進まなきゃいけない。美桜が待ってる。絶対にあいつを一人になんてしておけない。


 俺はその思いだけで坑道内を駆ける。

そうしていると、突然大きなドーム状の空間に出た。そこは今までの坑道とは違い壁は綺麗に整えられその痕跡も新しい。


 明かりも、先ほどのような電球の明かりでは無く、地面の線からうっすらと立ち上る赤黒い光によって占められている。

そして何より違うのは、ドームの中央、少し高くなった祭壇のような場所に白い薄絹を纏う1人の少女が黒い鎖に手足を縛られながら横たわっていた。


「美桜!!!」


 俺は思わず駆け寄ろうとするが、その前に声がかけられる。


「おやおや、お客様のご到着ですね。」


 俺は警戒して思わず立ち止まる。

赤黒く光る線よりも壁際、箱型の電子機器が備え付けられている異質の中においてなお異彩を放つそこから一人の白衣の男が進み出た。


「ようこそお越しくださいましたです。わたくし、この度の主催者である、エプタ・サモス・エレーミスと言いますです。以後お見知りおきをです。」


 そう言って、しわくちゃで薄汚れた白衣の男はケタケタ笑いながら、片手を胸に当て、まるで貴族がするかのような礼をしてきたのだった。

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