焼けたら、呼んで

@piyo926

プロローグ

「焼けたら呼んで」

男がそう言うと、僕は「はいはい」と返事をして、焚き火をするための枯葉集めを始めた。


この国の隅っこ、カラサキ区で手に入る芋は小さくてゴツゴツしていて、ちっとも美味しそうじゃないけれど、男はやたらとそれを頬張った。

焦げて真っ黒になっても食べるし、ちょっとくらい芯が残ってても噛み砕いて飲み込んでいた。

むしろ、いびつな焼け具合を「運命」とか言って笑うような、そんなやつだった。


「なんでそんなに好きなの?」って前に聞いたら、

「たぶん、あったかいからだろうな」って、遠くを見るように答えてた。


その時の横顔が、なんかずるかった。


焚き火の準備をしていると、煙の匂いに釣られて、いつもよりちょっと早く男が戻ってきた。

「焼けた?」って、まだ焼いてすらないのに聞くから、思わず笑ってしまった。

つられて男も笑いながら、僕の横に腰を下ろした。

そして、煙の行き先を追うように空を見上げた。


あれから――


世界がどうなろうと、僕の胸の中には、あの人がいる。


だから僕は、今日もちゃんと生きてる。


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