元Sランク冒険者パーティのリーダーの放浪旅〜四億ゴールドあれば生涯裕福に暮らせるらしい。本日、四億ゴールド貯金ができたので冒険者引退してスローライフを送ります〜
皇冃皐月
プロローグ:本日をもって、冒険者引退します
プロローグ
かつてない好景気と冒険者制度の拡充により、王都ビルゼブラの生活模様は大きく変化した。変化に揉まれる中、誰かが言った。四億
迷宮を
これは四億Gに貯金が達し、安寧と自由さえも手に入れた後の
◆◇◆◇◆◇
私、セリナ・クローデルはこの世界で一組しかいないSランク冒険者パーティのリーダーをしていた。自分で言うのはなんだが、実力、人望ともにその地位にそぐうものがあると思っている。私と同等レベルは勇者くらいなものだろう。
今日はギルドからの特別
本当は行きたくない。なにせ命が危ないからだ。
冒険者しているから死にたがりというわけじゃない。死にたくない。
だけれど生きるにはお金を稼ぐしかなくて、お金を稼ぐには仕事をするしかない。それに、この依頼は報酬が結構良かった。パーティメンバーで分割してもそこそこのお金をもらえる。
計算上では、この報酬で私の貯金額は四億G超える。
だからいつもよりも気合いが入っていた。
「セリナ、なんだか気合十分だな」
爽やかイケメンで女性人気が高いイクメンパパ剣士ヴェルバートは私を見て苦笑する。
「あはは、いつもあんななら良いんだが」
ガタイの良さはパーティ内随一、酒癖の悪さも随一なタンク役ゼルベルトは豪快に笑う。
「セリナさんっ! 今日も沢山楽しみましょう!」
控えめな茶髪で清楚さがどことなく漂うちっちゃな可愛い子、ウチのヒーラーミミは
パーティメンバーと
黄金に輝く
巨大な
激しい
Aランク指定されるのが相応しい迫力であった。
私たちはそれぞれ目でコミュニケーションをとる。頷き、配置につく。
ゼルベルトがタンカーとしてヘイトを一気に引き受け、後方からゼルベルトの支援をミミが行う。私とヴェルバートは様子を伺う。
暴れるようにゼルベルトへ攻撃を仕掛けるキングドラゴン。羽も尾も
一分が経過し、二分が経過する。
ゼルベルトが耐えに耐えに耐え、そして三分へ差し掛かる直前に一瞬の隙が見える。その隙を私とヴェルバートは逃さない。私は首へ魔法を打ち込み、ヴェルバートは尾へ剣を振りかざす。
そして……討伐した。およそ三分。瞬殺である。
◆◇◆◇◆◇
討伐の証明品であるキングドラゴンのしっぽをしっかり回収してギルドへ戻る。
たった三分で討伐したこともあり、パーティメンバーはみんな
まだまだやれるとかほざいている。私は正気かと思った。ありえない。
「こんなんであれだけの大金貰えるのか、今日は呑み放題だな」
「ちょ、呑み過ぎは身体に触りますよ? 私の回復術でも病気は治せないんですからね」
「あはは、わかってるわかってる。もちろん自分の限界量は超えないさ」
「いいね、僕は娘にプレゼントでも買って帰ろうかな。妻にケーキも買おう。時には機嫌を取ることも必要だからね」
「愛妻家アピールですか」
「うるせ」
クスクス笑い合う。ほんわかしたパーティメンバー。
力を持ったパーティというのはパーティ内で不和が生じ、瓦解するケースが多々ある。Sランクパーティがこの世界に私たちしかいないのはそれが原因の一つでもあったりする。
皆が皆、己が強い。己の力で、と自己評価を見誤るところからすべて始まる。だけれどこのパーティは違う。皆、仲間意識が強く、尊重し合っている。
一応自慢のパーティメンバーだ。
「セリナさんは今回の報酬どうするんですか?」
「今回の報酬も貯金だよ。全部、貯金」
「またかよ、つまんないなぁ。たまには呑もうぜ」
「嫌だよ。だって私にアルハラしてくるじゃん」
「そりゃ〜、リーダーがメンバーに呑む量で負けてちゃ、周りから舐められちまうしな」
ガッハッハと笑う。コイツの悪い癖だ。
ギルドに到着して、受付嬢に達成報告をする。もちろん持って帰ってきたしっぽも渡す。
「早いですね。さすがです。確認いたしますので少々お待ちください」
と言われ、三人がかりで持ち帰ったキングドラゴンのしっぽを奥へと運ぶ。しばらくすると受付担当してくれた受付嬢がやってくる。
「確認できました。では報酬になります。中身を確認の上、お持ち帰り下さい」
袋に入った大量のGを受け取る。
私たちは近くの席に座って、Gを分配。
どれだけ活躍しようが、活躍しまいが四等分。
これが私たちのパーティのルール。もちろん依頼受注により発生した経費は先に引いているが。
諸々の計算を終えて、分配完了。
「百万Gかあ」
ギルドカードに書かれている貯金額は3億9924万G。
これで生涯、仕事せずにとも不自由のなく生活できるGを手に入れた計算だ。
この時を待っていた。待っていた!
「よし」
ぱんっと叩いて私は立ち上がる。
「じゃあ今日はこれで解散か?」
「俺はここで呑んでくから」
「私はその、セリナさんと……少しお出かけしたいなぁなんて」
三人の言葉を聞いて、そして私は口を開く。
「じゃあ今日で私、このパーティ抜ける! お世話になりました」
「……」
ん、反応が悪い。
「本日をもって、冒険者引退します」
もうお金を稼ぐ必要はない。
わざわざ危険を犯してまで冒険者する意味ある? いやない。だからやめる。引退する。簡単な話だろう。
「え、は? どういう冗談だ?」
「セリナさん悪い冗談はやめてください。ミミ悲しいです」
「ガッハッハ、雰囲気に酔っちまったか?」
冗談だと思われている。突拍子もないししょうがないのかもしれない。けれど。
「冗談じゃないよ」
と、弁明するが三人とも信じてくれない。
「脱退するし、冒険者も引退するよ。これはね、決定事項」
これでも反応は芳しくない。三人とも顰めっ面。ああ、これどうやって引き留めようか考えている顔である。
こうなったらしょうがない。温めていた奥の手を使う他ないだろう。
「じゃあ、リーダー権限使うよ」
「リーダー権限……」
ミミは表情を険しくした。
「この世界随一のSランクパーティ、
セルフ追放。
引き止められるならこうすれば良い。リーダー権限を使って脱退する。
リーダー権限は絶対だ。この三人が私にリーダーを押し付けてきた時に決めたルール。リーダー権限が使える細かい条件とかあるのだけれど。今回の場合だと、脱退勧告にリーダー権限を用いることはできないが、パーティ追放に関してはリーダー権限を行使することができる。で、それは三人だけじゃなく私にも適用されるってわけ。ルールの穴を突いた小賢しいやり方である。
三人は唖然としているが知ったことじゃない。ヴェルバートは「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」とギルド内に響き渡る声を出す。らしくもない。
「え、ちょ、セリナさん。本気なの?」
ミミは今にも泣き出しそう。
「追放って。いや〜、そんな手段があるかぁ」
ゼルベルトは呆れたような口調とともに苦笑を浮べる。
彼ら彼女らの反応を見ても、撤回するつもりはない。だって、もう冒険者する意味ないんだもん。お金稼いだし。死にに行くだけじゃんこのままだと。
受付嬢の元まで歩き、宣言する。
「すみませーん。
「セリナさん。なに無茶苦茶なこと行ってるんですか? 冗談キツイですよ」
「いや、冗談じゃないんですよね。もう引退するんです。冒険者生活終わりです。というわけで、ギルドカードです。処理お願いします」
ギルドカードを提出し、パーティ脱退処理を仰ぐ。
受付嬢は戸惑いながらも、私の目を見て、処理を始めた。
こうして私はSランク冒険者パーティから脱退し、悠々自適なスローライフを送るんだ!!!
◇◆◇◆◇◆あとがき◇◆◇◆◇◆
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