第4話*花祭り
ソファーで寝たのはいいけれど、躰がガチガチになった感じがして仕方がないな。
でもルイスにはだいぶよくしてもらったし、ソファーで寝ると言ったのは自分だ。
まずは『花祭り』に参加してイベントを楽しむのはもちろんのこと、運命の人も探しちゃうぞ!
「スザンナ、君も『花祭り』に参加するのかい?」
ルイスと一緒に宿泊先を出て昨日の飲食店で朝ご飯を食べていたら話しかけてきた。
「うん、そのつもりよ。
ルイスは?」
「僕も参加するつもりなんだ」
「もしかして、ルイスも運命の人を探す感じなの?」
「運命の人?」
そう聞き返したと言うことは知らないみたいだ。
「昨日列車に乗って『コハマーナ』へ向かっていた時に、同席していたおじさんに教えてもらったの。
『花祭り』で出会ったカップルは永遠に結ばれるんだって!
実際、そのおじさんも『花祭り』で奥さんと出会ったことがきっかけで結婚したんだって!」
私はルイスにそのことを教えた。
「へえ、そうなんだ。
『花祭り』にそんなジンクスがあったなんて知らなかったな」
「だから私、とても楽しみにしているんだ!
これがきっかけで運命の人に出会えるかも知れないと思って楽しみにしているんだ!」
もう絶対に見つけてやるんだから!
気合い充分な私に向かって、
「運命の人が見つかるといいね、幸運を祈るよ」
と、ルイスは言ったのだった。
飲食店を後にすると、もうすでにお祭りは始まっていた。
「わーっ、すごい!」
あっちにもこっちにも色とりどりの花が咲き乱れていてとてもキレイで、地元の人たちも楽しそうで多くの観光客でにぎわっている。
こんなにもキレイで楽しいお祭は初めてだ。
「バラのソフトクリーム、美味しそう!」
お祭りと言えばグルメも大事だよね!
目にした屋台へと足を向かわせると、バラのソフトクリームを購入した。
口に入れると、冷たくて甘いクリームが舌のうえをひんやりと冷たくしてくれたのと同時にバラのいい匂いが鼻から抜けた。
これ、美味しい!
後5個は余裕で食べれちゃうかも!
ソフトクリームに頬が落ちそうになっていたら、
「君は本当に美味しそうに食べるね」
ルイスに声をかけられた。
彼の手にはチョコレートとバニラのミックスソフトクリームがあった。
「スザンナがあまりにも美味しそうに食べているから僕もつい買っちゃったよ」
ルイスはやれやれと呟きながらソフトクリームを口に入れた。
「でも美味しい」
そう言ったルイスが何だかかわいらしくて、私はフフッと笑ってしまった。
ルイスと一緒にソフトクリームを食べながらお祭りを見て回った。
「すごい、全部花でできているんだね」
動物や食べ物などを模して街のあちこちに展示されているオブジェは色とりどりの花で形成されていた。
「これは…猫かな?」
「ああ、そんな感じだね」
いろいろな色や形があって…花って種類が多いんだなと、そんなことを思った。
「スザンナ」
「何?」
ルイスが私の名前を呼んだので返事をした。
「君は、昨日から旅に出たって言ってたよね?」
「うん、言ったね」
それがどうかしたのだろうか?
「どうして旅に出ようって思ったんだい?」
ルイスが聞いてきた。
「行ったことがない場所に行ったり、いろいろな景色を見て回ったり、美味しいものを食べたりしたいと思ったの。
それから旅先で本当の友情に素敵な恋を見つけたいって思って旅に出たの」
「本当の友情に素敵な恋?」
理由を話した私にルイスが聞き返してきた。
「私、10歳の頃に親同士が仲良しだったからって言う理由である人の婚約者になっていたの」
もう終わった話なうえにルイスになら打ち明けてもいいかなと思ったので話をすることにした。
「それから毎日勉強とかマナーレッスンとかダンスレッスンとかお茶会とか分刻みのスケジュールに追われるようになったの。
少しでもミスしたら叱られる、ひどい時はたたかれたりともう散々だったわ。
お茶会は強制参加なうえにあちこちの令嬢たちが出席していて、彼女たちの嫌味に何も言い返さずに笑顔で耐え続けなきゃいけないなんて本当に苦行で仕方がなかった」
そこで話を区切ると、ルイスを見た。
「続けて」
と、ルイスが言ったので話を続けることにした。
「でも…1番嫌だったのは、上辺だけの人間関係だった」
そう言った後で息を吐いた。
「周りは私のことを家柄や婚約者と言う肩書きでしか判断してくれない、その肩書きだけを見て媚を売ってくる人もいるから…それが本当に嫌で仕方がなかった。
頼れる大人もいなければ相談に乗れる友達もいない、そんな中で婚約者が他の女性と仲良くしていることに気づいちゃったの」
こうして説明してみると、スザンナは改めてつらくて苦しい思いをしてきたんだなと思った。
「そしたら…何だかもういろいろとバカみたいに思えてきちゃったの。
私がこんなにも大変な思いをしているのに、肝心の婚約者は自分以外の女と一緒に遊んでいると言うこの状況が何だか虚しく感じちゃったの」
お互いの両親の仲がよかったからと言う理由で当人たちの気持ちを聞くことなくアーロンの婚約者になってしまった。
パワハラかブラック企業かと疑いたくなるくらいの厳し過ぎる妃教育に令嬢たちの嫌味には言い返さずに笑顔で耐え抜かなければならない地獄のお茶会、頼れる大人もいなければ相談できる友人もいない、それどころか自分のことを肩書きでしか判断してくれないうえにそれしか見てくれない人間関係と目の当たりにされたスザンナは、自分の心が荒んで疲弊していくのを感じただろう。
王妃の座と言う絶対的に約束されたその未来に希望を見るものの、エリーゼが現れたうえにアーロンと恋に落ちてしまった。
ポッと出の女に唯一の希望すらも奪われてしまったスザンナは、とうとう心が壊れてしまった。
エリーゼにいじめや嫌がらせをすることで希望を奪い返して心を取り戻そうとするけれど…結局何をしてもうまく行かなくて、最後は婚約破棄に国外追放と言う罰を受けることになってしまった。
改めて振り返って考えてみると、ただただかわいそうで仕方がない。
「まあ、そもそも婚約したきっかけが親同士が仲がよかったからって言う理由だから最初から興味がなかったと言えば当然のことなのかも知れないけどね。
それでこっちから婚約破棄を言い渡してとっとと旅に出ることにしました…って言うのが私が旅に出た理由よ」
話を終えた私はルイスの顔を覗き込んだ。
「ーー何だかうらやましいな」
ルイスは言った。
「えっ?」
うらやましいって、何が?
「旅に出た理由がどうであれ、そんな風に気持ちを切り替えて行動に移すことができたのがとてもうらやましいなって思ったんだ」
「…そうなの?」
「僕は少なくともそう思ったよ。
最後は気持ちを前向きにして、いろいろな理由を見つけて旅をすることにしたスザンナはかっこよくてうらやましいなって思ったよ」
「そ、そう…」
まさかそんなことを言われるとは思ってもみなかったので、私はどう返事をすればいいのかわからなかった。
「スザンナ」
ルイスが私の名前を呼んだ。
「君がよかったらだけど、僕も一緒に旅をしていいかい?
君の話を聞いて、僕もいろいろな景色を見たり、美味しいものを食べたり…それこそ、友情や恋を見つけたいと思ったんだ。
君の旅に同行したいと、そう思ったんだ」
そう言ったルイスの顔はとても真剣で、私のことをおもしろがってもいなければバカにしている様子もなかった。
何より、彼と一緒に旅をするのも悪くはないと思った。
「いいよ!」
私は言った。
「一緒に旅を楽しもうよ!
それで、どちらが先に恋人ができるかどうか競争しようよ!」
「えっ、恋人?」
そう聞き返してきたルイスに、
「ルイスは、私の友達だよ!
私が旅をしてからできた最初の友達だよ!
そうでしょ、ルイス?」
と、私は言い返した。
「そうか、友達か…」
ルイスはそう呟くと、フフッと笑った。
「えっと、友達じゃないの…?」
思わず聞き返したら、
「友達だよ、スザンナ」
と、ルイスは笑顔で答えたのだった。
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