第6話 ボクのジョーカーと君のジョーカー

「大丈夫?まだ体力持つ?」


「はぁ……はぁ……ええ、大丈夫です」


モンスターが出てきたことで完全なパレードになるのは時間の問題と気づいたボクたちはダンジョンに潜っていた。

中層の時点でここまで息切れが激しくなっている理由は一つ。

中層の時点で下層のボス級モンスターがポンポンと発生しているからだ。


多分このモンスターたち、深層のモンスターだ。

ここじゃなくて、他のダンジョンのが付くだろうけど。

全く……なんて面倒なものを用意してくれたんだい。

ただの裏組織だって甘く見てたけど、想像以上に厄介な組織っぽいね。


「……っ、まずい。特殊犯罪係!今から上層に上がれ!そして、上層に行くモンスターを止めて!」


「は?ふざけんなや!超次元生徒会だからって甘く見過ぎだろが!」


「手柄を横取りしたいから言ってんじゃねえんだよクソガキ!死にたいなら残れ……。だが、死にたくないならさっさと避難しろ!」


「だから……少しは説明しろって…」


納得しきれず、食い下がってくる特殊犯罪係に舌打ちを鳴らしていれば、警戒対象として見ていた存在は現れた。


ソイツは……人型でありながら人に近しい理性が全くと言って良いほどにないソイツは…。

挨拶と言わんばかりに咆哮を放つ。

気軽に放ったそれには膨大な魔力の僅かな一部が含まれており、ダンジョンの壁の大部分を破壊する。


特殊犯罪係の面々はボクが庇ったから無事だけど、これから戦闘が広がると考えたら、守りながらは無理だ。

多分、死なせちゃう。だからさ、特殊犯罪係さん。さっさと逃げてくれるとありがたいんだけど…。


水戸みずと!俺たちと宵闇さんの格の違いが分かっただろう。指示通り上がるぞ!」


「ぐ……分かった。俺はあいつには敵わねえ。だけどな、宵闇!俺は必ずお前に勝つぞ…!」


水戸と呼ばれる青年は、ボクに対して勝利宣言をしてから立ち去る。

…生意気だ。自分との差なんてクソほど見たくせに諦めないなんて……まるで、ボクみたいじゃないか。

格上相手に媚びない姿勢、久しぶりに見たかも。


帰ったら鍛えてやろうかな…。


「大好きなお仲間とのお別れは終わったか?」


「どうしてそう思うの?あれはまた会おうねって言い合っただけだよ?被害妄想も良いとこじゃない?」


化け物の奥から出てきた人間が開幕煽ってきてので、ついついこっちも煽ってきてしまう。


でも、ボクは悪くないと思うんだ。

ほら、会長も言ってるし。最初に拳振るってくるヤツが全面的に悪いんだから、何しても大丈夫って。


「教えてやる。群れるヤツは弱い。つまり、群れることを許容するお前は弱い」


は?……はぁ、なんともバカバカしい理論だこと。

その説明聞いて納得する人なんて極小数でしょ。

全てを肯定するイエスマンか、自分のことを一匹狼だと思っている勘違い野郎か、思考が捻じ曲がった天才か。


「自分が群れることができなかったからって嫉妬をぶつけてこないでくれる?歪んじゃった天才くん」


「なっ……俺をバカにするか!もういい、お前なんか死んじまえ…やれ!デスタサロ!」


人間の言葉に呼応するがごとく……化け物、デスタサロは反応し、殴りかかってくる。

理性もクソもない化け物が武術を使ってくるとかこれ如何に。

それに人間の大部分が使う武術よりも遥かに上だ。


生徒会が使うものよりかは下だけど……。

人間嫌いである夢跡の首領が色々と教えたんだろうね。

さすがに尖りでしょ。ひゃー、こわ。


「でも、まあ……あんまり大したことはないかな」


人類が使う武術よりも強い。

前までのボクだったら苦戦してた。

でもねえ……今のボクは生徒会の技術を取り入れていることに加え、次元も壱次元へと上がった。

余計なことを考えながら攻撃を捌くこともできちゃうって訳なんだな。


「えっ…!?」


なんか、急に毒を吐かれたんですけど…。

人工モンスターでも天然モンスターでも特徴的なスキルがあるから変だと思ったけど……こいつは毒だったって訳ね。

普通の毒なら対処もできたけど、こいつのは相当まずいかも。


ボクには血清鎮静呼吸法があるのに避けた。

本能的に受けたら死ぬと感じて、避けたんだ。

頭からもエラいほど危険信号を出されているし、受けたらダメなやつなんだろう。

全く…困った。本当に困ったちゃんなんだ。

毒を避けながら攻撃を捌き、その隙を掻い潜って攻撃を与えなければならない。


おいおい、一気に難易度高くなったんだけど?

他の生徒会じゃ兎も角……ボクじゃギリギリ。

もしかしたら負けるかもね。


__ぐ……分かった。俺はあいつには敵わねえ。だけどな、宵闇!俺は必ずお前に勝つぞ…!


脳裏に水戸の言葉が浮かぶ。

その言葉に心がくすぐられ、体は勝手に動いていた。

毒も攻撃も掻い潜り、マナをたっぷり込めたストレートパンチが繰り出される。


「あぁ、そうだった…。ボク、死なないんだ。クソ青い若造に言われちまったからな。勝ち逃げする訳にはいかないのよ…」


ったく、年老いたもんだよ。

勝てる可能性の前に負ける可能性を考えちゃう。

そして、生意気な若造に発破をかけられるとは。

ボクもまだまだ…チャレンジャーだってのによ!


「ぬるいのは終わった。今からブチ焦げよう。昂る闘争も、ボクと君との戦いも」


「終わらせれるとでも!?」


「戦いはいつかは終わる。それが今日だった話。そして、打ち滅ぼすのがボクだった話…」

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