魔力ゼロだけど道具で異世界なんとかします! 〜スプーンから始める文明革命〜
@chuntiansan
プロローグ 異世界転生なのに夢も何もあったもんじゃない
──スライムもドラゴンもいなかった。
いたのは、泥と煙と筋肉だけだった。
目を覚ました瞬間、まず目に入ったのは、灰色の空と、鼻をつくような獣の匂い。そして、叫び声と怒鳴り声と、「おい、誰だこいつ!?」という声。
「……夢じゃねえのか……?」
日野晴彦、27歳。昨日までホームセンターでペンキ缶に囲まれていた男は、気づけばどこかの野戦キャンプの真ん中に倒れていた。
「転移者だ! まじか〜たまにいるんだよな、こっちは人手足りてんだよ!」
筋肉ゴリゴリの兵士たちが、汗と泥にまみれた顔で晴彦を見下ろしている。周囲にはテントがいくつも張られ、鍋からは謎の茶色い液体がぐつぐつと煮立ち、どこかの小隊が剣を持って素振りをしていた。
「……ちょっと待って。これ……異世界?」
ぽつりと呟いた晴彦の声に、近くの兵士が鼻で笑う。
「なに寝ぼけてんだ。魔力、測るぞ。杖持て」
晴彦の手に押しつけられたのは、木製のボロい棒。え、魔法? まじで? と期待する暇もなく、先端がチカッ……と一瞬だけ光った。すぐに沈黙。
「……はい、ハズレ。魔力量ゼロ。雑用行き」
「え、えっ、ちょっと待って!? 魔法、もう終わり? 俺の異世界ライフ、チュートリアルもなし!?」
目の前でスパッと夢が切り裂かれた。
ファンタジー世界って、魔法バンバン飛んで、ステータス画面が開いて、スライム倒してレベルアップして──
そんなの、なかった。
現実にあったのは、土の臭いと泥だらけの仕事。そして──
「おい転移者、おまえ明日からトイレ掃除だ。外の厠、昨日崩れてるからスコップ持って直せよ」
「…………いや、なんで“魔法世界”で俺、便所修理してんの?」
──そうして、異世界ライフは静かに幕を開けた。
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