第32話 "Malice lurking in the signal of reunion"
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ねえ、もう一度私の名前を呼んで。
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レヴィたちは、ルルーシュの案内で連れてこられた集落で、一通りの準備を済ませると、《トリアル大森林》へと向かった。
向かったと言っても、徒歩ではなく、ルルーシュの転移魔法を用いたため、一瞬で到着してしまっているのだけれど。
「はぁ……疲れたからうちは少し寝るね。着いたら起こして」
当然のように、ルルーシュはタニアの背中に身を預け、すやすやと眠ってしまった。
「なんか、タニア慣れてんな」
「あー、ルルさんと一緒にいる間、こういうことが多かったからね」
「なんというか似合うな」
「どういう意味よ、それ」
《トリアル大森林》に到着して、一行はチェルミーを先頭に歩き始めた。
チェルミーは、次の目的地を聞いてからというもの、わかりやすく口数が減っていた。
故郷へ帰るということが彼女にとってどういう意味を持つのかは、彼女にしかわからないけれど、ここまで気を張っているチェルミーは見たことがなかった。
チェルミーの変装は、すでに解かれており、エルフの姿のままである。
彼女が故郷を出て探し求めていたもの、それが彼女にとってどれほど大事なのか。
その大きさを慮ることはできても、彼女に傷を癒すためには双方の歩み寄りが必要不可欠となる。
「なあ、俺気になってんだけどさ……この四人で戦うってなったらチェルミーが後衛で、三人前衛って感じになんのか?」
カエルムは退屈そうに周りを見ながら、ふと気になっていることを口にした。
現状、レヴィもタニアも前衛での戦闘を得意としているけれど、カエルムが参加することにより、前衛が三人となってしまっている。
「あー、それだとちょっとバランス悪いかな? 私が後ろに引いてもいいけど……タニアの方がカエルムに合わせるの上手そうだし」
「んーどうだろう。火力面で言えばレヴィが前にいた方がいいのかな……ま、何回か合わせてみて決めていけばいいんじゃない?」
チェルミーは静かに先頭を歩き続ける。
レヴィたちも、当然彼女の気が落ちているであろうことには気が付いているけれど、こういう時にどういう言葉をかけるべきか、その答えを持ち合わせていないのだ。
「俺の武器は雷の魔力との同化で、圧倒的な速度と手数になると思う……でも、俺はレヴィに比べて魔力の総量が少ねえ。だから、短期決戦じゃねえ時は足を引っ張っちまうかもしれねえ」
カエルムも自覚している通り、彼の弱点は非常にわかりやすい。
瞬間的な爆発力はあるけれど、持続力に関しては課題である。
魔力の総量は、生まれ持ったもので大半が決まってしまう。
鍛錬や修行で増やす方法もあるにはあるけれど、実践する者は少ないらしい。
その理由は単純であり、死に直面する可能性が非常に高いからである。
魔力は、死に直面し生還できた場合、飛躍的に増幅するという逸話がある。
死線を潜ることで、魂の強度が上がるとされているけれど、それを実践するリスクを考えると、修行に向いていないのは誰でもわかることである。
そして、カエルムは実戦経験が少ない。
レヴィやタニアにも言えることだけれど、それでもカエルムは圧倒的に少ないのだ。
実戦に勝る経験なし。
それを自覚できているというのは、カエルムの美点というべき部分かもしれないけれど、それを克服する時間が果たしてこの先あるのか、何の保証もないのだ。
しかし、そういう弱点を補い合うのが仲間である。
「あ、チェルミーなら解決してくれるじゃん」
「魔力回復の支援魔法ね。確かにあれは助かるね」
レヴィとタニアは、チェルミーの支援魔法を何度もその身を持って経験している。
チェルミーの歌魔法には、通常の支援魔法と異なる利点があった。
それは、音の届く範囲の全ての者に対して確実に魔法の効果を付与できるということである。
それは、従来の支援魔法と比較すると、異常なことなのだ。
本人がそれをどれくらい自覚しているのかは、わからないけれど。
「そうか……どっちにしろやっぱ実際にやってみるしかねえか。俺としちゃあ、まずはお前ら二人の連携ってのをしっかりみたいとこではあるけどな」
「私らの連携? そんな大したことしてねえけどなぁ」
「うん、私もレヴィも割と好きに動いてるだけだけどねぇ」
チェルミーは会話に参加しない。
頑なに、口を閉ざしたままただひたすらに歩き続ける。
「……なあ、チェルミー?」
レヴィは、できる限り自然に話しかける。
チェルミーは、それまで機械のように動かし続けていた足を、ようやく止めた。
「……」
「どうしたの? チェルミー」
この中で言えば、タニアはチェルミーと過ごして時間が長い。
だからこそ、今のチェルミーの背中が語る心情がほんの少しだけわかるのかもしれない。
「チェルミー、私たちに話せないことは話さなくていいけど、話したいことがあるのなら、言ってね。何を聞こうと私たちがチェルミーの仲間であることは変わらないから」
「……タニア、ぐすっ」
振り返るチェルミーの目には涙が溜まっていた。
一体いつから堪えていたのか。
一体なぜ彼女は泣いているのか。
レヴィたちは一旦足を止め、眠るルルーシュを優しく木の幹にもたれさせ、四人で改めて話しすことにした。
「え、えっと……ごめんなさい。こんな風に泣くつもりはなかったんですけど、いろんなこと考えてたら……ごめんなさ、い」
そこから、チェルミーは少しづつ話し始めた。
姿を偽っていた罪悪感に苛まれていたこと。
故郷に帰ってきて、母の死を思い出してしまったこと。
森を飛び出て、前に進んでいるのか自信が持てていないこと。
彼女が抱えていたものを、レヴィたちが完璧に理解してあげられるということはない。
しかし、それでもレヴィもタニアも彼女を一人にはさせない。
「チェルミー、私らもさたくさん失敗してるし、いつも正しい選択ができてるわけじゃないけどさ……それでも大丈夫だって思えるのは、皆がいるからなんだよね。少なくとも、私はタニアやチェルミー、それにカエルムも加わって、一人じゃないって思えることがすっげえ心強い!」
「そうね、私も同感。私だって悩んだり落ち込んだりするけど、それでも仲間の皆が前を向いてるって思えば、元気でるよ。チェルミーの抱えてるものは、多分私が想像してるよりも、ずっと大きいのかもしれないけど、私たちはちゃんといるからね?」
「……これ、俺もなんか言うべき……だよな? あー、あんまりこういう時何言えばいいのかわかんねえけどよ、俺も今回身内を
三人がそれぞれ、チェルミーのために口を開く。
その言葉は、チェルミーには温かすぎたのかもしれない。
彼女の瞳は、溢れ続ける涙で目の前にいるはずの三人の姿すら捉えることができない。
「あ、ありが……とうございます」
こうして、一行が立ち止まったのは、実際いい機会かもしれない。
チェルミーの故郷に帰る目的は、カエルムの身体に宿る神獣の封印を解くためではあるけれど、チェルミーの過去と向き合うのは避けられないだろう。
エルフ族は、昔は妖精族と呼ばれていた。
人類である亜人種に分類されてはいるけれど、彼らは特異な点が多い。
まず一つは、異常なほどに長命であること。
もう一つは、自然との共鳴によって知識や情報を集めること。
最後に、死というものに対する考え方が、他種族のそれと異なるということ。
チェルミーの母がどのように死んだのか、未だチェルミーの口から語られることはないけれど、その真実はもしかしたらまだ隠されているのかもしれない。
「私、エルフであることを隠さなきゃって思ってたんです。エルフには逸話が多くあって、神秘的なものや美化されちゃってるもの、悍ましいものも中にはあります。そういう話を信じて、エルフに対して危害を加える者が少なくないと里長に聞かされていましたから……だからずっと姿騙りの耳飾りを付けてました。あの耳飾りは母からもらったものだったんです。これを母が私にくれた理由は、きっと母も何かを見たからだと思うんです。外の世界で姿を偽らなければならない理由が……」
エルフ族の希少性というのは、ある意味で言えば聖属性の魔力よりも高いかもしれない。
「そして、母は竜によって殺されてしまったという話も、今思えば不自然な点が多いんです。ルルさんと行動を共にしてて気付いたんですが、竜が本気であの森で暴れたんだとしたら、私の里は跡形も残らず消えていたんじゃないかって……あの日死んだ者たちの数も少なすぎる気がしますし……」
チェルミーが過去に見た惨劇は、果たして本当に竜によるものだったのか。
「それってさ、ルルーシュさん起こして聞いてみたらわかるんじゃない?」
レヴィの提案に、三人が同時にルルーシュに視線を向ける。
静かに眠っているようにしか見えない彼女は、何かを知っているのか。
それとも、何も知らないのか。
何か知っている上で、本当のことを話してくれるとは限らないけれど。
「そんなにみんなでこっちに見ても仕方ないでしょ……せっかく気持ちよく寝てたのにさぁ」
ルルーシュは軽く伸びをして、四人の会話に混ざる。
「ま、だいたい聞きたいことはわかってるよ。竜たちがエルフの里を襲ったかどうかでしょ? 悪いけど、うちらにわかることはほとんどないね。そもそもエルフの里の細かい位置がわかんないし……まあ疑う気持ちはわかるんだけどさ。もっとわかりやすい奴らがいんじゃん」
ルルーシュが言いたいことはその場にいる全員が想像できていた。
しかし、その存在にたどり着いたとしても、竜の存在が問題で推測を確定できない。
「野良の竜って結構いるよ? うちらが把握してない子たちなんてどんくらいいるのって感じだしね。それにね、うちらの名誉のために言うけど、うちらは人間種以外を傷付けることはしないから」
ルルーシュはかなり重要なことを当たり前のことのように言ってのけた。
【七竜人】は、人間種以外は襲わない。
確かに、コルトという兎人族の少女を保護する時も、帝国軍の人間種は手酷く殺されていた。
しかし、わざわざコルト一人を保護するためだけに、ミーシャとルルーシュが駆り出されていたことを考慮すれば、ルルーシュの発言の信憑性は高い。
「チェルミーのお母さんの死に竜が関わってるっていうなら、可能性は二つかな。一つはさっき言った野良の竜、でもこれは可能性は低いと思う。うちもそこまで詳しく知らないけどさ、竜とエルフは昔交流があったとかで、敵対する理由がないんだよ。それで二つ目は、人間種。闇属性の魔法の応用で対象を強制的に支配下に置くのがあってね……個体の強さがそこまで高くない竜なら、人間の魔力でも工夫すれば使役できなくもないかもね。ま、あくまで推測ね」
真相を探るには、足を止めていても何も始まらない。
相応の情報を得るには、それだけの行動を起こさなければならない。
チェルミーもここに来て足踏みするつもりはない。
母の死の真相のため、彼女は前を向く。
神獣についての話も、当然重要なのだけれど。
この先、レヴィたちはもう一つ向き合わなければならないものができたようだ。
ルルーシュの目が覚めたことで、五人は揃って歩き始める。
チェルミーの足取りはどこか重たそうにも見えるけれど、それでも真っ直ぐ森の中を進んでいく。
「あ、チェルミーうちから一個気になってること聞いてもいい?」
「あ、はい」
チェルミーは相変わらず先頭を歩いて、申し訳なさそうに応える。
「うちが聞いたことがある話ってだけで、ただの好奇心だし……気を悪くしたらごめんなんだけどさ」
ルルーシュにしては、随分と気遣った言い回しではあった。
「エルフってさ死んだらどうなるの?」
チェルミーの肩が少し震えた。
それはエルフの神秘に触れることだからである。
「答えたくなかったら、別にいいよ。無理矢理聞き出そうなんて思ってないし。ただ、うちもそこそこ長いこと生きてきたけどさ……エルフの死体って見たことないんだよね」
「……」
気まずい空気が流れる。
流石にルルーシュが話題を変えようと口を開きかけた時、チェルミーの方が先に話し始めた。
「エルフは生まれた瞬間から、ある一つの魔法を本能的に使うことができるんです。その魔法の名は神樹魔法……魔力を自由に扱えるようになる頃には、周囲の魔力に干渉して植物を操ることができるようになります。それだけ聞けば、便利で応用の効く魔法だと思いますよね……実際私も子どもの頃は、そう思っていましたし、魔法を使うのが楽しくて楽しくて……でも、神樹魔法の真髄はそんなものじゃなかったんです」
エルフ族が、森に結界を張ってまでその存在を隠そうとしている理由。
彼女が話そうとしているのは、その要因の一つである。
「神樹魔法を扱う者、つまりエルフに生まれた者は全て、その呪いを身に宿しています。私たちは、死を迎えると同時にその肉体を苗床に神樹を大地に芽吹かせます。その神樹は魔力を纏っていて、最高品質の素材になると言われています」
チェルミーは話し終えた後、自身の口に手を当て、何かを堪えるように俯いた。
今彼女が言ったことが本当であるならば、エルフ族の価値は確かに非常に高いと言えてしまう。
整った容姿と優れた魔法、さらには死んでなお利用価値があるとすれば、その身柄を求める存在は確かにいるだろう。
拉致された事例もあるだろう。
コルトの件のように、侵略され無理矢理連れ去られるなんてことが起きてもおかしくはない。
それでも、エルフ族がこうして存続し続けられる理由は、彼らが魔法の扱いに長けていることが挙げられるだろう。
彼らエルフの使う魔法は神樹魔法が軸となっており、そこにさらに属性魔法が加わるのだ。
「エルフの里で死んだ皆は、大切に守られていますけど……外で死んでしまったら……」
その先を言うことは、流石に憚られてしまったのか、チェルミーは口を噤んでしまった。
「そっか、ありがとね……答えてくれて」
ルルーシュもチェルミーの心情を慮ったのか、それ以上追求するようなことはしなかった。
そのまま一行はそれぞれが黙ったまま、結界の前まで歩き続けることになった。
結界を前にして、チェルミーは立ち止まったまま動かない。
ここまで来てしまっては、他の者にできることは何もない。
チェルミーの身体が魔力を纏い始める。
普段、彼女が使う魔法とは異質の魔力。
チェルミーの足元から樹木が生え始め、花は咲き、小さな森を創造する。
「へぇ、これが神樹魔法ね……うちでもこれは盗めなさそう」
ルルーシュは面白そうにチェルミーが展開する魔法を眺めている。
ルルーシュは、大抵の魔法であれば一度見ただけで完璧に習得できる。
しかし、エルフ族の神樹魔法は一種の呪いなのだ。
その副産物としての魔法なのだ。
「我の声に答えよ……我は森の神秘を守りし者。閉ざされし無情なる帳の鍵を開けなさい」
チェルミーの厳かな声が、その場に響く。
チェルミーは右手で結界に触れ、集中していく。
レヴィもタニアも、カエルムも緊張の面持ちで様子を見守っている。
「循環する善意、芽吹く憐憫……自由を苛む守護者、崩壊する秩序を我は拒絶する……【神樹魔法・
チェルミーの足元に広がる小さな森が一斉に結界に向けて幹を伸ばし始める。
そして、瞬く間に結界に穴を開けた。
「さあ、い、行きましょうか」
振り返ったチェルミーは顔を赤らめ、開いた穴の先を指差した。
魔法の詠唱が恥ずかしかったのか、魔力を使いすぎて身体が火照ったのか。
レヴィたちの目に映るチェルミーは、少なからず皆が知る彼女だった。
チェルミーに続くように一行は結界の中へ足を踏み入れる。
同時、ルルーシュとレヴィが戦闘態勢をとった。
「みんな構えて!」
「いい……うちがいなすよ」
二人が反応したのは、明確な敵意に対してだった。
レヴィたちの前に現れたのは、十数人のエルフたちだった。
それぞれが刺すような目でこちらを見ている。
彼らの目にも、チェルミーの姿は明らかに見えているはずなのに。
「この地に足を踏み入れた理由はなんだ?」
現れたエルフたちに中で、最も威厳のある格好をした男が一歩前に出て、こちらに問いかける。
歓迎されていないことは誰にでもわかる。
「あ、あの! ノルスケイル様! わ、私です! ポプラの娘です! チェルミーです!」
チェルミーの口からは聞いたことないほどの大きな声がその場に響いた。
手も声も震え、彼女なりに精一杯なのは伝わる。
しかし、相対するエルフたちの反応は静かなものだった。
「そんなことは結界を開けた瞬間からわかっている。俺が聞いているのは、今更この地に帰ってきた理由だ」
ノルスケイルと呼ばれた男は、手にしていたけ弓を構える。
答えなければ敵とみなす、と。
膠着状態のまま、その場の誰も動かない。
そのまま、時間だけが過ぎるのを彼女はよしとしない。
彼女は生粋の面倒臭がりなのだ。
こういう揉め事にも興味はないし、目的を果たしてさっさと休みたい主義なのだ。
「ねえ、ちょっといい? 一応自己紹介はしとくよ……竜人、ルルーシュ。わかる? ここにさ、神獣を覚醒させる祠があるはずなんだけど……案内してくれる?」
憂鬱そうな態度はいつも通りではあるけれど、ルルーシュから放たれる圧はその場にいる全員が思わず身構えるほどのものだった。
答え次第ではこの森ごと消しとばす、とでも言っているかのような圧。
「貴様のことは知っている。竜人というのも間違いないだろうが、貴様のような危険な者を森に入れるわけにはいかん」
「そんなことはどうでもいいよ……そっちが余計なことしなきゃ何もしないよ。でもさ、今言った通りこっちにも目的があるわけ……帰れって言われて帰るわけにもいかないんだよね。うちをさっさとこの森から追い出したいなら、その用事を終わらせるのに協力してくれない?」
ルルーシュの発言に、皆が凍りつく。
あまりにも強引な主張だったからだ。
当人であるチェルみーとカエルムでさえ、思わずエルフ側の心配をしてしまいそうになるほどに。
「ふざけるな、竜人。貴様らがどれだけ優れた存在だろうと、この森で好き勝手できると思うな」
「へぇ……試してみる?」
両者は睨み合う。
状況は最悪だった。
あわや戦闘が始まろうとしたその瞬間、怒号が響いた。
「馬鹿もん! この森の中で阿呆なことするでない! ノルス! なんでお前が率先して喧嘩を売っとるんじゃ!」
声とともに現れたのは、高齢のエルフで、声色からして男だろうけれど、判別しづらかった。
「チェルミー、よく戻ってきたの……ポプラに顔を見せてきなさい。客人たちも、一旦は歓迎しよう。神獣様についても儂から話す……それで良いかの?」
ルルーシュは納得したのか、放っていた圧を消して、素直に従う姿勢を見せる。
ノルスケイルも同様に、悪態をつきながらではあったけれど、弓の構えを解き、その他のエルフたちにも武器を下ろすよう指示した。
「里長……ただいま帰りました」
「うむ、そちらの方たちはお主にとって何じゃ?」
「仲間……で、友だちです」
「はっはっは! そうかそうか、それはいい。であれば豪勢に歓迎せねばのう! 改めて、よく帰ってきた」
「……はい」
チェルミーの口から里長と言われた彼は、気さくに笑ってチェルミーの頭を撫でた。
その姿は、レヴィとタニアに村長ジルバスの姿を思い出させた。
レヴィたちは微笑み合って、チェルミーのそばに駆け寄り、それぞれ軽い自己紹介を済ませていく。
「ほう……神獣様の気配がするのう。カエルムと言ったな……獣人種がこの地を訪れたのは実に七百年ぶりじゃ。お主も数奇な運命の下で苦悩したじゃろうが、今は休みなさい。神獣様の封印には時機を選ばねばならん」
彼はさらに続ける。
「ルルーシュ、久しいのう。前に会ったのはいつだったかのう」
「さあね……それにしても何百年経ってもずっと変わんないね、ダン」
「それにしても無茶しよるわ……あんな馬鹿みたいな魔力を放ちおって」
「だって話通じなかったし……ああすればダンが出てきてくれるかなって」
「はぁ……年寄りを労わる優しさもないんか」
一行は目的通り、《トリアル大森林》の秘奥、エルフの里へと辿り着いたのだった。
一悶着はあったものの、とりあえずの歓迎はしてもらえるようで、レヴィたちも束の間の休息を満喫する流れとなった。
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