第16話 ターゲットは?
「あそこ、何号室でしょうか?」
「ええっと、おそらくですが409号室です……あっ!」
インターフォンを何度鳴らしても409号室からは返事がなく、扉は開く様子がない。それに痺れを切らしたようにヒト型のガーディアンが槍を振り上げていた。
モニターから目を話さずに俺は江神さんから受け取ったスマホを取り出し、通話用のボタンを押す。これを押せば一発で外に繋がる仕組みだ。
『はい、江神です』
「朔來です、409号室の住人の情報をすぐにください!! ガーディアンが侵入しようとしています!!」
『……! かしこまりましたっ……!』
電話の先からガサガサと書類を漁る音とパソコンのキーボードを打つ音がする。急いで調べてくれているようだがその間もガーディアンの動きは止まらない。何度も何度も扉に槍をぶつけて壊そうとしている。破られるのは時間の問題だろう。……一体どうしてそこまでするんだろうか。
409号室に外からの侵入者が中にいる?
でもなぜ今急にそれを察知したんだ?
「差形さん、モニターの方をお願いします。俺はプログラムを見ます」
「は、はい……!」
一番自分の目線に近いモニターにプログラムが書かれたウィンドウを表示させる。俺も仕事で使っている開発環境と同じで、操作は問題なさそうだ。スマホをスピーカーにしてデスクに置いて、プログラムをざっと確認する。
コードの検索は江神さんの情報を待つとして、先に中を見てみる。言語も一通り習得済みのもので助かった。実は見たことない言語でプログラムが作られていたらどうしようかと僅かな可能性に怯えていたが、それは杞憂に終わった。
『朔來さん、聞こえていますか?』
「はい、大丈夫です」
『409号室の住人ですが、池戸 禄弥(いけと ろくや)という男性です。ある時期から名前を変えているようで……元はAI製造者の家族を殺害した加害者でした』
「えっ……」
プログラム上で検索の小窓を開き、池戸 禄弥の名をさまざまな表記で検索する。確かAIを作った男の家族で殺害されたのは二人。襲われたのは約二十年ほど前だろうから、たったそれだけの期間で刑務所から出てきたということになるか。適職Aの制度といい法改正が多くてついていけてないけれど、いくらなんでも刑が軽すぎる気がする。
「あった……! target、”Rokuya Iketo”」
アルファベット表記での名前がヒットする。プログラムで使用する値としてその名は書かれているようだった。ターゲットと書かれているその文字をすぐに消していく。こういった単語は他人にもわかりやすいものを選ぶのが基本だ。名前を消せば、文字通りガーディアンのターゲットから池戸 禄弥が外れるという予想だ。
「本当にここだけか……?」
ドガンッ!!
「!!」
他の場所を確認していると、監視していた4階のモニターから大きな音が響く。見るとガーディアンの槍によって扉が壊される瞬間だった。
「差形さん、あれは——」
後ろにいるはずの差形さんに声をかける途中で気がつく。つい先程まであった気配は跡形もなく消えていた。
俺はプログラムを見ることに気を取られすぎていて、差形さんがこの場を去っていたことに気がつけなかった。
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