第12話 ガーディアンとの心理戦

「もうしかしたら、あのガーディアンを移動させられるかもしれません」

「えっ!?」


 トリ型のガーディアンは俺の言葉に反応して鳴き声を上げたように聞こえた。もし反応する部分があるとするなら、”3階のガーディアンはいなかった”という言葉の可能性が高い。


 もしガーディアンたちが俺たちの言葉を音声認識していたとしたら。”ヘビ型のガーディアンに何かあったのだろうか”という警戒をしたと俺には思える。


 そしてその後動かずにいたのは、通信するなど何かしらの手段でヘビ型のガーディアンが無事であることを確認した……。もしそうなら、本物の人間のように、言葉次第で機械の気を引く方法があるかもしれない。

 最初から全て仮設段階だが、試す価値はある。


「俺に話を合わせていただけますか?」


 差形さんが頷いてくれたのを見て、俺はこれからの計画を簡単に話した。



 ガーディアンたちがどのように通信し合っているかはわからないので、単純にガーディアン同士の間に通信を遮断する何かを置いても意味はないだろう。それにせっかく中に入れているのに、外から何かを持ち込む時にガーディアンから攻撃されたら元も子もない。


「では、行きますよ」

「はい……!」


 俺たちはヒト型のガーディアンに近づいて、目の前に立った。彼……と言っていいのかガーディアンの目はこちらを見ているように見える。


「あの、すみません。少しお聞きしたいことが」

「…………」

「聞こえていますか?」


 俺はガーディアンに向かって声をかける。返答は返ってこない……けれど、少し戸惑うように身体は動いていた。声は聞こえているようだ。


「何もおっしゃらないですが……」

「大丈夫です。聞きたいことがあるんです。他の階のガーディアンがうまく動作していないようで……俺、エンジニアなので調べたくて」

「…………」

「止まっているわけじゃなさそうなんですが、どこかおかしいんです。……どうか、教えていただけませんか?」


 チラリと隣に目配せする。すると差形さんも慌ててお辞儀をした。


「お、お願いします……このままじゃ、あのガーディアンが……」


 彼女も一緒に頭を下げてくれる。するとガーディアンはカタカタと音を立てながら首を細かく動かした。道を歩く鳩がする動きに少し似ている。


「……名前とテキショクAヲ入力シテクダサイ。音声デノ入力ガ可能デス」


 突然機械音で合成されたような声が聞こえた。もちろん発信源は目の前のガーディアン。俺は動じないようにグッと拳を握って口を開く。


「朔來創、適職Aは特殊エンジニアです」

「……照合中デス」



 ガーディアンの目が青く光り、ピコピコ……と高い電子音が鳴り始めた。そして数秒後、それは止まる。


「照合が完了いたしました。適職A特殊エンジニア、適職Bエンジニア、朔來創様ですね。我がマスターと同じ適性の人間を心から歓迎いたします」


「え……」


 ヒト型のガーディアンは突然本物の人間のようににんまりと笑い、海外映画の登場人物のように肩をすくめて流暢に話し始めた。

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