chapter13 渋谷区宇田川町②
ハタノ
動きが止まるコトブキに、どうしたんだと、モリオが声をかける。
「よく聞け、モリオ、俺達をマレビトと呼ぶのはヒトや、ヒトがマレビトという呪いを掛けたんや、死を繰り返す事も、ヒトを絶対殺せん事も、でもな、最大の呪いは何やと思う?それはな、マレビトは海を渡れん。いくつかの連なるこの小っちゃな島国に生まれ、千年の生死を繰り返す事や」
鏡子がコトブキに質問する。
「何故、それがわかったの?」
「戦争や、海を渡る戦争が当たり前になった時、俺達も駆り出された。もしかしたらこの国のヒト以外のヒトなら殺せるかもしれない。それこそ最強の兵士や、それがな、海を渡るとマレビトは爆発して死ぬんや」
モリオは不思議そうな顔をする。
「そうや、突然バーンて、破裂して粉々や。船底に何百人とすし詰めで、突然隣のやつが破裂してみろ、地獄やろ?そして、俺達の
「ちょっと待て!」
モリオがコトブキの言葉を遮る。
「おさ?リーダーって事か?マレビトは組織だって集まっているのか?やばいぞ、それ、徒党を組むと人種が違うだけでリンチに遇う国だぞ。不死身の集団なんて反社どころの騒ぎじゃないぞ」
今度はコトブキが遮る。
「戦前の話やし、そいつが勝手にそう言って、会いに行っただけや。お陰で、ヒトに、俺達へのマレビトという認識を持たせる切掛けになってしもうたがな。当時はニュースを伝えるには新聞くらいやし、戦争も負け戦続きでそれどころやないし、我関せずで貫き通せば、後はシャンシャンや」
「その長は今、どこに?」
モリオの言葉を受けてコトブキは鏡子を見る。
「死んだ」
コトブキに目線を向けられた鏡子が口を開く。
「死んだ?」
「言うたやろう、不死かもしれんが、不滅やないって。
昭和20年頃、そいつは長崎の市街地に、小さな宗教団体の教会をかまえとった」
コトブキは鏡子の腕をとり、昭和二十年八月九日という刺青を見る。
「そこに原爆や、教会ごと、跡形もなく消し飛んだ。宗教団体の名前は秦乃子ら(ハタノコラ)、教祖の名前はハタノ」
驚く鏡子。
「ハタノ?私をモリオのうちに強盗に誘ったのはやつの名前もハタノよ」
「手の甲に十字架あったか?」
「あった、でも片腕だった」
マレビトは死ぬと体がリセットされる。復活したら本物のハタノなら刺青は無い。まあ、刺青ならまた入れることも出来るが...
コトブキは目を細める。
「まあ、間違いない。あの地獄を生きぬいたか」
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