蝶飼いの男

TAN

第1話

 疲れ果てた仕事帰り、彼は一頭の蝶が目の前を横切るのを目にした。


 蝶の羽は白く、見た目からしてモンシロチョウだった。

 夕方の花壇で、その蝶はひらひらと元気に舞っていた。



 彼はその場で立ち止まり、しばらくモンシロチョウを眺めていた。


 純白の羽が誘惑的に踊り、彼はその蝶がタンポポの蜜を吸うのをじっと観察した。


 彼がそっと近づくと、その影に反応したのか、蝶はまたひらひらと飛び始めた。



 蝶は向かい側の歩道まで飛んでいき、彼はやがて姿を見失った。


 彼はふいと元の道へ振り向き、再び歩き始めた。


 何処にでもいるような、ごくありふれた蝶ではないかと、彼はため息をついた。


 しかし、彼の頭の中では、いつまでもその蝶の飛ぶ姿が思い起こされていた。

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