第8話:私、テレパスだから・・・。
「次の朝、目覚めたら・・・って言うより、結局昨夜僕は一睡もできない
ままだった。
なにもなくても女の子が横で寝てるってだけで正常じゃいられれない。
パイパイはまだ僕の背中にくっついたまま眠っていた。
いつまでもパイパイの寝顔を見ててもしょうがない。
僕は彼女を起こした。
まだ眠そうにしてるパイパイを連れて下のリビングに降りて行くと姉ちゃんが
すでに起きていて朝食の支度をしていた。
「おはよう、姉ちゃん」
「おはようございます、お姉さん」
「おう、おはよう、王子様、おはようパイパイ」
「やめてくれる?その王子様っての、バカにされてるみたいだから」
「あの私はバカになんかしてないよ・・・私を助けてくれた大気は
私の王子様なだもん・・・王子様って呼んでもいいって言ってくれたし」
「んん、まあパイパイはいいとして・・・姉ちゃんは絶対僕をバカに
してるよな」
「私はいいよね、王子様って呼んでも・・・?」
パイパイは不安げに俺に確かめた。
「パイパイは何しても何、言っても許しちゃうから」
「さ〜さ、ふたりとも早く朝ごはん食べて」
「私も今日は大学休めないから、バイトもあるし・・・」
そうか、今日はパイパイを連れて学校へ行くんだった。
そう言うことならと姉ちゃんは取っておいてた高校時代の制服を
パイパイに貸してくれた。
制服なんてそんなの学校卒業したら、普通処分するだろう?
なんで取っといたのか意味が分からん。
彼氏ができた時のためか?そんな趣味の男もいるし・・・僕もだけどな
けど、まあ制服が残っていて幸いだった。
姉ちゃんとパイパイの身長、体型はさほど変わらなそうだったから、いけるだろう。
朝食食ってから僕は制服を着たベルを連れて最寄りの駅から電車に乗った。
制服なんか着たらパイパイは最高最強の必殺おやじ殺しだな。
めちゃ初々しい・・・初恋の兆しって感じ。
頭のパイナップルどうにかなったらいいんだけど・・・。
電車なんて妖精には珍しいんじゃないかって思ったけど、とくにこれと
言った反応もなくパイパイは大人しく電車に乗っていた。
もしかしたら、人間界に来たことがあるのか?
電車なんて実は見慣れてるのかも。
それより乗客の男どもの視線が・・・全員パイパイに注がれてる。
嫌な空気。
まあ、ちょっとした奇異の目にさらされはしたが、それでも声をかけてくる
ような失礼な乗客は誰もいなかった。
まあ目まぐるしい世の中、見るには見るがみんな自分のことが精一杯で他人
のことなんか関心ないんだ。
僕らは高校の最寄りの駅で降りて駅からはパイパイを連れて学校へ歩いて向かった。
他の生徒より少し早めに学校についたので、ひとまずパイパイを教室へ。
「僕はここで授業受けてるから、パイパイはその間、図書室か学食へでも行って
てくれる?」
「なるべくなら知らない人と話さないほうがいいからね?」
「いい?昨日も言ったけど、おとなしくしててよ・・・」
で、僕は最初に図書室へパイパイを連れて行った。
「退屈だったらここにある本読んでて・・・」
パイパイは本棚の本を一冊取るとページをめくった。
「げ〜っ・・・文字ばっか・・・漫画ないの?」
「絵本ならあると思うけど漫画はな・・・」
「本はダメか・・・じゃ〜パイパイ学食へ行ってみるか?」
で、パイパイを連れて学食へ。
「あのさ、好きなもの注文して食べていいからね、お金はいらないから」
「王子様・・・あの文字読めないってば」
「カベにかかってる写真みて適当に注文すればいいから」
「そこに自販機もあるからね、喉が乾いたら好きなものなんでも飲みな」
パイパイは困った顔をして、それでも分かったってうなずいた。
まあ、僕もいい加減。
パイパイは地球での、ちゃんとした生活の予備知識すら教えてないのに彼女に
無理押し付けちゃって、そりゃ戸惑うわな。
「あのこれから授業?」
「そうだけど・・・」
「心細くなったら、話しかけていい?」
「話しかける?・・・ってパイパイはここにいるんだよ」
「教室までついてきちゃいけないからね?」
「ついていけないから、話かけてもいいって言って聞いてるの」
「言ってる意味が分かんないんだけど」
「あのね、私テレパスだから・・・王子様の心に話しかけられるんだよ」
「え〜|まじで?・・・な妖精ってそんなことができるんだ」
「じゃ〜スマホなんかいらにじゃん・・・」
とぅ〜び〜こんて乳。
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