奇妙なキャンプ場⑩



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「…───来ましたか」


俺が昨夜のことを全て話し終えたあと、しばらく黙っていたオーナーがぽつりとそう言った。

その言葉に俺が不思議に思っていると、オーナーが話を続ける。


「いやね、昨日お客さんに着物を着た女性のことを言われた時から嫌な予感はしていたんですよ。何せここ、ところなので。

でもそれを言ってしまえばお客さんも気分を悪くしそうだし、言わなかったんですが」


そう言うオーナーの言葉に、一方の俺は少し顔を強張らせる。

…やはりあれは、昼間の女性も幽霊で間違いなかったのか…。

それなら昨日の薪を買った時点でそう言って貰えれば、あの時にすぐテントを片付けて帰ったのに。


まぁオーナーも商売だから、少ない客を逃したくないんだろう。

俺はそう思うと、何気なくオーナーに問いかけてみる。


「もしかして、このキャンプ場で亡くなった親子…ですか?」


俺がそう聞くと、オーナーが声のトーンを落として一言呟いた。


「…実はこのキャンプ場…昔があったんですよ」

「!!」


さ…殺人?


そんなオーナーの言葉にまたしても額に冷汗が流れる俺。

こ、この自然豊かな地で…殺人?


「…え、あ…それって、いったいいつの…」

「……」


そして俺が思わず動揺しながらそう問いかけると、一方のオーナーがその真剣な表情を、ふっと崩して言った。


「なーんてね!」

「…え?」

「ただの心霊スポットだよ。キャンプ場で殺人なんて、ナイナイ!」


オーナーはそう言うと、その後「またお待ちしてます」と気さくに笑った。






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