第2話 超超高齢化社会の部活動時間
ついに超超高齢化社会に突入したわが国。
政府は、何十年も前から、来たる超超高齢化社会の介護人員不足の解消に向けて『AIおよび最先端技術を活用した異次元の高齢者介護政策』なる政策に取り組んできたが、今のところ全く成果が出ていない。
成果が出ていない理由について、毎年わが国のどこかで発生する大地震や災害の復興で手いっぱいだったとか、少子化による相次ぐ大学の倒産で有能な科学技術者が育たず国内の科学技術力が停滞しているとか、そんなことを言葉のチョイスを間違え、へらへらしながらなんとか党のおじいさんとか、よぼよぼの総理大臣とかが言っていて、それがニュースで流れ、SNSで炎上して、謝罪して、辞職している。
この前も、日曜日のお昼にやっている討論番組に出演した次世代自由党のおじいちゃん議員が、なぜ20年前からわが国のデジタル化は停滞してしまったのか、という議論中に「私はスマホに脳トレとかソリティアのアプリを入れたりして、毎日スマホを触るようにしてデジタル化に対応できるようにしてるんだけどもね。世の中の大半のジジババは時代についていけてない。ガラケーで終わっちゃってるんですよ。そういうジジババが今や国民の半分ちかくになっちゃってる。だからね、わが国はそういったデジタル化についていけない時代遅れの高齢者にも配慮した優しい国づくりをしているんです。停滞停滞って言いますけどね、これは国民のための政策の一環であり、失敗ではないんですよ」とか豪語したらしく、それが一部切り取られてニュースになり「自分も高齢者の癖に高齢者をバカにしてる」とか「スマホで脳トレとか、お前も時代遅れ」とか、いろいろ言われて、今まさに炎上していた。
ともかく、少子化対策と超超高齢化社会対策の政策失敗で、わが国は衰退の一途をたどっている。
話を戻せば、異次元の高齢者介護政策は未だ継続中という体で、政府の失敗のしりぬぐいを私たち高校生がさせられているのである。
どういうことかと言うと、深刻の極みに達した高齢者介護の人員不足を補うため、文部科学省は数年前から高等学校の必修科目に『高齢者介助』を組み込んだのである。
これにより、以前は部活動の時間だった早朝と放課後が介助実習の時間に変わり、高校生たちは近隣の高齢者介護施設で朝な夕なに介助及び補助業務をしなければならないのだった。
そして私も橘も今年の春から高校生。入学早々、うちの高校の近隣にある寿老人ホームで介助実習が始まって、ひと月以上が経過していた。
何を隠そう、この寿老人ホームは『ヤバいお年寄りが多い老人ホーム』として、県内の高校生たちの間では有名なのである。
寿老人ホームは、国の『年金返上型老人ホーム』に指定されていて、通常の入居契約の他に、自分が貰うべき年金の全てを国に返上すれば無償で入居できるという年金返上入居契約の仕組みもある。
その年金返上契約で入居した高齢者たちは元気が有り余っていて、しかも国のために自分が犠牲となって、本来貰うべき年金を返して老人ホームに入居してあげているという気持ちの人が多くいて、施設に対する不満たらたらなのだった。
そして厄介にも、私たち高校生が介助を行うのは、その、年金返上型契約で入居したような元気な高齢者たちなのであった。
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