サ終寸前のガチャゲームに神様として召喚されて救うことになりました

平井甲殻類

カミサマはじめました(1)

 かつて人気を誇ったガチャゲーム『神魂 ゴッドソウルズ』。

 通称ゴッソー。


 2年ほど前に大々的な宣伝とともに鳴り物入りでリリースされると、あっという間に大ヒットしてセールスランキング上位の常連入り。


 広大で探索しがいのあるハイクオリティなオープンワールドマップと魅力的なキャラクターたちが受け入れられて、SNSや二次創作の分野でも盛り上がり、一躍覇権ゲームの座に駆けあがった。


 しかし、マンネリ化と数々の炎上事件が足を引っ張り、3年目を迎えようとしているいま、早くもサービス終了の声が囁かれるほど人気が凋落してしまっている。


 その『神魂』の真の運営に俺、河金ゆうた(30)は召喚されていた。


「カミサマ、どうかボクたちをお助けくださいぽよ!」


 そう言って額を地面にこすりつけているのは、丸っこい鳥みたいな愛らしい動物。マスコット的クリーチャーの『ぽよよん』だ。


 似たようなのが3羽もいて、全員で頭を下げている。


「突然召喚されて困惑するのは当然ですぽよ。けど、カミサマには『神魂』運営の決定権を託すので、あと1年間サ終しないように立て直してほしいぽよ!」


 俺が『神魂』を運営して立て直す!?

 サ終を回避しろだって!?




 状況を整理しておこう。


 俺は昔からヘビーゲーマーで、家庭用PCスマホ問わずにあらゆるゲームをやってきた。


 ガチャゲーにも何度もハマり、課金しすぎて借金まみれになり自己破産寸前までいったこともある。いわゆる廃課金勢だ。好きなだけ見下してくれ。


 最近では反省し、借金を返した後は微課金勢としてゆるく楽しむようにしている。

 好きな言葉は『2枚抜き』、嫌いな言葉は『すり抜け』。


 ようするに、ただのゲーマーである。


 ゲーム運営の経験もなければ、業界の知識がある評論家でもない。

 SNSで偉そうに運営方針に文句を言ったりお気持ちを表明したりするが、根本的にド素人だ。


 そしてなにより、俺はもう『神魂』をプレイしていない。とっくに引退してる。


 そんな俺になぜ白羽の矢が?


「豊富なゲーム経験があるとか、廃課金者と微課金者の両方の気持ちがわかるとか、多角的に検討した結果、あなたがカミサマにふさわしいという結論になったみたいですぽよ!」


 みたい、ってなんだよ。

 なんだかテキトーの匂いがぷんぷんするぜ。


 あっ、まさか……あんたら自分の運命を握るカミサマをガチャ召喚で適当に選んだんじゃないだろうな?


「そんなことないぽよ? ちゃんと選んだぽよね?」

「そうぽよ」

「ぽよぽよ? 誰が選んだぽよ? ボクじゃないぽよ?」

「あたしでもないぽよ?」

「ぽよよー?」


 このぽよ連発、ちょっと原作を思いだした。

 こいつらがストーリーに出てくると複数体でぽよぽよ言うもんだから話が進まないんだよな。


 まあ、テキトーに選んだってことはよくわかった。


 ここ最近SNSでは運営への罵詈雑言が飛び交い、ネガティブなワードが何度もトレンド入り。引退者続出、売り上げも激減してサービス終了決定も間近。


 そんな噂を聞いてはいたが、一時期は覇権ゲームとまでいわれた『神魂』が俺にすがりつくほど落ちぶれているとは……。

 栄枯盛衰の激しい世界とはいえ、なんだか寂しくなるな。


 運営型オンラインゲームは、買い切りのパッケージゲームとちがってサービス終了すればもう2度と遊ぶことはできない。


 かつては大勢に愛された人気ゲームが1つこの世から消えてしまうのだ。


 ゲームをこよなく愛する1人のゲーマーとして、こんな事態を見て見ぬふりできるだろうか?


 俺はぽよよんズを見つめて、こう言った。


「俺明日も朝から仕事で忙しいから帰っていい?」

「ぽよよよ!!??」

「帰らないでほしいぽよ!!」

「カミサマ、ボクたちを見捨てないでぽよ!!!」


 短い手? 翼? をばたばたさせて慌てふためくぽよよんズ。


「うっせ、俺は働いて課金用の金を稼がなきゃ生きてはいけねーんだ! 他人のサ終なんかにかまってられるか!」


 だいたい売り上げが激減したゲームの立て直しなんて無理だよ。成功例を聞いたことがない。

 ゲーム運営のプロでも無理なんだから、俺みたいなド素人にできるわけがない。


 ぽよよんズはまるまるとした顔を寄せ合ってひそひそ話をはじめた。やがて密談の結論がでたようで、こっちに向き直った。


「1億」

「!?」

「サ終を回避してくれたら、報酬として1億あげますぽよ」


 1億……!

 それだけあれば今ハマってるロボットSLGのガチャで全キャラ完凸できるぞ……機体ガチャも余裕でぶん回せるな……!


 いや、待てよ。話がうますぎる。


「レンテンマルクとかジンバブエドルとかガ〇〇コイン的なクズマネーじゃないだろうな?」

「JPYですぽよ」

「JPYっ……!」


 JPYとは日本円のことだ。念のため。

 最近ではJPYも順調にクズマネー化しつつあるという噂もあるが、それでもまだガチャ課金にはちゃんと使える。


 一応、条件を確認しておくか。


「立て直すっていっても、具体的にどうすればいいんだ?」

「これから1年間、3周年を迎えるまでサービス終了しないようにしてほしいのですぽよ」


 1年間の延命措置、か……。

 たったの1年でいいのか。

 よし!


「任せろ、俺が『ゴッソー』を立て直してやるぜ!」


 気合いの声をだしたが、なぜかぽよよんの反応が薄い。


「どうした?」

「ゴッソーは死語ですぽよ。今はみんな『じんたま』って呼ぶぽよ」

「え、そうなの?」


 たしかリリース時には公式SNSが自らゴッソー呼びしてた気がするんだけど。さっそく置いてかれてる気分だ……。まあいい。


「やってやるぜ『神魂』!」


 そんなわけで、瀕死のガチャゲー世界のカミサマをやることになった。

 目標は1年間のサービス継続。

 まあ楽勝だな


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