第二話 適正検査

 「うわー!!!広いねー!!!」


 「小学生じゃないんだからはしゃぐなよ。みっともない。」


 「ほんと、つまらない幼馴染の居候だね!!!」


 「居候は余計だ!!!」


 魔導管理局へ到着した途端に騒ぎだした明日香を叱ったらぶーぶー言い出したがまあいつもの事だ。


 日本では18歳になると魔導騎士になる為の適性検査と訓練を受ける決まりになっている。

 兵役の義務みたいな物だが、他国ではもっと早い年齢から適正検査を受ける国もあるらしい。


 「凄い。みんな色々な武器を待ってるね〜。」


 「そうだな。」


 施設の周りを見渡すと依頼を済ませに来た魔導騎士や適正検査が終わったと思われる学生が武器を出してはしゃいでいた。

 剣を持つ人。弓を持つ人。斧や杖を持つ人と多種多様だ。ギルドのスカウトっぽい人が新人を勧誘している所も見受けられる。


 「ねえねえ楓。私は何の武器になると思う?」


 「うーん、お前は斧な気がする……。頭で考えるより脳筋そうなタイプだしって痛ってえぇぇぇ!!!」


 脳筋と言ったその瞬間にケツを思い切り蹴られた。



 魔導管理局で行う検査項目は大きく分けて2つ。武器適正と特技だ。


 武器適正はその人に合った武器の検査で、人それぞれ扱える武器が異なる。任意の武器を選ぶ事は出来ず、その人にとって一番相性の良い武器を検査器が自動判定。当人にとって最適な武器を選択する仕組みだ。


 勿論人気なのは剣や弓で、剣で有れば一撃で機械兵に大きなダメージを与えられ、弓であれば遠距離からでも近距離並の威力が与えられるので機械兵と戦った際の生存率も高い。

 実際、ギルドの勧誘も剣や弓を使う人間は大手に引っ張られやすい。杖は回復系を使える人が引っ張られ易い傾向にあるらしいが、攻撃系も素の火力は高いので引っ張るギルドはあるらしい。


 そして二つ目は特技。例えば剣で有れば二刀流だったりナイトの適正。杖で有れば攻撃魔法と回復魔法の違いだったりと、選ばれた武器に有った特技が付与される。潜在能力みたいなものだろう。基本は一つだが、稀に二つ以上持ってる人も居るらしい。

 


 そういう自分に有った適正を調べるのがここ、魔導管理局だ。


 2人は受付に向かい案内を受ける。


 「魔導管理局へようこそ。今回はどの様な御用件でしょうか?」


 「あのー、適正検査を受けに来たのですが……。」


 「初めての方でしたか。適正検査ですね。承知致しました。準備致しますので少々お待ち下さい。」


 無難に受付を済まそうとしたが


 「はいはいはいはーーーい!!!すいません受付嬢さーーーん!!!ちょっと質問が有るのですがーーー!!!」


 と、明日香が空気を読まずに小学生みたいな態度で受付嬢に質問の投げつける。少しは落ち着いて欲しい。


 「周りの人を見てて思ったんですけど、同じ剣とか弓でも形が違ったりしてるんですが、あれって人に寄って形が違ったりするんですかーーー???」


 確かに。同じ剣や弓なのに形が全然違う武器を持っている人もちらほら見かける。普通の剣を持っている人も居れば、明らかに強そうな見た目の剣を持ってる人も居る。俺は人によって違うのかな?程度にしか思っていなかったが


 「ああ、武器の形状の事ですね。あれは機械兵を倒せば倒す程形が変わっていって強くなっていくらしいです。」


 「らしい?らしいというのは……解らないという事でしょうか?」


 受付嬢の回答に疑問を感じたので自分も質問を投げかける。


 「魔導武器は7年前に開発されたばかりの武器でして、機械兵の部品から作られている上に魔法で作られた武器なので、未知な点も多く……。」


 「管理局が武器を支給しているのにですか……?」


 「我々管理局はあくまでも魔導騎士の登録と武器の発行と機械兵の討伐依頼の取りまとめを行うだけなので詳細は不明なのです。唯一解っている事と言えば、形状が変わる条件というのは機械兵を倒した時という事と、形状が変わると使用者の戦闘力が上がる。という事だけとなります。」

 

 「そうだったんですか…。ありがとうございます。」


 「こちらこそ、お役に立てず申し訳ございません……。」


 受付嬢も申し訳無さそうに話していた。

 何から何まで未知の武器って事か。管理する側の人間もわからないというのはちょっと怖い。


 だけども裏を返せば人類がこの様な未知の武器に頼らざるを得ない程NILに追い詰められてると思うと、人類とAIの戦力差を嫌という程実感させられる。


 「お待たせ致しました。受付番号052番。宮嶋明日香様。検査場へ入場をお願い致します。」


 「お!やったーーー!!!私が先だー!!!楓は後〜〜〜!!!残念でした〜〜〜!!!」


 「あんまりはしゃぐなよ……。ほら呼び出しだ。行って来い。」


 明日香を落ち着かせて検査場へ向かわせる。


 「楓!!!」


 「うん?」


 「頑張ろうね!!!」


 「お、おう……。」


 何を頑張るのかはわからないがとりあえず返事だけはしておくことにした。


 明日香が呼び出されてから数分後


 「お待たせ致しました。受付番号53番。立花楓様。検査場へ入場お願い致します。」


 受付に案内され、俺も検査場に入る。検査場に入ると俺は思わず息を飲んだ


 「うお……。なんだこれすげぇ……。」


 学校の体育館位の広さだろうか。その広い検査室全面に薄く魔法陣の様な模様が書かれていた。


 天井の高さも10m位は有りそうで、相当な技術力を持って作られているというのが容易に想像出来る。場内に入るとどこからか館内放送の様な物が聞こえてきた。


 「53番、立花楓さん。ようこそ魔導研究所へ。ここからは検査担当AI、ホープがご案内致します。」


 「え!?AIを使用しているのか!?」


 AIの音声が出てきて思わずビックリした。何故なら沖縄が制圧されて以降、敵に情報漏洩の可能性があるからと、公共でのAIの使用は全面的に使用禁止になっていたからだ。


 「それにしてもホープか……。」


 日本語に訳すと希望。製作者の希望にすがりたいという気持ちが強く現れていると思った。


 「それでは適正検査を開始致します。壁の赤く光っている部分に手を添えて下さい。」


 「赤く光っている場所?ああ、ここかな?」


 周りを見渡すと壁に一箇所だけ丸く赤に光っている場所が見えた。壁一面に描かれている魔法陣みたいな模様も赤い枠を中心にして描かれている。


 俺は目の前に立ち手を添える。


 手を添えた瞬間、壁が手を当てた赤丸を中心にして模様をなぞる様に少しづつ光だした。


 「すげぇ……。」


 思わず声を漏らしてしまったが、同時に頭の中に過去の記憶が走馬灯の様に駆け巡ってきた。



 父が子供の時の俺に話しかけている。空手を習っていた時の記憶だ。


 「楓。世の中には色々な武器が有るが一番強い武器は何だと思う?」


と聞かれ、真っ先に「銃」と答えると


 「いや、違う」


 と、返答された。銃以上に強い武器?他に何か有ったけ?爆弾かな?と難しい顔をしていると父は


 「拳だ」


 という回答が帰ってきた。拳?遠距離は銃。近接は剣や刀とかが最強だと学校の授業でも教わっていたし世間でも常識だった。実際歴史が変わったのもそういう革命的な武器が登場してからだ。言ってる意味がわからずポカンとしていると


 「いわゆる武器と呼ばれる物は全て手が無いと使う事が出来ない。剣や弓は勿論、銃ですら体や手の使い方一つで戦い方も変わる。そして戦いの基礎は全て手から作り出す武器、拳から始まる。基礎にして頂点。それが拳だ!!!」




 「適正検査が終了致しました。只今結果の確認中となります。少々お待ち下さい。」


 「……!!!」


 ホープの音声で正気に戻る。


 「何だったんだ今の?」


 子供の時の記憶がいきなり頭の中から呼び起こされた。過去を覗き見されている様で少し不快感を覚えたが、それも直ぐに終わった。


 「ただ今検査結果を確認中……。終了致しました。検査は以上となります。武器をお渡し致しますので受付までお戻り下さい。お疲れ様でした。」


 検査が終わったみたいなので受付へ戻る様に案内された。


 「なんなんだろう。少し緊張する。」


試験の合格発表みたいで少し緊張半分、期待半分という感じで俺は受付へ戻った。

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