警備型ロボット KR-09

 俺とザイドとエナとアヤは、急いで管制室へ向かうことにした。ザイドの部屋の外で、靴の電源を入れ、行き先を伝える。


 この靴のおかげで一番上の階にある管制室にだってあっという間に到着できるはずだ。

 発進した瞬間、ザイドの身体が勢いに追いつかず、思わず半そりになって「うふぉあっ!」と聞きなれない声を上げたのを、俺はしっかり聞き逃さなかった。


 隣でエナが肩を震わせて笑っていたのは、言うまでもない。5歳のアヤですら使いこなしているのだ。

 もちろんアヤのような幼児にはより安全に使えるように補助部品が付いているが、大して変わらないだろう。


 居住エリアを抜けて、中心部まで来ると、空を演出する液晶パネルにひび割れが入り、一部は広場まで落ちて粉々だった。もちろん照明は消えているが緊急用が辺りを照らしている。その下の薄暗い広場ではロボットが人を守っている姿がちらほら見える。


 背中の、人間でいう肩甲骨辺りから半球状の防御壁がせり出して広がり、中の人間を守っている。それは旧世界の「かまくら」にそっくりな見た目だ。外側は滑らかで、海中の圧に耐えるための硬質な素材。

 たしか、内側はほんのりと温かく、空間の中央には大人が数人が立ってもゆとりがあるほどの広さがあるって聞いたことがある。

あの中にいれば安全だ。今一番危険な身に置かれているのは間違いなく、俺たち。


 くそ、俺の部屋にいる監視ロボットを連れて歩けばよかったのか? だけどそれは父さんに見られてて嫌だし、まさかこんなことになるなんて思っていないだろう?

 監視ロボットを連れて歩く人間なんて俺だけだし尚更嫌だ。


 そんな光景を目の当たりにしながらも、

1階2階までの坂道もスイスイ登っていく。心配してた船の揺れも起きなかった。


 ただ、ザイドのようなナチュラル思考の、つまり、普段自分の足で歩くタイプの人間には酔いを感じるようだ。


「おい、大丈夫か?」


「うう……だ、大丈夫」


 管制室の入り口が見える角で、俺はザイドの背中をさする。うなだれながらも胸でしっかりと小さな鉢植えを抱いている。

 どうやら芽が出て数日くらい。

 俺には何の植物かは分からない。


「それ、持ってくる必要あったのか?」


「うんとても大事だよ。一番僕のことを心配してくれてる。僕がいなくなったら悲しむんだ」


「そ、そうか」


 ザイドの植物愛には頭が下がる。


「ザイドにいちゃんえんえんだね。よしよし」


 アヤはどこかで見た親の真似をしているのだろうか。それともエナにそうしてもらっているのかもしれない。ザイドの頭を撫でて、心配そうに見つめている。


「ありがとう、アヤちゃん」


 ザイドは気持ちが悪いのをこらえながら、アヤを見つめて微笑んだ。アヤはえへへ、と嬉しそうにしている。


 すると、管制室入り口左右で仁王立ちする2体のロボットの目が青から赤に変わった。

 2体のロボットが握りしめている棒が何やら危なっかしく、こちらに歩み寄ってきた。どうやら俺たちの存在に気がついたらしい。


「ここから先は立ち入り禁止です」


 そう言ってじりじり近づいてくる。


「あ、あー俺たちは呼ばれてきたんだ、な?」


「そうよ、パパと約束しているわ」


 俺は手前にいたエナを庇うように立つ。


「立ち入り禁止です」


 対話型ではないのか? どんどん怒りを増しているようにも見える。俺とエナの真ん前に立ち、燃えるような赤い目で見下ろしてくるその体は、支援型ロボットとは対照的で全身黒く、腕にはKR-09と型番が赤で書かれている。正直腰が抜けそうなくらい怖い。


「立ち入り禁止です。お引き取りください」


 とうとう声が変わった。

 低く太い声だ。間違いなく穏やかではない。そしてロボットは両手で棒をグッと構える。この棒の名前は高機能警備スティック。

 使っているところは見たことないが、船内をパトロールしている警備型ロボットが全員持ち歩いている。それが今俺の前に向けられている。棒の先端がビリビリと電流を走らせ始めた。


「やばい……」


 その一瞬で全身に冷たい汗が流れ落ちる。

 電流だ。強力かもしれない。


「すまない君たち! その子たちの立ち入りを許可するよ」


「立ち入り許可」


 室長の言葉でロボットの目の色がパッと青に戻り、元の立ち位置へ踵を返す。


「パパ、ちゃんと許可出しといてよね。もう、びっくりしたんだから」


「ああ、そうだね、そう思っていたんだけどなかなか離れられなくて。怖い思いをさせてしまって、申し訳ない。さぁ、ユウジンくんとザイドくんは初めて入るよね。着いておいで」


 こうして俺たちは管制室に招かれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る