第1章2話:友人
「ふう……」
さて、休憩ができたので営業を再開しよう。
工房に戻る。
カウンターで椅子に座りながら、店番をする。
30分ほどが経過したとき……。
店の玄関がガラリと開いた。
(お客さんが来た!!!)
と思い、ラノックは即座に立ち上がった。
「いらっしゃ――――」
いらっしゃいませ、と言おうとした口が止まる。
なぜなら来店してきたのが、見知った人物であったからだ。
友人の女性―――フィオネ。
20歳。
身長162センチ。
青い髪をツインテールに
青い
白いミニスカート。
腰には一本の剣を携えていた。
ラノックとフィオネは同じギルドに所属していた
4年以上の付き合いである。
「なんだ、フィオネか」
とラノックはつぶやいた。
「なんだ、とは何よ。久しぶりに会ったのに、ぶしつけな挨拶ね」
とフィオネが顔をしかめる。
ラノックは尋ねた。
「ギルドの仕事はどうした?」
ギルドとは、戦士ギルドのことである。
民間の兵士として治安維持に勤める組織。
それが戦士ギルドだ。
フィオネは戦士ギルドに雇われている身だ。
ラノックも、かつては
まあ半年前に追放されてしまったが……
フィオネのほうは追放されていないので、現在は仕事中のはずである。
「ああ。戦士ギルドは辞めたわよ」
とフィオネはあっけらかんと答えた。
「や、辞めただと!?」
「ええ」
「まさか、お前も辞めさせられたのか?」
「いいえ。自分から辞めてやったのよ。あのギルド長にはついていけないわ。いろいろ思想がめんどくさくて」
なるほどな。
新任のギルド長は、
しかしそういう人間は、同じ
フィオネはため息まじりに言った。
「というか、そんな
「そもそも来てほしいとは頼んでないが」
「ふふ。そう言って、本当は来てもらえて嬉しいくせに」
フィオネが得意げな笑みを浮かべる。
ラノックは答えた。
「まあ嬉しいか嬉しくないかって言うなら、嬉しいな」
「あら。素直じゃない?」
「とんでもなく暇してたんだよ。見ての通り、他に客もいないしな」
とラノックは肩をすくめた。
「ふ~ん。確かにあたし以外に客はいないようね。
「いや、いつもだぞ」
「は?」
「この店を開いて以来、客はゼロだ。お前を除いて」
「えええええええぇーー!?」
とフィオネは驚きに叫んだ。
彼女は問いかけてくる。
「そ、それって大丈夫なの!? もう開店からそれなりに経ってるでしょ!?」
「まあ、店をオープンして1ヶ月ぐらいは経ったな」
「ええと、つまり初月の収益はゼロってこと? いきなりコケてるじゃないの」
「うるせーな。ここから巻き返すんだよ。今に見てろ。客が
「はいはい……」
フィオネにあっさり流された。
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