第2話 異邦者のマサムネ

「うそ…マジで戦国時代…?」


風が吹き抜ける。どこか懐かしくも新しい匂いが鼻をかすめた。草の香り、炊きたての米、薪が焼ける匂い。そして、土と血の混じった重い空気。


トーマスはまだ信じられないまま、足元の土を見つめた。スマホを取り出す。画面は映るが、当然、圏外の文字。時刻表示だけが現実味を放っていた。


「これ、ドッキリ…?いや、VR?それとも夢…?」


動揺を抑えるように自分の頬をペチンと叩く。痛い。夢ではない。現実だ。


「とにかく…人がいる場所を探さなきゃ…」


歩き始めて数分、竹林を抜けた先に農道のような小道が現れた。その先で、二人の農民風の男たちが何かを担いで歩いている。


「す、すみません!あの、ここは…どこですか?」


恐る恐る声をかけると、男たちは驚いた顔でトーマスを見つめ、すぐにお互い顔を見合わせた。


「な、なんだあの髪の色…」

「異国の者か?それに、妙な装束を…」


自分がTシャツにジーンズ姿であることを、今さらながら思い出した。


男たちは警戒するように後ずさりながら叫んだ。


「おい!誰か来てくれ!変な奴がいるぞーっ!」


「ちょ、ちょっと待って!違うんだ!俺は…俺はただ…!」


トーマスの言葉など通じるはずもなく、数分後には周囲の農民がわらわらと集まり始めた。竹槍や鍬、鎌を持って、彼を囲むように立ちはだかる。


「名を名乗れ!何者だ、お主!」


一人、頭に鉢巻を巻いた中年の男が、トーマスに詰め寄る。


「な、名前は…トーマス、トーマス・A・マサムネっていいます!」


言った瞬間、ざわっ、と周囲が騒然とする。


「まさむね…?」

「伊達様と同じ名…」

「それにしても、顔立ちは異国…だが、目の奥に侍の光が…」


トーマス自身、意味がわからなかったが、なぜか“政宗”という響きに反応したらしい。混乱の中、中年の男が、ふっと口元を緩めた。


「よかろう。斬り捨てるには惜しい。お主を伊達家に引き渡そう」


「だ、伊達家…?」


その名にトーマスの胸が高鳴る。


「案内する。…着いてこい、“トーマス・マサムネ”」


まるで、運命に導かれるように、トーマスは歩き出した。

目指すは――独眼竜、伊達政宗の元。

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