第19話 ドラゴンの脅威
ザイの口元に不敵な笑みが浮かぶ。魔力が渦巻き、周囲の空気が震えた。
「まさか、リィナの協力者がこれほど科学を使いこなすとはな。だが、それならそれで面白い。いいだろう――魔法の素晴らしさを、その身で知るがいい!」
イオリは眉をひそめ、端末の画面を操作しながら目の前の異様な光景を見つめている。
肌に感じる気配だけでなく、数値を見てもリィナに測らせてもらった魔法との格の違いを実感する。
「リィナ、あの時手を抜いていたね」
「当然でしょ。誰が学校で本気の魔法をぶっ放すって言うのよ」
「その割には疲れてヘトヘトになっていたみたいだけど」
「あんたがじっくり見ていたせいでしょ!」
「理由になってないと思うんだけど!?」
「お前たちはまだ知らない。科学が優位に立つこの世界でも、道さえ開かれれば――魔法は無限の力を発揮する!」
ザイの両手が空に掲げられ、空が共鳴するように割れ始める。黒い魔法陣が幾重にも重なり、そこから赤黒い光が溢れ出した。リィナは目を見開き、叫んだ。
「まさか……召喚魔法!? この世界でそれを――!」
「そうだ、それもただの獣ではないぞ。お前も知識では知っているはずだ。魔法の世界で最も強大な竜の一つ。この世界では不十分となるかもしれないが、それでもお前達に魔法の素晴らしさを分かってもらうには十分な物となるだろう!」
轟音と共に大地が裂け、巨大な爪が地面を突き破る。続いて、闇を切り裂くように長い首と無数の鱗を持つ巨大な体が出現した。森の木々を悠に超え、禍々しい赤い瞳が二人を睨みつける。
「……デカすぎるでしょ」
イオリが呆れたように小声で言う。だが、実体というにはやや陽炎のように揺らめいて見えた。
それはザイも織り込み済みだったようで不服そうに鼻を鳴らした。
「ふん、やはり不完全になったか。だが、これだけでも分かってもらえるはずだ。バハムートだぞ! かっこいいだろう!!」
「あ……かっこいいかな。ちょっと近づいて見てみよう」
「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 狙われてるのよ!」
リィナがイオリの背中を強く引っ張ると同時に、さっきまで立っていた場所をバハムートの攻撃が薙ぎ払った。
「ふん、勘の良い奴らだ」
ザイの見上げる空に、リィナはイオリを連れて舞い上がっていた。
「これからどうするの?」
「とりあえず、死なないように逃げ回る!」
「それしかないのね!」
リィナは敵の攻撃を避けながら魔導箒を駆って飛び回る。この魔法の竜を都市にまで誘導するわけにはいかない。
イオリは端末を素早く操作し、遠隔で操っていた警備ロボットたちを呼び寄せる。
「他人の物ばかり使うのどうかと思うんだけど!」
「都市の治安を守るのは警備ロボットの仕事だよ! 私は彼らに仕事してもらってるだけ!」
「無駄だ!」
ザイが指を一振りすると、バハムートの目が輝き、周囲に黒い魔力の波動が放たれた。駆け寄ってきた警備ロボットは一瞬で焼き尽くされ、金属の残骸と化した。
「よくも都市の備品を! こいつ、魔法でEMPのようなことができるのか……」
イオリが舌打ちする。
リィナは歯を食いしばりながらも、杖を構える。
「仕方ない、私がやるしかないわね!」
「一人で突っ走らないでよ!」
イオリも端末を再起動し、リィナに目を向ける。
「あいつもドラゴンならあれが効くかも。あの時の合わせ技、もう一回やるよ!」
「ええ!? あれ止まらないでしょ! でも……やるしかないわね!」
二人はそれぞれの力を集中させる。
「行くよ、リィナ!」
「ええ、準備はできてる!」
イオリの端末が光を帯び、リィナの手元にも魔法陣が展開される。地下で見たのと同じ複雑な光紋が空に浮かび上がる。
リィナが空中に魔法陣を展開する。その紋様は青白く輝き、空間に震えるような魔力を満たしていく。
イオリは端末を両手に構え、魔法陣に合わせるようにコードを書き込み、ネットワークに侵入をかける。
「これより魔法陣の構造をリアルタイムスキャン。よく分かんないけど良い感じで接続」
「前も思ったけど、その良い感じで接続って何なのよ?」
「フィーリングだよ! そこ今気にするところ?」
『イオリ、来るよ!』
端末からユニが注意を促してくる。二人の見る先、ザイが杖を振り上げて詠唱を終えていた。
「バハムートよ、物知らずな小娘どもに魔法の素晴らしさを見せてやれ! メガフレアだ!」
ザイの高ぶる声の命令が空気を震わせ、バハムートの口元に巨大な魔法陣が展開される。赤黒い光が膨れ上がり、周囲の空間がゆがむほどの熱量が溜め込まれていく。
「――ちょ! リィナ、回避回避!」
「言われるまでもなく避けるわよ!」
リィナは魔導箒を全速力で旋回させた。直後、バハムートの口から放たれた光線が空を焼き尽くすように迸る。
轟――――!
「きゃああっ!」
衝撃波が二人を空中で揺さぶり、リィナは必死にバランスを取ろうとする。魔導箒が揺れながらも何とか持ちこたえようとするが、空気が灼熱で歪み、遠くの雲さえも吹き飛ばされる衝撃についに耐えられなくなっていく。
「これ、まるで都市一つを消し飛ばせる火力じゃない……!」
イオリが驚愕する。
「これはもうここで止めなきゃいけない!」
リィナは汗を振り払いながら魔法の発動を続けようとするが、灼熱の波動が空間を揺らし、リィナの張った防御障壁は一瞬で砕け散ってしまった。
「――きゃああっ!!」
リィナの魔導箒は激しく揺さぶられ、イオリは衝撃で手を離してしまう。
「しまった! 携帯端末が!」
「イオリ!」
「リィナ!」
手を伸ばそうとするリィナにバハムートの翼が起こした風が直撃し、二人は急速に落下し、冷たい風が肌を切り裂くような感覚とともに墜落していった。
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