第3話 ずるいくらい綺麗
「蒼真、お話...しよっか」
悠がニコニコと笑って言ってくる...が
(目が笑ってねぇ...!)
完全に人を殺そうとしている目だ
色々狂ってる人の目だもん...おかしいよコイツ...!
「お、おはよう...悠」
「おはよう...じゃねぇよな...?」
「うおっ!?」
そのまま勢いよく肩を組まれ、
グワッとと体ごと持ってかれる。
(怖ぇよ!さっきから怖ぇよ!)
「お前なぁ!マジで!マジでお前さぁ!
何、朝っぱらから美少女とイチャついてんの!?」
「知らんがな!あれは不可抗力ってやつだ!
というか、イチャついてないし!」
俺からは何もしていない、断じてな
...元はと言えば俺が要因な気がするが
(うん、気のせいだろ)
「嘘つくんじゃねぇこの野郎!
袖掴まれて照れてたやつが何言ってんだよ!
しかも“また来るね”とか言われてただろ!?」
(あれはズルくない...?)
「だぁ〜か〜ら!それも!甘凪が勝手に...!」
「勝手に!?勝手に“また来るね”って!?
ラブコメの主人公かよてめぇはよぉ!」
机をドンッ!と音がするように悠が机を叩く
「んな訳ねぇだろ!?」
...もう会話が成立してるのか分からん。
そしてきっと成立していない
互いに言い合っているだけな気がするし
(でもまぁ、悪くない)
「はぁ...俺にも青春を寄越せ」
「渡せるもんでもねぇだろ...」
コイツの中では美少女とイチャつけたら
それが青春なのだろうか...。
「認めたな!?お前今幸せなの認めただろ!?」
「俺の人生はいつだって幸せだ」
「蒼真の癖にかっこいい...」
「なんだテメェ喧嘩売ってんのか?」
思わず手が出てしまいそうになる
危ない危ない...手が滑りそうだ
「いやいや違いますよ、ははっ」
「オット、テガスベッタ」
そうして俺の手が悠の顔の寸前で振り下ろされる
あれぇ〜?おかしいな〜手が滑ったぁ〜
「すみません勘弁してください...」
「よろしい」
「おかしい...おかしいよコイツ...!」
なんで手を振り下ろしただけで、
あんな風圧を食らうんだ...!なんて
悠が怯えて呟いていた気がするが...勘違いだろう。
「ま、蒼真が楽しそうで俺は良かったよ」
そう言って悠は笑いかけてくる。
(こういうとこがお前と一緒に居る理由だよ...悠)
良くも悪くも馬鹿正直に聞いてくるし
馬鹿そうに見えて...いや、実際馬鹿なんだけどさ
人を気遣える優しさがある。
今日も、俺が周りからの目を気にしないように
馬鹿やってくれたんだろう。
「ありがとな悠」
「ってのは建前でぜんっぜん良くねぇけどな!?」
(...コイツ、ただ馬鹿なだけだわ)
―――――――――――――――――――――――
「如月くん」
その声は、朝と同じく不意打ちで
俺の視界を一瞬で占領する。
映っているのはもちろん甘凪だった。
制服のスカートが揺れて、
光を浴びた髪が煌めいている
その全部が目を引く...完璧な美少女
(未だに信じらんねー)
「来たよっ。...約束、忘れてないよね?」
そう言って、俺に向かってにこっと笑う。
笑顔が...やばい。反則級だ。
この笑顔が俺にだけ向けられたものだと思うと
(俺は前世でどんな徳を積んだんだ?)
「忘れてないけど...ほんとに来るとは」
そう口にした途端、
甘凪が不満そうにほっぺを膨らませる。
「えー、ひどいなぁ...私が来るのそんなに意外?」
「意外...ってか、信じられないっていう感じ?」
学園三大美少女の1人が、
俺のことを昼ご飯に誘ってくるとか
どんなフィクション?って感じ
夢オチでも全然納得ですよ僕は
「ほら、早く行こっ?」
そう言って、甘凪は俺の手を軽く引いた。
そのまま、廊下へと連れ出される。
「ちょ、ちょっと待って...!」
「な、何かな?」
(いや、お前も照れとんのかーい...)
思わずそうツッコミをいれそうになる。
余裕たっぷりで手を引いてきたのかと思ったら
ハチャメチャに顔が赤かった。
「照れるなら、やらなきゃいいのでは...?」
「い、良いの!こういうのは雰囲気なの!」
「そうなの...かなぁ...」
「そうなの〜!お昼短いんだから。早く屋上行こ!」
そう言って誤魔化すように話を進める。
くるりと振り返って、
小悪魔のように悪戯っぽく笑う顔は、
明らかに楽しそうだった。
その後ろ姿を追いながら、
俺の胸は妙にざわついていた。
美少女に手を引かれておいて何様だって思う?
...いや、俺も幸せ者だと思うよ?...でもさ
(めっちゃ見られるんだよなぁ)
ま、いっか。俺もなんか楽しくなってきたし。
屋上への階段を登っている間も、
甘凪は上機嫌だった。
小さな鼻歌を口ずさみながら、
「風、強くないといいなー」とか
「お弁当、今日は上手く作れたんだよ」とか、
そんなことをぽつぽつと話す。
「甘凪、お弁当自分で作ってるんだ」
シンプルに凄い、さすがと言ったところ
「んー、まぁ、自分の分はね。でも...」
そう言いかけて、彼女は俺をちらっと見上げた。
「ちょっと多めに作ったから…さ
如月くんにも、あげる」
「え、いや、俺、自分の弁当あるし...」
「だめ。食べて。...私があげたいの」
その一言に、またやられた。
(あーはいはい、拒否れる訳ないですよ〜)
正面からの笑顔。少しだけ頬が赤くて、
でも目は真っ直ぐ。
「喜んでいただきます」
「良かったぁ〜」
屋上に出た途端、風がふわりと吹き抜ける。
甘凪はそのままベンチに座って、
鞄から丁寧に包んだ弁当箱を取り出す。
「ほら、こっち。隣来て?あったかいうちにね?」
その口調は、まるで恋人に言うみたいで──
俺は何も言えずに、言われるがまま隣に座った。
笑いながら箸を差し出す甘凪。
その横顔が、ずるいくらい綺麗だった。
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