第11話 勿論!
張り詰めた空気。
先程よりも冷ややかな目で俺を見る長老。
俺の後ろで弓を構えるイケメンエルフ達。
何かすっげぇ弓を引いてキリキリと音が聞こえるんですけど……
以前ハクから聞いた知識だと、森の民エルフ族は森の主である白狼を崇拝している。
基本的にエルフ族はプライドが高く、同族意識も強い、それ故に排他的な考えを持つ。
つまり、信仰対象である白狼が人間如きと一緒にいるのが我慢ならないらしい。
「白狼様、恐れながらお尋ねしますが、もしや其処の人間に何か弱みを握られておられるのですか?」
『うむ。そうじゃのう。強いて言うなれば(胃袋を)、握られておるのかのぅ……』
その途端、後ろから矢が飛んで来て、俺の左頬を掠めて地面に突き刺さった。
後ろを振り返るとイケメンエルフが舌打ちしやがった。
何だよ!この状況!
てか、ハク!絶対わざとだろ!
そんな空気の中、右後ろのイケメンエルフが声を張り上げた。
「人間!貴様、白狼様の弱みを握るとは許せん!成敗してくれる!!」
何だろう、俺の中でエルフ族って、凄いクールで思慮深いイメージがあったんだが、凄く短絡的で脳筋っぽい。
あえてイメージ通りなのは金髪、イケメン、耳長いくらいで非常に残念だ。
そんな事を考えている間にもイケメンエルフはギャーギャーと騒ぎ立てていて、渦中の白狼様、ハクは呑気なもんで、
『なんじゃ?イチローが儂の為に戦ってくれるのか?
儂、モテモテじゃのう。』
と、何故か嬉しそうにしている。
あー、何だろう、凄くコイツを殴りてぇ……
殴って反撃されたら死んじゃうから殴らないけど……
「人間!俺と決闘だっ!
高貴なるエルフ族の戦士は脆弱な人間如きを悪戯にいたぶる事はしない!
ハンデをやろう!
俺は弓だけで貴様の相手をしてやる!
貴様は剣でも弓でも何でも使えるものは全て使って構わない!
貴様という存在の全てを俺が否定してやろう!」
目の前でイケメンエルフは黒いセールスマンの様などーん!って感じで指を指して言って来た。
俺の顔は奴の唾でベタベタだ……
て言うか、何故決闘っていう流れになったのだろう。
しかも、俺の全てを否定するって、何か酷くないか?
元々、俺がハクに着いて来てくれって頼んだ訳じゃないのに……
ハクが俺に着いてくるって言い出したんだから、俺、関係無くない?
あー、何か腹立ってきた。
俺はスッと立ち上がり、イケメンエルフを睨みつけて言ってやった。
「勿論、断る!!」
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