第4話 犠牲はいつも大き過ぎる。
このゲラのデカイ狼を笑わせるくらい簡単だと思ってた時期が俺にもありました。
以外にも白狼を笑わせる事は難航していた。
俺は穴がなくても自ら掘って埋まってしまいたい衝動を堪えながら考え付く限りのネタを繰り出した。
「バスガイドの乗ったバスが移動!」
『……………。』
「切り株に思いっきりかぶり付く!」
『………………。』
「モノレールにも乗れーる!」
『………………。』
こんな調子だ。
ここが異世界だからとか関係無い。
俺のネタのレベルが云々とかじゃない。
白狼の完璧とも言える対策に俺は手も足も出ないのだ。
「耳塞ぐの反則だろっ!!」
そう。普通狼の耳は周囲の音を素早く拾う為にピンと立っている。
しかし、目の前の白狼は耳をペタンと寝かせて、外部の音を完全にシャットアウトしていた。
「く、くそ……」
俺の悔しそうな顔を見て白狼が目を細める。
オマエの目的が解んねーよ!
『もう終いかの?』
白狼のドヤ顔が非常に腹立たしい。
この現状を打破するにはダジャレじゃなく、動きのあるネタだ。
フル回転する俺の頭はそんな答えを導き出した。
思い出せ!テレビで見ていたあの芸人の動きを!
山崎から月亭に解明したあの方正さんを!
俺の周りの空気が変わる。
奇妙な冒険ならゴゴゴゴと出ているだろう。
俺の雰囲気に白狼も気が付いたようだ。
相変わらず耳は寝たまんまだが、構わない。
俺は俺のありったけの情熱を持って全てをこの一言に込めるだけだ。
「まーーーーーーっ!!!!」
『……なんじゃ……?』
小首を傾げる白狼。
うん。滑りました……orz
「ま…、眉毛ボーンっ!!」
『う、うむ……そ、そうか。』
白狼よ、そんな可哀想な物を見る目で俺を見るな。
「こ、こ…コマネチっ!!」
『ふむ。白い妖精、ナディア•コマネチかの……?』
「何で知ってるんだよ!!」
『儂が白狼だからじゃ!』(ドヤ顔)
あれ…?こいつ今、俺の突っ込みに反応したな。
チラリと見ると耳が少しだけ浮いている。
サイレントで俺の動きを見ていて、少し気になったらしい。
よし、作戦通りだ!(嘘)
「隣の家に囲いが出来たってね。」
「ヘイ。格好良い囲いが。」
ピクリと白狼が震えた。
『…っ!ぜ、全然…お……うぉもしろくぬぇーし……っ!』
かなり限界に近いみたいだ。
あと一押しか?
どこかの界王様にトドメをさしたあのネタでフィニッシュだ!
「ふ、布団が吹っ飛んだ!」
一瞬、白狼の身体が硬直した。
しかし、徐々に足元から小刻みに震え始め、その震えは白狼の全身を支配する。
そして、ダムが決壊する様に白狼は崩れ落ちた。
『でぃゃはーはっはっはー!!』
そんな白狼を見ながら俺は何とも言えない達成感と共に大事な物を沢山失った気がした。
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