第4話 新たな命令、旅立ちへ
翌朝、私は兵舎で装備を整えていました。体力はまだ少し残っていましたが、昨日の戦いの疲れがじわじわと全身に染み込んでいます。油断すると、身体がずしりと重く感じるくらいでした。
そんな中、扉が開きました。
「ノア中隊長、来い」
ヘクト部隊長が呼びに来てくれたのは、思ったよりも早い時間でした。私は慌てて荷物をまとめ、仲間たちとともに部隊長のもとへ向かいました。
待っていたのはヘクト部隊長と、ガルドさん、そしてロスさん、ヴェルさん。みんな顔なじみのベテランばかりです。安心感を覚えると同時に、何かただならぬ雰囲気も感じました。
ヘクト部隊長が短く切り出します。
「新しい任務だ。王都へ行け」
思わず息をのみました。王都、ファルミリオン。防衛兵が出向くことはめったにない場所です。
「詳しくは後で伝えるが、まずは物資の受領と報告、それから──カイリス・ヴァルディエールに会ってもらう」
部隊長の言葉に、ガルドさんが口を開きました。
「ノアには、魔法の才がある。ヘクト部隊長の友人、カイリス様に見てもらうべきだと、俺が提案した」
「カイリス様……?」
私は首をかしげました。名前は聞いたことがあります。王都東区に住む、少し変わり者の魔導具研究者。とはいえ、私なんかが会っていいものなのか、正直不安でした。
「心配するな。あいつは貴族だが、気にしないやつだ」
ヘクト部隊長がにやりと笑いました。
「それと、北区──神護区にも寄る。ガルドの上官、レオニス様に挨拶していけ」
私は驚きました。神護区といえば、神殿の総本山。正規兵ですらなかなか足を踏み入れない場所です。
「……いいんですか?」
「問題ない。むしろ向こうが会いたがっている」
ヘクト部隊長はそう言い、さらりと指示を続けました。
「道は北回りだ。三日もあれば北区に着く。そこで一泊して、それから王都に向かう」
「了解しました」
私は胸の内で気合を入れ直しました。こんな機会、滅多にない。だからこそ、気を引き締めなければ。
「物資の受け取りも重要だが、カイリスからの魔導具受領は最優先だ。お前の戦い方が変わるかもしれん」
「……はい!」
強く返事をすると、ヘクト部隊長が満足そうに頷きました。
すぐに荷物をまとめ、私たちは出発準備に取りかかりました。西区を出るには、門の手続きも必要です。出発の許可をもらい、数日分の糧食と最低限の装備を荷車に積み込んでいきます。
「うし、忘れもんないな?」
ヴェルさんが笑いながら声をかけてきました。
「大丈夫です。何度も確認しましたから」
「おー、しっかり者!」
ヴェルさんの軽口に、ロスさんが小さく苦笑しました。荷車を押しながら、ガルドさんもこくりとうなずいています。
こうして、私たちは出発しました。
砦の外へ、北へ向かって。
まだ、この先に何が待っているのかは、誰も知りませんでした。けれど、心の中には不思議な期待が膨らんでいました。
きっと、何かが変わる。
そんな気がしてなりませんでした。
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