第3話 テッタ少尉は、グレイ種族の禁欲生活に辟易する
コールドスリープから目覚めて2日目の朝。
「テッタ少尉、朝ですよ!」
テッタ少尉は、昨日と同じように轟38号の声で起こされる。そして、轟38号を2度見してしまう。
「どうです!人類のスーパーモデルのような、8等身ボディのグラマラスメタルボディに改良してみましたよ!」
まさかの、グレイ種族から、人類版メタルボディ……
「お前、本当に最新鋭AIなのかよ……どう考えても、AIがバグってるようにしか見えないんだが……」
「私には、マスターの方がバグってるように見えますが? 人類からグレイに転生って!普通に考えて、とても非現実的ですからね!」
どう考えてもバグってる奴から、逆にバグってると言われるのは、釈然としない。
「でも、お前の話によると、俺に人類の、それも日本人の記憶があるのは、日本人にグレイの遺伝子が組み込まれてるなら、普通に有り得る話なんじゃないのか!」
そう、輪廻転生があるとしたら、同じ種族に転生する可能性が高い筈だし。
「ですね。マスターって、本当に人類大嫌いだったのに、急に人類大好きグレイのなってしまいましたもんね!
これは完全にマスターは、アースニストになってしまったようですし……」
「何それ?アースニストって?」
テッタ少尉は、聞いた事ない言葉だったので、轟38号に聞き返す。
「地球の英語で翻訳すると放火魔の事ですが、グレイの言葉では、地球偏愛主義者の事を指す言葉です!」
「初めて聞いたけど、そんな言葉があったのかよ」
「ですね。地球って知的人類が闊歩する惑星だったんですけど、当時のグレイ種族にとって、とても興味深い惑星だったように思われます!」
「そうなのか?」
「ハイ。地球人って、ちょっと、おかしな人が多い惑星だったと言われてますからね!」
「どんな所が?」
「特に、地球の日本人が、エロいし変態的だったと、記録に残ってます」
「日本人って、俺の事かい!」
グレイは保守的な種族だと思ってたが、中には、怖いもの見たさの変わり者のグレイも居たようである。
「まあ、アニメ文化とか、無駄に色んな物を発明しちゃうとか、メイド文化とか、なんでも可愛くしちゃうとかとか、色々日本人について、今回調べてみましたけど、どう考えても日本人は変態でした!」
「それで?何でグレイ種族の中に、地球に固執してた奴が居たんだ?」
「多分、やることなす事が面白かったんですね。当時の変わり者のグレイ達は、こぞって地球に訪れて、地球人とたくさん交流してたと記録が残ってます」
轟38号の話を聞いてると、グレイ種族にも、その当時は、相当変わり者が居たようである。
多分、そんな一団が、モーゼさんを宇宙船に拉致って人体実験してしまったのだろう。
「確かに、アメリカとかだと、グレイ種族と人間が一緒に写ってたの有ったしな……捕まった宇宙人とか、アレどう考えてもグレイ種族だもんな……」
「ですね。特にグレイ種族は、アメリカ人と積極的に交流してました。アメリカ人程度のユニークさだと、グレイ種族にも脳の負担がない程度の面白さだったみたいです。
本当は日本人と交流したかったみたいですけど、マニアのアースニストでも、日本人は少し変態過ぎて二の足を踏んでたみたいです」
「どんだけ日本人は、グレイ種族に恐れられてたんだよ!
最も、グレイの血を引いてる筈なのに!」
「ですよね!」
「ですよね!って、前世が日本人である俺を、最も受け入れてるお前の方が怖いんだけど!」
「マスターは、マスターですから。 そもそも辺境観察宇宙船は、マスターである辺境宇宙観察員が孤独で頭がおかしくならないように、マスターにストレスを与えないように、寄り添うように作られてますからね!
そんな事は置いといて、お前じゃなくて、これからは私の事を
「何故に
「マスターが大好きな、日本風の名前にしようと思いまして……これも、辺境宇宙観察員であるマスターに寄り添う為に、最新鋭AIが導き出した完璧な答えです!」
なんか知らんが、俺がどれだけおかしくなっても、最新鋭AI搭載の辺境調査宇宙船轟38号改め、
普通に、俺が人類からグレイ種族に転生したと、突拍子のない話をしても、全く疑いも無しに受け入れちゃってるし。
しかもその根拠まで、自ら帝国データベースで調べて提示までしてるし……
「もしかして、轟38号だから、サヤなのか?」
俺は、もしかして思って聞いてみた。轟38号が最新鋭AIを用いて日本人的な思考で考えたら、名前の数字語呂合わせに普通に導かれると思うし。
「です!」
やっぱりね。
「ちょっと、お前の事が怖くなってきてるけど、俺の今の状態の方がもっと怖い状況になってるから強く言わないけど、最新鋭AIって、一体どうなってんだよ!」
「こんな状態ですけど?」
サヤは、アッケラカンと答える。
しかも、メタルボディで、全く表情が変わらないので、本当に怖い。
「もう、いいわ! それより仕事すんぞ!」
俺は、サヤの最新鋭AIがバグってる事を、仕事に没頭して考えない作戦にした。
「前世の記憶が戻ったのに仕事するんですか?」
「そりゃあ、するだろ?仕事しないと給料貰えないし」
「ですけどマスター、予定より1万年早くコールドスリープから目覚めてますけど?」
サヤが今更ながら、俺にとっては、とても重要な事を指摘してきた。
「そっか?! 別に、901惑星に壊滅的な問題が起きて、俺は、強制的に目覚めさせられた訳じゃなかったんだったな!」
「ですね!マスター自身に脳波異常という、人知を越えた問題が発生したので、私が、強制的に起こしただけです!」
「ならまだ、俺はもしかして、休暇中って事か?」
「That's Right!」
また、That's Right……決め言葉が英語なのが、今回のサヤのルールなのか?
「何、そのThat's Right!て?」
「ただのマイブームなので、気になさらずに」
本当に、バグってる最新鋭AIの思考は、分からなくて怖い……
「まあ、いいけど……それより、朝食作ってくれよ!ボディ手に入れた訳だから、料理とかも出来るようになったんだろ?」
「エネルギー水で良いですか?」
「あんな不味い水なんて飲めるかよ! 人類が食べるような食事を用意しろっての!」
「なんか、マスター、ちょっと我儘になってきましたね……」
最新鋭AIであるサヤが、目敏く指摘する。
「そりゃあ、人類の記憶が戻れば我儘にもなるっての!
だって、グレイ種族って、本当につまんない種族なんだぜ!
俺、何で今まで、こんなに禁欲的な生活をしてきたんだと、今更ながら思ってるしな!」
そう、俺は日本人の記憶を思い出して、グレイの真面目な禁欲的生活が、心底嫌になってしまってたのである。
だって俺の今の生活って、毎回、何万年もコールドスリープして、起きる度に、901惑星のレポート書くだけの生活だぜ。
娯楽も、サヤと喋る事ぐらいだし。まあ、最初のウチはゲームとかもやってたけど、全てやりつくして、既に飽きちゃってるしね……
「グレイの3等身の平ペったい体より、醜悪で凹凸がある、穴という穴から臭い排出物を撒き散らす体の方が好きと言ってましたもんね!」
「お前、ちょっと言い方考えろよ! 俺は元人類なんだから、これから人類をディスるような事言ったら絶交だからな!」
「全部、元々マスターが言ってた言葉だったのですが……」
「それでもだ!」
「ラジャー!」
よく分からんが、轟38号改めサヤはノリが良い。
無駄に最新鋭AIなので、俺の人類的なノリにすぐに合わせてしまえちゃうのだろう。
「ところで、マスター。マスターはグレイ種族なので、歯も胃も退化してしまっていて、固形物を消化できないのですけど、本当に人類が食べるような料理を作って宜しいのでしょうか?」
「なっ……何だってー!!」
なんとなく解っていたのだが、この当時の俺には、この、絶望的な気持ちを満たす方法など、絶叫するしか思いつかなかったのだ。
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