【入門ガイド】「バロック音楽の冒険 〜17-18世紀の天才たちが織りなす音の世界〜」

藍埜佑(あいのたすく)

第1章:バロック音楽とは? - その時代と特徴

 あなたは「バロック」という言葉を聞いたことがありますか? 実はこの言葉、もともとはポルトガル語で「いびつな真珠」を意味していたんです。当時の批評家たちは、この時代の音楽があまりにも装飾的で複雑だと感じて、少し皮肉を込めてこう呼んだのです。でも今では、この「バロック音楽」こそが、西洋音楽の宝石のような存在になっています!意外ですね!


「バロック音楽って何? いつ頃の音楽なの?」


 こんな疑問を持ったあなたのために、バロック音楽の世界への冒険の旅を始めましょう。バロック音楽は、1600年から1750年頃までの約150年間に作られた音楽です。この時代は、ヨーロッパで王様や貴族が強い力を持っていた「絶対王政」の時代でした。


 バロック音楽の前は「ルネサンス音楽」の時代があり、後には「古典派音楽」の時代が続きます。ちょうどその間の、音楽が大きく変わった重要な時期なのです。


### バロック音楽の特徴


 バロック音楽には、どんな特徴があるのでしょうか?


1. **感情表現が豊か**:バロック音楽の作曲家たちは、音楽で様々な感情を表現しようとしました。喜び、悲しみ、怒り、驚き——音楽が「言葉」のように感情を伝えるんです。


2. **装飾的**:メロディーに多くの装飾音(トリル、ターン、モルデントなど)が加えられています。まるで、シンプルなケーキに美しい飾りをたくさん乗せるように!


3. **通奏低音つうそうていおん**:低音楽器(チェロやオルガンなど)が基礎となる音を演奏し、その上に他の楽器やボーカルが乗る形式です。これは「バソ・コンティヌオ」とも呼ばれ、バロック音楽の「縁の下の力持ち」のような存在でした。


4. **対位法の発展**:複数のメロディーが同時に進行する「ポリフォニー」という技法が発達しました。バッハの音楽ではこの技法が極限まで追求されています。


5. **新しい音楽形式の誕生**:オペラ、協奏曲、組曲、オラトリオなど、今日でも親しまれている多くの音楽形式がこの時代に生まれました。


### バロック時代の面白いエピソード


 バロック時代のヨーロッパでは、とても興味深いことがたくさん起きていました。例えば、フランスの王様ルイ14世は「太陽王」と呼ばれ、ヴェルサイユ宮殿で豪華な音楽会を開いていました。彼は自分でバレエを踊るのが大好きで、宮廷作曲家のリュリが作る音楽に合わせて、立派な衣装を着て踊っていたそうです!


 また、この時代は科学の発展期でもありました。イタリアのガリレオ・ガリレイが望遠鏡で宇宙を観察し、イギリスのニュートンがりんごが落ちるのを見て重力の法則を発見したのもこの時代です。音楽家たちも、そんな科学的な考え方に影響を受けて、音楽の「法則」や「理論」を探求していました。


 バロック時代のオーケストラは現代のものとは全然違いました。サイズもずっと小さく、20人程度の演奏者しかいないことが多かったのです。そして、指揮者はいませんでした! かわりに、チェンバロ(鍵盤楽器)を弾く人か、ヴァイオリンを弾く人が、演奏しながら皆をリードしていたのです。


「でも、どうやって皆で合わせていたの?」


 そう、現代のように完璧に揃えることは難しかったかもしれません。でも、それがバロック音楽の魅力の一つでもあるのです。それぞれの演奏者が「対話」するように演奏することで、生き生きとした音楽が生まれていました。


### バロック音楽はいつ、どこで始まったの?


 バロック音楽は、1600年頃のイタリアで始まりました。特にフィレンツェという街が重要な役割を果たしました。ここに「カメラータ」と呼ばれる音楽家や知識人のグループがあり、彼らは古代ギリシャの音楽劇を現代によみがえらせようと考えました。


 1597年、ヤコポ・ペリという作曲家が「ダフネ」という作品を作り、そして1600年には「エウリディーチェ」を発表しました。これらは世界初のオペラと考えられています! オペラは、物語、音楽、舞台美術、衣装などが一体となった総合芸術で、バロック時代に大流行しました。


 バロック音楽はイタリアから始まり、すぐにフランス、ドイツ、イングランドなどヨーロッパ全土に広がっていきました。各国で独自のスタイルが発展し、モンテヴェルディ、バッハ、ヘンデルなどの偉大な作曲家たちが、今でも愛される名曲を生み出したのです。


 これから、そんなバロック音楽の素晴らしい世界を探検していきましょう!


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