二章 矛盾
第30話 金貨
「おーい! もうすぐベーナの街が見えてくるぞ!」
この前の件から十日が経過し、ボク達はルディとパティという心強い味方を迎えベーナの街に向かっていた。道中は五人も居ることもあり飽きは来ず楽しい時間を過ごせた。
「あれがベーナの街……ベルタさん。あそこには何があるんですか?」
「色々あるぞ。何せ貿易の街だからな。世界中から物が集まってくるんだ。旅に役立つ物もあるから旅人も多いぞ」
また魔族と戦うことになるかもしれないし、新しい装備品とか買った方がいいかな……でも武器の種類はもうあれで足りるし……
「まぁ時間はたっぷりあるんだ。悩まず気ままにやりたいことやればいいさ!」
あまり深く考え込まず、ボクは遠くから見える街並みを眺め残り時間を過ごす。
「ほら着いたぞ!」
少しすればベーナまで着きボク達は地面に足をつける。街は人で賑わっておりアルベーラより活気と熱に溢れている。今視界に入っているだけでも食欲掻き立てる飲食店や装備屋にお土産屋。光り輝く宝石店などあり視点が定まらない。
「俺とはここまでだな。まぁ旅を続けるならまたどこかで会うだろうよ。その時はよろしくな。じゃあな!」
ベルタさんは馬車を引き、商売しに向かっていく。それからボク達四人は特にあてもなく歩き回りお店を見ていく。
「おい見ろあれ! 綺麗な石が売ってるぞ!」
ルディが宝石を売っているお店を指差してはしゃぐ。
「お姉ちゃん……あれ宝石ですよ。石なんて言ったら……それにあたし達じゃとてもじゃないけど買えないですよ」
「うっ……確かにボク達じゃ無理だね」
分かってはいたが値段を見てその高額さにボクはちょっと引いてしまう。これを買うお金があればボク達は一年は生活できる。まぁ先程からたまに見る富裕層の人向けなのだろう。
「そうよ。買うにしてもそんな装飾品とかじゃなくて旅に役立つ物にしなさい」
セリシアはルディとパティという歳下が二人仲間に加わったこともありお姉さん感がより増している。
「うぅ〜いつか大金持ちになってやる……!」
残念だが宝石は諦めボク達は旅の装備品などを扱うお店まで足を運ぶ。
「いらっしゃい! いらっしゃい! 便利な物揃ってるよ!」
お店の人が言う通り、店の中には大量の商品が置いてありどれもこれも旅に役立ちそうな物ばかりだ。アイテムボックスはもちろん、武器や日用品に戦闘で使える魔法の道具等もある。
「へぇ……これは投げると強力な風を発生させるのか……」
「それならアタシの魔法で十分だな」
「確かに。なら必要になりそうなのは……」
ボクはある商品の前で立ち止まる。どうやら特殊な魔法が付与されているイヤリングのようで、身につけるだけで透明な魔法の膜ができ敵の攻撃から守ってくれるらしい。
「あのすみません店員さん。これって戦闘中外れたりはしませんか?」
「最前線で激しく動く人……特に加速系のスキルを使わなければ大丈夫ですね」
「なるほど……」
ボクは十中八九だめだな。あのスキルは何を食べようと身体能力の上昇……つまりはスピードの増加が確定してるし、鳥や蜘蛛と相性が悪すぎる。でも他の三人なら……
「これ三つでいくらになりますか?」
「三つ買ってくれるなら安くして銀貨一枚と銅貨五枚でいいよ」
ボクは胸ポケットから金貨を一枚取り出す。いつのまにか胸ポケットに入っていたお金を。
これ……本当にいつ入ったんだろう? 里の復興を手伝ってた時に気づいたけど、里の人の物でもないし……セリシアは誰の物か分からないなら受け取っとけって言うし。でも自分に使うのは気が引けるし、みんなのために使ってあげよう。
「この金貨で払えますか? あとついでにそっちの橙色の髪飾りも」
「はいお買い上げありがとうございます!」
店員さんは慣れた手つきで品を袋に入れて手渡してくれる。
「何を買ったんですか?」
「ちょっとみんなにプレゼントしようと思って」
そうしてボクはみんなにプレゼントを渡すべく、人通りがそこまで多くない噴水の前まで移動するのであった。
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