第2話

これからは、運命の嫁コールを聞かなくて済む。


これからは、双子なのに一人だけの誕生日会を見なくてもいい。


これからは、名前を呼ばれない日を送らなくていい。


ふふ、と笑みが浮かんだ。


これからは、自分だけの為に生きられる。


仮に、妹が運命に選ばれたとして、連れて行かれるのか竜族が留まるのか。


どちらにしても自分にスポットライトが当たることはないだろう。


「そんなことになったら、残された方って新しく言われそう」


双子じゃなかったらもう少しなにか、違ったかもしれない。


誕生日だって被らなければ、忘れられることはあっても、同じ日に贈られる温度差をまざまざと見せつけられることも、なかったと思う。


(あの子の髪飾りは可愛くて美しいのに、私のは適当に買ったもの、値札も取ってない状態で、箱にも入ってない)


値札もそのままなんて、ほかの子は同じ真似などされてなさそう。


(私が渡したプレゼントよりもあの子から貰った時、両親は抱きしめた)


サティラムには、貰う時の温度のないありがとうだけ。


(でも、これからは違う。違うの)


列車に乗って隣国のさらに隣国へ。


駅から降りて、カバンを手に会場へ向かう。


今日は試験の日でもある。


情報を集めて、色々調べていた。


本を読む内にサティラムはタクシーという職に一段と憧れが湧いた。


先ずは筆記での試験。


その試験に合格すると次は数ヶ月間の魔導車の運用のための実習。


見事、試験に受かれば晴れてドライバーになれる。


この国に来たのは魔導車の最先端国だから。


この国の魔導車はほかの国と違い自動で走るらしい。


ドライバーが居るのはそのほかの為だ。


自動魔導車は走ることはしてくれるが荷物を運んだり、送った人を乗せたりすることはまだ無理らしい。


手動の部分を補うためのサポート役。


サティラムは自動ではない魔導車のドライバーも考えたが、本を読んでいると覚えることがあまりにも多すぎて、時間が有限だったのでこちらの自動にしたのだ。


この国限定という点がデメリットだと書いてあったが、家を出て働きたかったサティラムにとってその時やれる近道。


とにかく、サティラムは魔導車の自動に興味を惹かれた。


国内であれば不便なく移動できる程、既に整備が終わっている。


そして、試験を受けた結果。


(受かった!受かった!)


筆記は手動車と比べれば、難易度は低い。


それでも、心配だった。


憧れの魔導車に乗った時は、感動で手が震えた。


研修を終えて、自動魔導車タクシーの免許を取得。


色々他にも選択肢はあった。


専属のタクシー、魔導バス、魔導車の給魔(動かすエネルギー)施設の職員。


様々な関連する場所が選べたが、タクシーを選んだ。


とにかく広く広く、いろんなところに行きたかった。


今まで狭いところに居たので、反動だろう。


そんな中、人を乗せて自動で向かう相手と会話をしたり、観光地を教えたり、美味しいお店を紹介することも主な仕事だった。


別に無口でも許されないわけではないが、研修ではタクシーならばリピーターも大切だと教えられた。


タクシーの思い出が良ければ、またこの国に来たくなるのだと言われ、そういうものなのかなあ、と半信半疑だった。


今も話す側なので、言われた内容を反芻したところで感じ入ることもない。


今度、誰かのタクシーに乗ってみればなにか得られるかもしれないな。


そんな風に、人生をまさに謳歌している最中のこと。


まさかのまさか。


振り払い置き去りにした過去が到来。

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