どうかあなたが
「……いつきくん。いつきくんは、すみれとずっといっしょですか?」
下を向いたあなたの肩が、小さく震える。
黒いワンピースを着た小さなあなたが。まだ庇護されるべき年であるあなたが。
たったひとりで声もあげずに泣いている。
「もちろんです。純蓮お嬢様が望むのならいつまでも……、俺はあなたのそばにいます」
慣れない笑みを無理やり貼り付け、私はそっとしゃがみこんだ。まだ幼さの残る私の手が、そっとあなたの小さな手を包み込む。
あのときあなたは、どんな表情をしていただろうか。
遠い昔のその記憶は、時が経つにつれ朧気になっていく。
ただ、それでもあの日私は確かに、どうかこの優しい少女がこれ以上苦しむことがありませんように、とそう願ったのだ。
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