第43話 魔力供給
「アイリ様。どうかレオン王子に……お願い致します」
「ボクもやった事はないけど、やり方は何となく知ってるよー! あのねー、くっつくんだよー」
「アイリさん。では……いきます」
うぅ、王子の顔が近い。
ドローンに光魔法で照明を点ける為に、私の魔力を分け与えるって言うけど、魔力補給ってアレでしょ?
どうやって魔力を分けるのかも分からないのに、とりあえずやってみよう……みたいなノリで挑戦するなんて。
そんな軽いものではないのにっ!
「――っ!」
クリフさんとノエル君の目の前だというのに、王子が私の手に触れ……握ってきた!
そして……
「ライティング……おぉ! 流石はアイリ様の魔力ですね。魔法が苦手な僕の照明魔法が、こんなに明るいなんて」
あ、手を繋ぐだけで良かったんだ。
いやいやいや、変な事は想像してないから! 別にちょっとがっかりしてないから!
「じゃあ、早速ドローンというか、視界を動かすわね」
「あっ! アイリさん……」
「え? ……な、なるほど。手を離すと、魔力供給が途絶えて、光が失われちゃうのか」
とはいえ、いろいろ試してみた結果、必ずしも手を繋ぐ必要はなくて、魔法を使うレオン王子が私の何処かに直接触れていれば良いみたいだ。
と言う訳で、私の部屋に戻ってノートパソコンの準備をすると、王子には私の頭に手を置いてもらう事にした。
肩とか足とか、他の場所を提案したんだけど、結婚前の娘……私の事なんだけど……が、男に不用意に身体を触らせるものではないと、王子とクリフさんから言われた結果だ。
とはいえ、頭もどうかと思うけど……それより、早速ドローンを発信させる。
「王子の魔法のおかげで、あまり高度をあげなければ、先が見えますね」
「では、街の様子を見ていただけないでしょうか」
「えぇ、任せて」
王子が住む街には何度かドローンを飛ばしているので、だいたいの場所は分かる。
ただ、フェニックスの像からアパートへドローンを戻した時とは違って、一切灯りの無い場所を目指すので、中々に辛い。
あまり速度も高度も出せずに、ゆっくりと街を探しながら飛ばして……見つけた!
「あぁ、アイリさん! ありがとうございます! 出来れば、左手にある王城を……っ!?」
王子のリクエスト通りに王城の中にカメラを向け……灯りが向けられているというのに、誰一人動かない。
これは、もう……ダメなのかもしれない。
王子もそれが分かったからか、私の頭から手は離さないものの、画面から目を反らしているように思える。
「お、お待ちください! 遠くに、こちらを見ている者がおります! ただ、もう体力がないのか、それとも幻だと思っているのか、動こうとはしませんが」
「アイリさんっ! 何か……向こうに何か伝える事は出来ないのでしょうか!」
「ごめんなさい。あくまでこれは遠くを見るだけなの。さっきも話した通りで、荷物を送る事も出来なくはないけど、それには見えない壁をなんとかしないと」
クリフさんが気付いたのは、幼い女の子だ。
確かにカメラを見ていて、ドローンを動かすと、それに合わせて視線が動いている。
もしかしたら、お城の中で倒れている人たちも、動けない程に体力を消耗しているものの、まだ生きているかもしれない!
「見えない壁を何とか出来れば、国民を救う事が出来るかもしれないというのに!」
王子が悔しそうにしているけど……私の頭に手を置いている事を忘れるのは止めてね。
気持ちはわかるけど、手に力が籠っていて、ちょっと痛いから。
「……そうだ! アイリ様! あの剣はどうでしょうか!」
「剣は、残念ながら新たに作る事は出来なくて……」
「いえ、新しい剣ではなくて、フェニックスの祭壇に置いた神の剣です! あれはまだ、祭壇に置かれているのではないでしょうか!」
「なるほど! 確かに……でも、これは見るだけしか出来なくて。どうにかして、あの剣を掴むとか、くっつける事が出来れば良いんだけど」
例えば、すっごく粘着力の強いハチミツとかを探して、ドローンにハチミツを付けて、剣に触れれば運べるかも?
ただ、この闇の中から蜂の巣を探し出すのも困難だし、そもそもこの世界にハチミツがあるのかも分からないけど。
何とかなるかもしれない希望の光はまだ残っているけれど……早く、何か打開策を見つけなければ!
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