第29話 そしてアメリカに渡る
「ご主人! 今回も沢山稼げましたわね!」
「マリーゴールド……そうだな」
俺と一緒の船に乗っているマリーゴールドは、マーキュリー号の船長室にて、書類の確認作業をしていた。
今回の航海では、奴隷を1人平均15ポンドで売り、2500人売ったので3万7500ポンド……これにアメリカ産の積荷を売れば6万ポンドは硬い。
「やっぱり寄港地増やした方が良いのかなぁ……でも期間が伸びるんだよなぁ……」
「あとスペインとの関係も注意しないといけません。復讐戦争を挑んでくる時にまた王様がイギリス商船を拿捕して良いという命令を出すかもしれませんから」
「そうだよねぇ……まぁ地道に稼ぐしか無いか」
一番奴隷を欲しているのはスペイン領土の植民地だろう。
鉱山採掘の奴隷がいくら居ても良いくらいに欲しているからである。
ただ世界情勢的にカリブ海がまた不安定化しており、迂闊に入るのは危険かもしれないと俺は思っていた。
「行くんだったらポルトガルじゃないですかね」
「確かに」
ポルトガルも同様に鉱山奴隷や大規模なプランテーションで働かせる奴隷を欲しており、奴隷の需要は幾らでもある。
砂糖やコーヒー、カカオもブラジルが一番安値で取引されていた。
「出資者説得して次の航海ではポルトガルに寄るようにするかね」
「ブラジルの港各所を巡ればそれだけ奴隷も売れるでしょうから良いんじゃないですか?」
「だよね~」
今回の航海はサウスカロライナまでと決めていたのでこれでイギリスに帰るのであるが……。
「出資者に金支払ったら手元に残るのは3万ポンドになりそう……」
「普通にアフリカの航海もした方が良いんじゃないですか? 火薬から黄金に替えれば利益はでますよ」
「……ちょっと次の航海から利益をどう出すか考えてよう。あとジャパン号の修理もしないとな」
複数回の航海により、ジャパン号の船体に少しガタが来ていた。
「さて、イギリスに帰りますか」
結局俺はそれ以降航海ルートをイギリス→アフリカ(ギニア辺りからガーナまでの黄金が産出する地域)→ブラジル→アメリカのイギリス植民地→イギリスに戻るというルートを約半年かけて巡るというのに固定化させ、利益の最大化を行った。
この航海ルートだと1回の航海でおよそ15万ポンドから20万ポンドを持ち帰る事ができ、出資者にお金を支払っても10万ポンド以上残った。
そんな生活をすること4年……俺が26歳になった時に目標にしていた50万ポンドの貯金額に到達し、俺は支えてくれていたジャパン号とジパング号を売却。
両親を説得してサウスカロライナに移住することを決めた。
会社は勿論畳み、関係者から惜しまれながらも俺は大量の宝石を持って新大陸に渡るのであった。
新大陸では開拓屋という存在がおり、開拓した土地を他の富裕層に売却するというのを生業にしている者達であり、俺はサウスカロライナに到着。
顔見知りのサウスカロライナのお偉いさん達に挨拶をしたあと、開拓屋から現代のバークレー郡のモートリー湖に面した土地一帯を購入し、宝石人間達と共有した農業の知識を使って、水路を引いたり、農地を耕したりしながら末永く暮らすのであった。
それから5年後……。
〜とある奉公人の日記〜
サウスカロライナのチャールストンの街に降り立った私は移住を希望していた。
イギリスで奉公人の募集をしており、親が亡くなり、行きあてのなくなった私は、藁に縋る思いで新大陸に行くことを決め、その船がサウスカロライナ行きだった為に、サウスカロライナの大地に降り立つことが出来た。
劣悪な船内環境で私と同じく乗船していた子供達が何人も亡くなることになったが、私は何とか生き延びて新大陸に渡ることが出来た。
仲介業者に買われた私達は船費を稼ぐための労働が待っている。
私……マチュは同じ船で一緒になった1つ年上のジェンと一緒に馬車に乗せられて内陸の街に移動することになるらしい。
「この辺りで良いかな……お嬢さんに少年も大変だったな。雇い主の執事をしているアクアだ。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
「よろしく……です」
「お腹空いているだろ。ちょっと待ってな」
馬車が止まると、アクアと名乗る若い男性は荷車から私達に棒状の食料? を渡してきた。
「食べてみな」
アクアさんに言われて、私とジェンは食べてみると、甘い滑らかな味わいが口いっぱいに広がった。
それでいて中はサクサクしていてとても美味しい。
「チョコバーだよ。美味しいかい?」
「は、はい!」
「とても美味しいです!」
「それは良かった。屋敷に着いたらもっと美味しい食事を用意してやるからな」
チョコバーを食べ終えて、馬車で揺られること2時間、目的地に到着したらしい。
馬車から降りるとそこは街が広がっていた。
「ようこそチャーリータウンへ」
アクアさんにそう言われた。
馬車は別の人が片付けている間に、街でも一際大きな屋敷に案内されて、そこに私達は中に入る。
「おお、アクアお疲れ様」
「ご主人ただいま帰りました」
アクアさんが目の前の男性をご主人という。
ただその男性はエプロンを付けて、給仕する者みたいな格好をしていた。
「ご主人、今日は奉公人を連れてくるって言ってたのに……なんでそんな格好なんですか」
「いや、料理を作る時に威厳ある格好だと汚れるし……お腹空いているだろ。今料理を並べるからな」
私達はそう言われると、メイドさん達に連れて行かれて体中を綺麗に拭かれ、髪を洗われて、服を着替えさせられて食堂に連れて行かれた。
そこでは豪華なステーキや白いパン、透き通る様なオレンジ色をしたスープが並んでいた。
私達は見たこともない豪華な食事に美味しいそうと思うだけでなく、これからどんな扱いを受けるのだろうと戦々恐々としていた。
「大丈夫、新人達への歓迎だから」
そう言われてご主人と言われた男が食事を食べ始めたので、私達も食事を食べ始める。
硬い屑肉ではなく、柔らかく暖かいお肉、美味しいがダイレクトに飛び込んでくるスープ、柔らかい白いパン……まるで貴族になったかのような錯覚を覚えるような食事を味わいながら、私達は食事をあっという間に完食してしまった。
「今日はゆっくり休みなさい」
そう言われて私達は部屋に案内されて、ふかふかなベッドで眠ることを許されて、疲れから、直ぐに眠ってしまうのであった。
チャーリータウンにやって来て数週間……私は学校に通わされていた。
私と同じ様な境遇の子供達が集まり、共同生活をしながら学校で勉強をしている。
流石に屋敷で生活するのは1日だけだったが、子供達が集まる宿舎に案内されて、学校に通う皆と勉強をする日々が始まった。
文字の読み書きや算数……私達が知らない知識を明るいマリーゴールド先生は色々教えてくれる。
この町のことも少しずつ分かってきたが、広大な農地を奴隷達が管理して、米、小麦、とうもろこし、大豆、ジャガイモ、綿、サトウキビや野菜類を栽培していた。
そして綿を布に、サトウキビを砂糖にする機械が稼働していた。
そして町の人々だが、皆若くてイケメンや美人さんが多い。
宝石の様な瞳や光沢のある髪、絹のような白い肌をした人々も多かった。
この町は凄まじく活気があり、多くの人々が生活をしていたが、チャーリー町長を皆心酔している感じもした。
私にとっては居心地の良い土地を提供してくれたチャーリー町長に心酔する気持ちも分からなくは無いが……地上の楽園のような土地であった。
学校が終わると、宿舎に帰り、遊んだり、勉強をしたりしていく。
そしてお小遣いを稼ぐ為に農園の手伝いをしたりもする。
「おばさん! 今日も来たよ!」
「あら、マチュちゃん、よく来たわね。今日もクランベリーの収穫を手伝って頂戴な」
「はい! 頑張ります!」
私はこのクランベリー農家の手伝いをすることをよくしていた。
クランベリーは金属製の網みたいなカゴでこすぎ取る様にクランベリーの実を取っていき、背負っている大きなカゴに入れていく。
たまに蜘蛛が混じっていて、毒は無いが噛まれると痛いので慎重かつ素早くクランベリーを取っていく必要がある。
カゴがいっぱいになったら別のカゴを背負って収穫を続ける。
「暗くなってきたからここまででいいわよー」
暗くなったら終わりで、賃金を貰ったり、収穫したクランベリーを使ったベリーパイをご馳走になったりする。
チャーリータウンは食の宝庫で、安く、大量かつ美味しい料理を扱っているお店が沢山ある。
住民達もそうだが、他の地域からやってくる人もグルメの町として驚く事が多いそうだ。
仕事が終われば宿舎に帰って眠りに就く。
明日も学校で勉強をするために……。
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