タイムリーパー ~君が死なない未来を求めて~
夢水 四季
第1話 巻き戻しますか?
つむぎが死んだ。
僕の彼女。
葬式に行って彼女の亡骸が棺に納められ、花にまみれている姿を見て、呆然とした。
現実味が無さ過ぎて涙が出なかった。
家に帰って喪服を脱いで、シャワーを浴びる。
なんで、なんで、なんで、なんで……。
死因は通り魔に刺されたこと。
許せない、許せない、許せない……。
僕から、つむぎを奪った奴は、まだ逃走している。
僕は、決意した。
犯人を捜して、僕が殺してやる。
シャワーから出ると、スマホが光っていた。
「何だ?」
入れた覚えのないアプリが光っていた。
『巻き戻しますか?』
スマホが喋った。
「どういうことだ?」
『私は時間を巻き戻せる人工知能搭載アプリ・タイムリーパーです。あなたの人生、やり直しませんか?』
「そんなことが出来る訳ないだろ!」
『それが出来るのです。私は優秀ですので』
「じゃあ、試しに、つむぎが生きてる時間まで戻ってみろよ」
『かしこまりました。具体的な時間をお教え下さい』
「3日前だ」
『具体的な日時をお願いします』
「5月17日午後3時」
確か、この日は公園でピクニックをしていたはずだ。
『かしこまりました。ではタイムリープ!』
スマホが光を放ち、僕を包み込む。
「誠一、聞いてる?」
懐かしい声が聞こえる。
「お~い、そろそろ起きろ~」
僕は目を開く。
目の前には愛しい僕の彼女。
「つむぎ!」
「うん、つむぎだよ~」
僕はつむぎを抱き締める。
「もう、どうしたの?」
「つむぎ! 生きてるんだな!」
「生きてるよ、当たり前でしょ」
「僕の頬を引っ張ってみてくれ」
「どうして?」
「これが夢じゃないと確かめたいんだ」
「分かった」
みょーん。
「い、痛い……。これは夢じゃない!」
あのアプリ、本物だったんだ!
つむぎが通り魔に刺されるのは、僕と駅で別れた後。
つむぎを通り魔から守るためには、僕が無事に家まで送り届ければいい。
「変な誠一~」
「あはは。愛してるよ、つむぎ」
「もう、こんなとこで何、告白してるの」
つむぎに軽く小突かれる。それさえも幸せだ。
他愛もない会話をして午後5時頃になった。
「そろそろ帰ろうか」
「うん。家まで送るよ」
「え~、駅まででいいよ~」
「ダメだ。何処に通り魔がいるか分からないだろ」
「通り魔?」
「そうだ。最近、変な事件多いだろ。頼む、僕に送らせて」
「分かった。ありがとうね、誠一」
帰り道。
僕は通り魔を警戒しながら、つむぎを送り届けた。
結局、通り魔は出なかった。
「またね、誠一」
「うん、また、つむぎ」
つむぎのおでこにキスをして別れる。
やった! これでつむぎは死なない!
家に帰り、風呂に入る。
僕は達成感でいっぱいだった。
これで、つむぎを救えた。
あのアプリのお陰だ。
風呂から出ると、つむぎからメッセージが来ていた。
「愛してる」
たったそれだけ。
何か胸騒ぎがした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます