第2話 迷宮館への招待状

 「よっしゃぁぁぁ!!!」

頭の中がハテナマークで埋め尽くされていたハクとランディは、ピュートの歓声によって現実に引き戻された。

「ピュート?どうしたの?」

「何が当たったんだ?」

「商品券!3000円だよ!3000円!最近金欠だから助かった~。これなら…ふふっ!」

ピュートは商品券を見つめてうれしそうに笑った。

「ピュート…何か買いたいものでもあったのだろうか。商品券であんなに喜ぶなんて」

「さぁ…。お、お菓子いっぱい買いたかった…とかでしょうか?」

「ピュートは何を考えているのか分からない時があるからな」

「ですね…」

「ハク、ランディ!先にお城に帰っててくれない?食器用洗剤ならこれで買っとくからさ!じゃあ、また後でね!」

ピュートは満面の笑みで走って行ってしまった。

「あ、行っちゃった」

「どう…すればいい?」

「お城、来ますか?きっと、グレイシア様もハク様に会いたいと思いますよ」

「そう…か?まぁ、今日は特に用事もないから構わないが」

「じゃ、行きましょう。あ、昨日ケーキ作ったんです!ご試食頂けませんか?」

「ランディのケーキか。さぞかし美味いんだろうな。いただくとするか」

「はい!」

ハクとランディは、並んで歩いていった。

 「ただいま帰りました!」

「邪魔するぞ」

「ランディ、おかえり」

「おかえりなさい。あら、ハクも一緒なのね。いらっしゃい。…あら?ランディ、ピュートは?」

「あ、なんか買いたいものがあるとかなんとかで、先に帰ってて、と言われまして」

「ランディ、それより先に言うことがあるんじゃないか?」

「あ、そうですね」

「ん?なんかあったのか?」

「実はですね、さっき福引きで、『迷宮館』ってところへの招待状を引き当てまして」

「「…え?」」

グレイシアとルオンは、顔を見合わせ…

「「えぇえええぇえぇーーー!?!?!?」」

叫んだ。

「うわ!お、お2人とも、いかがなされたんですか?」

「いかがも何もあるか!ランディ、本当に引き当てたのか!?」

「え、あ、は、はい!!」

「すごいじゃないの!ランディ、運がいいのね!」

グレイシアとルオンは、満面の笑顔だ。

一方のハクとランディは、何がなんだか分からない。

「2人とも、そんなに行きたかったのか?」

「なんだよハク、もしかしてニュース見てないのか?」

「ニュース?見てないな。ニュースがどうかしたのか?」

「『迷宮館』って、最近よくやってるのよ。50年に1度しか開かなくて、それも、入れるのはたったの5人なの」

「ご、50年!?すっごく長いですね…」

「そう…なんだろうな…?」

ハクは少し首をかしげている。

「ハクは獣人族だものね。1000年以上生きてるあなたなら、意外と短く感じるのかしら?」

「まぁな。そういうグレイシアこそエルフだろう。エルフは50年に1才…だったか。そちらも

あまり変わらないんじゃないか?」

「あら、そんなことないわよ。50年と100年ではけっこう違うわよ?」

「ちょ、長命種の存在ひとって、オレら存在ひととはちょっと価値観違うよな…」

「で、ですね…」

と、その時

「たっだいま~♪」

これまた上機嫌のピュートが、食器用洗剤と紙袋片手に帰ってきた。

「あ、ピュート。おかえり」

「おかえり、ピュートも福引きしたのか?」

「うん!したした!商品券3000円分!もうサイコーだよ~♪」

「商品券3000円分!?それもそれでよく引き当てたわね」

「ハクはやんなかったのか?」

「ルオン…」

「ルオン様…」

「ルオンさま…」

ハクとランディ、ピュートが、ルオンになんとも言えない笑みを向けた。

「え、な、なんだよ3人とも…。そ、その笑みはなんなんだ…?」

「察してあげてください」

「銀河一運が悪いで有名なハクだよ?」

「どうなるか、考えるまでもない」

「え、あ、えっと、その…な、なんか…ご、ごめんな、ハク」

「いや、別にどうでもいいが」

「まぁ、そんなことは置いといて」

「置いとくなよ。そしてそんなことってなんだよ」

「ランディ、開けてみてよ!」

「う、うん!」

ランディは慎重に封を切り、中身を出した。

『迷宮館への招待状』と書かれた紙が5枚入っている。

「1、2、3、4…」

ピュートが、ランディ、グレイシア、ルオン、自分…と指をさしていき…

「5!」

最後にハクを指さした。

「わ、私も行くのか!?」

「え、行かないの?」

「てっきり来てくださるのかと思っていたのですが…」

「招待状、5枚あるしなぁ」

「一緒に行かねぇのか?」

「もちろん、一緒に行きましょうね!」

さすがのハクも、彼女たち4人相手には対抗できない。

「はぁ…分かった。ついていくとしよう」

ため息混じりに苦笑しながら、ハクが折れた。

「「やったー!」」

ピュートがランディと一緒にピョンピョンと跳ね回る。

「こらこら、お前らそんなはしゃぎすぎんなよ~?行く前からケガするぞ?」

そんなこと言いながらも、ルオンもうれしそうだ。

「えーっと、場所は…えっ!?」

「グレイシア?どうした?」

「迷宮館がある場所なんだけどね、今回はルナ・ムーンで開催するらしいの!」

「へぇー!偶然にしてはすごいね!」

「で、場所は?」

「えっとね、海の近くの、夜空ヶ丘って所だって!」

「夜空ヶ丘、ですか?」

「それって、どれくらいかかるの?」

「そうね…歩いて40分くらいかしら?」

「意外と近場なんですね。姉上は行ったことがあるんですか?」

「えぇ。何度かね。あそこはどんな天気でも星が綺麗に見えるのよ」

「へぇ~!すごいですね!」

「じゃ、早く行こう!ぼく、もう待ちきれないよ!」

「だから、あんまはしゃぎすぎんなって!」

「そういうルオンさまだって楽しみなくせに~」

「そりゃな」

「いや否定しないんですか!?」

「お、ランディ良いツッコミだな。ツッコミのスキル上がったか?」

「そんなスキル欲しくないです!」

「そりゃそうか。ははっ!」








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