月世界 迷宮館で大騒ぎ!?~昼夜の別れ~

狛銀リオ

プロローグ

 「まっずい!値切りしてたらすっかり遅くなっちゃった…。早く帰ってご飯の準備しないと台所が爆発しちゃうよ」

ランディは買い物かご片手に商店街を駆け抜けていた。

もう時既に夕暮れ時。

カラスもそろそろ帰路につく頃だ。

「もう、さすがにピュートも洗濯物取り込んでくれてるよね。あとはお城に帰ってご飯作って…今日は何作ろうかなぁ」

「そこのお兄さん、少しいいですか?」

「へ?お、お兄さん?あ、ぼくのことですか?」

「そうです。そこのオレンジ色の髪のお兄さん、ちょっといいですか?」

路地裏の方からふと、声がした。

そちらの方を見ると、フードを深くかぶったおばあさんがいた。

「どうしたんですか?何か、困っていることでもあるんですか?もしかして、体調悪くなったとか?」

「実は…少し手伝って欲しいことがあるんです」

「手伝って欲しいこと、ですか」

「そうです。簡単なことなんです。この福引券を差し上げますので、明日、福引きしてきてもらえませんか?」

「福引きを、ぼくが?それだけでいいんですか?」

「はい。見たところ、運も良さそうですし、いかがですか?もちろん、当たった物はあなたの物です。返して欲しいなどとは言いません」

(どう、しよう…。見たところ普通のおばあさんだし、福引きするだけならいいかな…?)

「わ、分かりました。いいですよ」

「ありがとうございます!ではこれ、福引券です。このことは、くれぐれも内密にお願いできませんか?不審者扱いは嫌なんですよ」

「構いませんよ。どこかのお店でもらったってことにしますね」

偶然にも今は、どこのお店でも福引券を配布している。

明日、福引きがあるからだ。

「ありがとうございます。あなたにとって良いものが出ることをお祈りしています。では」

おばあさんは一礼して、路地裏に消えていった。

「…?何だったんだろう、あのおばあさん。ってそれどころじゃない!急いで帰らないと、台所が爆発する~!!!」

ランディはもらった福引券を買い物かごに突っ込んで、大慌てでお城に向かって走っていった。

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