道具のための道具のための道具の。
岩塩の発見と活用について、制限つきながらも長老から認められた俺はいよいよ本格的に、異世界モノよろしく原始時代の生活環境の改善に乗り出すことにした。だって、不便すぎるんだもん、ここ。
先日、ウル・バザンとの邂逅イベントも起きた狩りだが、あの後狩った獲物を持って帰るのに、二人組で獲物を抱えて集落まで運ばなければならなかった。もちろん、狩りでは大して役に立たない、素手グループが率先して運ぶ役を担うことになる。
他の人々は、運んでいるものが自分たちの糧そのものなので何の苦もなく嬉しいばかりのようだったが、俺は「こんな重いもの、なんで人力で運ばなきゃいけないんだ」と内心で悪態をつきながらひいひい云いながら、まだ血の滴るガゼルの死体を抱えて必死に運んだ。これは真っ先に改善しないと、と思ったものだ。
本当は台車あたりを作りたいが、ここには舗装路なんて全く無い荒地ばかりなので、車輪による運搬は非現実的だし、そのために道の整備を始めたら実用になるまでに一体どれだけの時間がかかることやら。
第一、そんな一大公共事業をたったひとりで(ニスヤラブタも手伝うなら二人で)できるわけもない。長老の許可も得て、集落みんなで整備を行わないと到底無理だ。
なので、まずは
今でいうリュックのようなもので、背中に背負う荷台だ。これなら荷物の重心が腰に乗る形になるので負担も軽減されるし、両腕で抱えるよりも遥かに多くの物を運ぶことができるようになる。
精霊のお導きに従い、流通革命を起こすわけだ。
便利すぎるのできっとたまげるぞ、集落の連中も。
─────
俺はさっそく、集落の近くの森から、背負子の骨組みに使えそうな木の枝と蔦を採ってきて組み合わせる。ほんとは鉄のフレームで作りたいけど、製鉄技術なんて無いから木で代用しよう。
しかし、ここでいきなりつまづいた。
蔦だけで枝同士を結び組み合わせると、重い物を載せた時に蔦がぶち切れてしまいバラバラになることに気づいた。これだと、蔦が耐えられる重量までしか載せられない。つまり、ガゼルとか絶対に載せられない。ダメじゃん、これ!
ええと、こういう場合はどうするんだっけ……こういう木材加工の動画、なんか見たような記憶があるんだけどな……と必死に考えていたら脳裏に突如、日本で生きてた頃に見た覚えのある、木を伐り出したりそれらを組み合わせる写真や、不思議なことに全く見た覚えのない素材や作業風景などの写真の記憶などが次々と浮かんできた。すべて、木材加工に関する記憶?だ。
(そうそう、そうすれば記憶の検索ができるよ!
記憶のサルベージ信号が強い時に活性化するんだ)
いきなり久しぶりに、"奴"の声が聞こえてきて驚いた。
お前、存在をすっかり忘れてたわ!ていうか早く日本へ戻せよ!
(えっ、戻りたいの?
随分と、原始時代を満喫してるように見えるけど?)
どこが満喫してるんだよ!
不便すぎるから、ちょっとでも楽をしたくてしようがなく!
(でも、楽しいでしょ?)
……まあ、確かに、こういう工夫をするのは、楽しくないわけではない。
岩塩を見つけた時も嬉しかったし、今回の背負子も完成すれば、きっと楽しいはずだとは思う。日本にいた時でも、ゲームの中でクラフトすること自体、結構好きだったしな。
で、いま俺が脳裏で見ているこの動画で気づいたんだけど。
お前、元の俺の記憶だけじゃなくて……
(だから云ったじゃん、「現代社会の記憶」って!
君が原始時代で活用できるであろう、いろんな知識をインプットしておいた、
だからあれだけ、書き込みが大変だったんだよね)
そんなこと、一言も云ってなかったと思うが。
それはともかく、俺の脳裏で展開される、様々な木材の加工写真や説明文を見ながら俺は、以前に"奴"が云っていた「忘れる」の意味がだんだんと分かってきた。
つまり、忘れるというのは、脳内に存在する技術を、俺が活用できるまでに至らなければ、いずれ記憶から消える、ということか……?
(うふふ、一体、どれだけの記憶が消えるのかねえ……
或いは、最終的には君も、原始人同然にまで脳みそが戻るのかな?
その方が楽だと脳が判断すれば、それもあり得るかもなあ~)
つまり俺が、知識が詰まった脳みそを活用し原始社会を一足飛びで発展させてしまうか、それとも知識を捨て猿もどきの原人に戻って一生を終えてしまうのか、それを観察しているらしい。"奴"の、内心でうきうきしている感丸出しの言葉に、俺はこいつは本気でクソったれだと思った。
なおも嬉々として語り続ける"奴"を、仕事の邪魔だと怒鳴って脳内から追い払う。
今はこの、背負子の製作に集中するんだ。
やれる、お前ならきっとやれる!がんばれ、俺!
で、脳裏の様々な情報を参考にすることで、「ほぞつぎ」という技法を思い出す。接ぎ木のように木材を加工し繋げることで、紐で結ぶだけよりも強度が出る。これなら、木の背負子を作れるはずだ。早速加工を。
そしてまた、ここでつまづく。
現代社会なら、木を加工するための道具は山ほどある。
しかしここには、木を切るためののこぎりも、木を削るためのかんなも、木を刻み穴をあけるためのノミも……つまり、木を加工するための道具が一切無い。
つまり、背負子を作るためにはまず、木材を加工するための道具が必要になるんだ。木材だけではない、クラフトで使うありとあらゆる道具をすべて、自作しなければ何も始まらないんだ。
アホか。俺は呻いて地面に倒れこんだ。
道具を作るための道具かよ、なら道具を作るための道具を作るための道具だって。トートロジーで永遠にぐるぐる回ってしまいそうだ。第一、それら木工用の道具も、ほぼすべて鉄を使ってるじゃないか。製鉄技術を生み出すまでは、木すら加工できないのかよ。
まったく……ほんと、何なんだよ、この世界。
連中がやってることと云えば、野山で果実や穀物を採り、草原でウサギやシカを狩り、食べて、それ以外の時間は昼寝したりおしゃべりしたり。俺みたいに、生活をもっと便利にしよう、もっと楽をしようという発想がそもそもないんだ。
背負子を作ろうと思い立ったあの、無駄に体力を消耗するガゼル運びだって、集落まで運び終えたら後は寝るだけだから、大変だとか時間がもったいないとか、そういうことを連中は全く思わないようだ。
生活の中に、タイムリミットが全く存在しない。かろうじて、夜は出歩けない、くらいだ。だから時間の無駄という発想が全くない。 無駄とか、有益とか……そういった考え方って、もっと文明化した社会でないと出てこないんだろうな。
そういえば、元の世界ではやや陰キャだった俺からすると、ほんとここの連中、他人のうわさ話が大好きすぎて呆れるんだよな。
誰と誰がくっついた離れた、こないだケンカをした仲直りした、あいつはイイヤツだ好かない奴だ、そんなたわいもない話を、しかも何度も繰り返すんだよ彼らは。それ、前に聞いたと思ってそう指摘しても意味がない。そうか、と云ってまた別の、これまた以前に聞いた話を蒸し返すだけだ。
多分、おしゃべりすること自体が、彼らにとって大切な行為なんだろう。知識の交換のために会話するのではなく、互いの関係性やヒエラルキーの確認のためにおしゃべりをしている。
そういったことに、俺自身は興味がないがどうやら、肉体の元の持ち主もあまり興味が無かったんだろうな。だから、集落からわざと外れた場所に
……集落からニスヤラブタが、果物を入れた革袋を片手に持ち戻ってきた。
小屋の前で、周りに木の棒やら蔦やらを散らかしたままフテ寝している俺の姿を見ると、にこにこ笑いながら俺の傍に座った。
「おなか、すいてるか?」
「すいてない」
「ナツメ、貰った、食べるか?」
「食べない」
「なにか作る、できたか?」
「できてない」
「機嫌、悪いか?」
「悪くない」
まるで拗ねた子供のように、ニスヤラブタの言葉を全部否定する俺に彼女は、お前機嫌悪い、と云いながら俺の頬をつねった。むに、と歪んだ頬もそのままに俺はしかめ面をして、あっかんべえ、とベロを出してみせる。
まだ彼女には、"あっかんべえ"の意味を教えていないが、彼女は俺のあっかんべえを見て、微笑みながら革袋からナツメを一粒取り出し、俺の舌の上に載せた。俺は、舌を丸めてそれをパクリと飲み込んでみせる。
元の人格は、果たして彼女のどこを好きになったんだろうか。
転生直後の俺は、彼女の夫を適切に演じる上で、そのことを知っておくべきだと思ったが、そこまでの情報は肉体の記憶の中には残ってなかった。仕方がないので、日々彼女の言動を観察することでそれを察することにした。
彼女は、頭が良かった。
知識は当然、この時代の人間なりのそれしかなかったんだが、俺が教える様々な知識や俺の仕草を、いちいち察したり理解をするのが早い。この"あっかんべえ"にしても、おそらく彼女は俺が内心、彼女をからかっていること、その表現だということを察している。
また、この時代の人々は基本、そこまで感情表現(のバリエーション)が豊かではないにも関わらず、彼女は俺といる時は様々な表情を見せる。もともと、俺(の肉体の元の持ち主)もそうだったのかもしれない。そういう意味で俺も彼女も、この集落の中では「変な男女」だったんだろう。
日本で云うところの「似たもの夫婦」か。
きっとこのあたりが、"彼"が彼女を好きになった理由のひとつだろう。
そして、俺も徐々に、彼女を好きになりつつあった。
彼女は、俺の顔を覗き込みながら云う。
「なにか作る、なぜできない?」
「蔦、すぐ切れる、弱い」
「切れない蔦、無いか?」
「そんなの無い、切れない蔦、使えない」
蔦が切れなかったら、そもそも加工できない。
なにか、加工ができて強靭な紐があればいいんだが……そういえば、ヒトの髪の毛って確か、編むことで縄のように強靭になるんだっけか。ニスヤラブタの長い髪の毛を見ながら、俺はそれを縄にする様を考えたが、それを云ったらどんな顔をするかちょっと想像できなかったので、やめておくことにした。
それと、ほぞつぎ加工をするための道具。これが絶対に不可欠だが、この時代で使えるのは石器くらいだ……あ、そうだ、とりあえず、石器でどこまでできるか、試してみるか。
「……ニスヤラブタ、知ってるか?」
「なあに?」
「石のナイフ、作る人、いるか?」
「ああ、それはラマシュだ」
彼女は俺の問いに、頷きながらそう答えた。
ラマシュ、と俺も呟く。肉体の記憶には無い名だ。
「ナイフ、欲しいのか?」
「ナイフ、いろいろ、欲しい」
「じゃあ、行こう、アダブール、起きる」
彼女はそう云って立ち上がった。
俺もフテ寝をやめ、立ち上がると彼女と共に集落へ向かった。
─────
カンカン、カンカン、という音が、彼の家に近づくにつれて大きく聞こえてくる。俺はニスヤラブタと、集落の中にあるラマシュの家を訪れた。
ラマシュは、この集落の中で一番の、石器作りの名人だと彼女は教えてくれた。
果実の採取で使う細石刃や、矢じりに使うそれもラマシュが作っている。
現代では黒曜石と呼ばれる、独特の特徴を持つ石を加工するのだ(脳内の記憶ストックで予習しておいた)。
黒曜石に硬い石を叩きつけると、パカリと二つに割れる。
割れた切り口はきれいな断面となる。薄く割ることができればその切れ味は極めて鋭利になり、肉だってスッパリと切れる。ただ、石で叩き割ることができるくらいなので、基本的に脆い。使い捨ての刃のようなものだ。
彼の家の裏に行くと、ある男がひと抱えもありそうな大きな黒曜石を叩き割るところだった。ガン!と殴ると、殴ったところからパカリと真っ二つに割れた。すごくきれいな断面だ。
「ラマシュ」
彼女が声をかけると、ラマシュと呼ばれた男がこちらを振り向く。
少し気難しそうな顔つきの(この時代、みな仏頂面が基本だが)男が、彼女と俺を交互に見た。
「ニスヤラブタ、どうした?」
「アダブール、ナイフ、欲しい」
彼女は俺を指し示しながらそう云う。
ラマシュは、俺を見ながら、
「……お前が?」
と、明らかに訝し気な表情で尋ねてきた。
俺はといえば、ラマシュの周りに散らばっている、黒曜石の欠片に目を奪われていた。大小さまざまなそれは、確かに切片が鋭い。足で踏んだらざっくりと切れてしまいそうに思うが、彼は自分の足元のそれに注意してないんだろうか。
「お前が???」
俺が応えないのに、彼は少し苛立ったように強めの口調で再度尋ねる。
俺は慌てて彼を見て、ナイフほしい、と口にした。
「どんなナイフだ?」
「木を削る、ナイフ」
「どんな木だ?」
これ、と云いながら俺は、森で拾ってきた木の枝を見せる。
ラマシュはそれを受け取り、枝の太さや硬さなどを確認しながら云う。
「……黒い石、これを削れない、すぐ壊れる
もっと硬い石だ」
「どんな石だ?」
これだ、とラマシュが家から持ち出してきたのは石斧だった。
先日の、狩りで皆が使っていたものは純粋に打撃用のそれだったらしく、ハンマーのような形状だったが、こちらはより鋭利な面が作ってある。この石に見覚えがないか、脳裏で思い出そうとする……思い出した、チャート(燧石)だ。
「この斧、木を折れる」
そのくらい頑丈だ、ということらしい。であれば、木を削るのも造作なさそうだが……困った、俺がしたいのは、木をただ削るだけではなくて、ほぞを作成したいんだ。かなり細かな作業だから、石斧では大雑把すぎて向かない。
「もっと小さいの、欲しい」
「どのくらいの?」
「指くらい」
「……それで、木を削る?」
俺は、こくこくと頷く。
彼は、ふーむ、という風に腕組みをして唸る。そういう用途のものを、作ったことがないのかもしれない。
俺はふと、足元に散らばっている黒曜石の欠片を見て、これを流用できないかと考えついた。ひとつひとつは小さいし不揃いだが、いくつも使いつぶす前提なら、ほぞ作りに活用できるかもしれない。
「ラマシュ、これ、欲しい」
と、彼の足元に散らばる黒曜石の欠片を指さしながら俺が云うと、彼も自身の足元を見て、これか?と意外そうに尋ねてきた。
「黒い石の欠片、ただの欠片」
「使えるかも、これ、たくさん欲しい」
俺たちのやり取りを横から見ていたニスヤラブタは、微笑みながら「アダブールだから」と、ラマシュに云う。
彼は、やや呆れたように俺を見るが、いいだろう、好きなだけ拾っていけ、と俺に云った。しかし、俺が礼を云って拾おうとした時。
「お前、黒い石、持って帰る
お前、何を呉れるか?」
おっと、取引か。
こういう点はこの世界でも意外とシビアだ。基本は共生で何でも分け合うが、生活に直に関係しないことについては頻繁に取引行為が行われる。ラマシュは、黒曜石の代わりに何か寄越せと云っているわけだ。
取引に使えるモノが無いわけではないけど、素直に従うのもなんだかな、と思ったので、俺は交渉を試みる。
「この欠片、叩いた後のクズ、お前、作ってない」
「叩いたのは俺、だから欠片、俺のもの」
「お前、ナイフを作るため、黒い石を叩く、欠片を作るため、違う」
今まで彼自身が価値を見出していなかった切りくずで、何かせびろうと考えるのはちょっと欲深いんじゃありませんかね。そういう意図を込めながら返事をした俺に、ラマシュはムムムと云いそうな表情をして黙るが、何かを思いついたように顔が明るくなった。
「俺、黒い石、山から運ぶ
誰の助けもない、だから、これも俺のもの」
確かに、黒曜石をここまで運ぶのは結構な労力だろう。
まあしようがない。俺は腰の革袋から、岩塩の小さなひとかたまりを取り出す。
多分、彼も岩塩のことは集落の噂で知っていたのだろう、たちまち目を輝かせたが口調は先ほどと同じ。
「それは、何だ」
「
「……それしかないか」
「これしかない」
「しようがない、交換しよう」
もったいぶった風に、ラマシュは応える。しかしコレの使い方を聞かない時点で、お前がこの価値を知ってるのは丸わかりなんだがな。
ともかく俺は、ほぞ作りの道具になりそうな、黒曜石の欠片をたくさん持って帰ることができた。
─────
さあ、原始時代で木材加工だ!
最初は、運搬にも十分耐えられるように、なるべく硬く丈夫そうな木を選んでいたのだけど、考え方を少し変え、黒曜石で加工できる程度の柔らかさのある木を用いることにした。積載物の重量制限がキツくなるけど、今は発想を形に変えることを優先すべきだ、と割り切る。
木に穴をあけることまではできないので、基本は凸と凹の組み合わせだ。
枝の接合部を黒曜石でチマチマと、チマチマとチマチマと、本当に気長にチマチマと削って凸または凹に切り出し、それらを組み合わせた個所をさらに蔦で補強する。
しかし例えば、丸太からの角材の切り出しなどできないので、素材の形をそのまま使うしかないのが残念な点だ。なるべくまっすぐな枝を選んだものの、いびつな形状になるのはどうしようもない。
元の世界のホームセンターに並んでいた、まっすぐに整形をしてある角材のすばらしさ、使いやすさを、改めて思い知らされたよ……ほんと、現代に存在するものって、何もかも素晴らしい工夫が施されているなあ。ああ、日本に帰りたい。責任者出てこい。
黒曜石の欠片で何度もケガをしながら、枝の選び直しやほぞの作り直し、背中にあたる側の樹皮を削ったりなど、様々な工夫を施しながら何日も何日も、それこそ一週間~十日以上も時間をかけながら、ようやっと完成した背負子は……
……やっべ、めっちゃ使える!
さすがにガゼルほど重いものを載せればぶっ壊れてしまうだろうが、例えば腕で抱えて運ぶ程度の荷物であれば、背中に背負って運ぶことができるようになった。
それに、マイ背負子の最大の利点は、荷物の重量が苦にならないのと同時に、荷物を運びながら両手も使えることだと気づいた。これ、地味にすごいメリットだよ。
俺は、ニスヤラブタにも背負子の使い方(+その呼び方)を教えた。
次の日、彼女は背負子に、川で獲った魚を数匹載せ、それを背負って集落へと出向く。
集落の人々は、彼女が背中になにか変なものを背負っているのに気付くと、興味津々でそれを見た。彼女に、それは何だと尋ねる者もいる。
「
彼女がそう答えると、相手は素っ頓狂な顔をして彼女を凝視した。
みな、
彼女は、背負子から魚を降ろし、代わりに果物とうさぎを縛りつけて載せる。
それを背負うと、集落の人々はその姿に、何か感銘を受けたようだ。良い、良いとしきりに彼女を褒めたというから、うまく言葉にはできないものの、自分たちが今まで気づいていなかったことに気付かされた、という感覚を覚えたのかもしれない。
それから後、俺の住まいには、背負子を求める人が訪れるようになった。
アレだ、お前の妻が背中に、その、アレ、などともどかしそうに云う彼らに、現物を見せ
俺は、注文を受けた順に、背負子を作っては手渡していった。俺としては自前のモノができさえすれば後はヒマつぶしみたいな感覚だったので、特に製作の対価は求めなかったが、人々の間では俺の評判が随分と高まったらしい。
それに、何度も背負子を作ることで、技能の向上も図ることができた。
リアルクラフト、本気で面白くなってきたぞ。
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