魔王に仕えし最強の女将軍は記憶喪失です
@Hokuyu
第1話 目覚め
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
古びた客室に列車の響きがこだまする。窓から差し込む暖かな陽光が、まるで眠気を誘うように揺れる。金髪のロングヘアを揺らし、黒い軍服に身を包んだ若い女性が、鋭い瞳で物思いにふける。
(ここは…どこだ?)
目を覚ました瞬間、彼女――エディス・ヴェルナは、この奇妙な乗り物の中にいた。魔王に数百年仕える「冷血の女将軍」として名を馳せた彼女にとって、こんな状況はあり得ない。最初は幻覚魔術かと疑ったが、長年の戦場経験がそれを否定する。
エディス
(魔術が…使えない? 困ったな…)
試しに、生得魔術「サカオモリ」を発動させ、空間を捻じ曲げようとする。だが、指先に集まるはずの魔力の脈動はなく、空しく空を切る。さっきも試して、失敗した。
エディス
(やはりダメか。数百年生きてきて、こんなことは初めてだ…)
「ハァ…」とため息をついた瞬間――
ガラッ!
客室の扉が勢いよく開く。エディスが「ん?」と振り向く。ピンクのボブヘアを揺らす10歳ほどの少女が、制服姿で飛び込んできた。
少女
「切符、見せてくださーい!!」
エディス
「切符? 何だそれは。買った覚えはない。」
少女
「ええ!? 買ってない!? だって、切符がないとこの列車に乗れないはずですよー?」
エディス
「だから言ってるだろ。気づいたらここにいた。切符なんて知らん。」
少女
「そんなわけないです! ちゃんと見せてくださいってば!」
エディス
(しつこい小娘だな......)
少女のしつこさに、エディスの額に青筋が浮かぶ。こんな小娘に舐められた記憶は、いつ以来だろうか。
エディス
「知らんものは知らん。…それより、この列車はどこに向かってる? まさか、お前が私を乗せたんじゃないだろうな?」
少女
「えー、知らないのに乗っちゃったんですか? ウケるー!」
少女は口を抑え,こちらを見ながら笑う
エディイス
「は? 小娘、笑いものか?」
少女
「だって、この列車の行き先、誰も知らないんですよ? 列車が自分で決めるんです!」
エディス
「列車が? そんな馬鹿な話があるか。」
タケノコ
「ホントですって! ほら、この子、機械魔術型列車・715系メモリアルですよ! 知らないなんて、お姉さん、時代遅れー笑」
エディス
(そろそろ我慢の限界だな、蒸し殺してやろうか)
エディス
「…一つ聞く。この私が知らん列車だと? ふざけるな。」
彼女は目を細める。鉄道なるものは、機械工学と魔術の融合で最近生まれた新技術。エディスは魔王の将軍として、あらゆる知識を網羅しているはずだ。
エディス
「お前、私が誰だか分かってるんだろうな?」
少女
「え、誰? ただのお姉さんじゃないんですか?」
エディス
「私はエディス! 魔王に数百年仕える冷血の女将軍、エディス・ヴェルナだ! 私の名を聞けば、誰もが震え上がる。お前も噂くらい知ってるはずだろ?」
少女
「ふーん…。なんかすごそうですねー。」
エディス
(チッ!この小娘!!)
エディス
「ふーん、だと!? もっと反応しろ!」
少女
「いや、反応するような話でもなかったんで…。それより、切符! 切符ですってば!」
エディス
「はぁ…しつこいガキだ。もういい、あっち行け。」
その時、ヒラリと紙切れが床に落ちる。少女が「あっ!」と目を輝かせる。
少女
「ほら、持ってるじゃないですか! 切符!」
少女は素早く拾い上げ、何かを切り取る。
少女
「落とさないでくださいねー。切符ないと、乗れなくなっちゃいますよ!」
エディス
「はいはい、わかった。」
少女(笑顔で):
「あ、私、タケノコって言います! これからよろしくですー!」
エディス
「…変な名前だな。」
タケノコ
「うっさいですー!」
少女はそう言い捨て、スキップするように客室を去っていく。エディスはドサッと座席に座り直し、額を押さえる。
エディス
(…疲れた。あの小娘、一日の体力を持っていきやがった。)
ふと、記憶を辿ろうとするが、何も浮かばない。なぜここにいるのか、どうやって乗ったのか。
エディス
(思い出せんものは仕方ない。…そのうち分かるさ。)
その時、車内に声が響く。
[アナウンス]
「えー、次はハルネイ、ハルネイに停まります。当列車はハルネイで72時間停車予定です。乗り遅れにご注意ください。」
列車が緩やかに減速する。窓の外には、風に揺れる美しい草原が広がっていた。やがて、小さな街が見えてくる。
キィー…
列車が静かに停まった。
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